海外競馬情報 2025年12月11日 - No.47 - 2
オーストラリアの国際格付け降格の恐れ(オーストラリア)【開催・運営】

 オーストラリアのブラックタイプ競走の地位がマレーシア、パナマ、プエルトリコなどの国々と同列に格下げされる可能性への懸念が高まる中、レーシング・ニューサウスウェールズ(RNSW)の理事会全員が辞任すべきだという要求が提起された。

 この要求は、ニューサウスウェールズ州サラブレッドブリーダーズ協会のハミッシュ・エスプリン会長から発せられた。オーストラリアのブラックタイプ問題-ニューサウスウェールズ州の一連の競走が、国内で格上げがなされたものの、アジア競馬連盟(ARF)により国際基準に即した承認が行われない―の膠着状態が続く中での動きである。

 RNSWの広報担当者はエスプリン氏の要求を退けた。ARFは、オーストラリアの競走馬生産を統括するレーシングオーストラリア(RA)宛て書簡(レーシングポスト紙が入手)で、承認されたブラックタイプ管理システムを導入せず、ARFの懸念を解消しない場合には、同国がブルーブック(ブラックタイプの指定に関する公式ガイド)のパートIからパートIIへ格下げされる可能性が現実にあると明言した。

 このようなシナリオでは、オーストラリアは小規模な競馬開催国と同等となり、国内の全ブラックタイプ競走は世界的にリステッド競走として見なされることになる。

 ARFの正式な書簡は、オーストラリア国内のブラックタイプ競走を統括するRA宛てであったが、RNSWによる一方的な格上げが、広範な統治論争が行われる中で、最も明瞭な火種となっている。

 この問題は、ARF書簡によれば、オーストラリアでは「長年にわたり適切に機能するブラックタイプ格付け管理システムが存在しない」という事実にもかかわらず、当初17競走(後に18競走に増加)がRAおよびRNSWにより最高G2まで格上げされた後に発生した。

 アジアパターン委員会(APC)が格付け変更を承認していないにもかかわらず、これらの競走の大半はNSW州の格付け変更を掲げて2度開催された。この不承認は、APCの基本規則に準拠するオーストラリアのブラックタイプ委員会が存在しないことに起因する。

 これに関連し、南半球最大の血統情報提供機関であるアリオンはブルーブックに倣い格上げを承認せず、その結果オセアニアのセリ名簿にも反映していない。

 10月16日付の6ページに及ぶRAへの書簡で、ARFは10月3日にパリで開催された執行協議会において「オーストラリアにおけるブラックタイプ競走の格付け管理」に関する「長年の懸念事項」が議論されたと報告した。

 APCは、RAが以下の2措置を採用するまで「オーストラリアからの申請を検討せず、またRAが通知する競走格付け変更を承認しない」ことを勧告したとしている。

 第一に「APC基本規則に準拠した形式」で新たなブラックタイプ基準を制定すること。第二に「ブラックタイプ格付け管理を監督する全国パターン委員会、または同等の機関が稼働する」ことである。

 この書簡において、APCは「満足のいく対応がなされない場合」、オーストラリアの競走に対して「効果的なブラックタイプ格付け管理を回復するための」措置を採ることを示唆した。具体的には、RA の格付けに関する申請の審査を一切とりやめ、オーストラリアでの競走のグループ格付けそのものについてAPCが決定を下す可能性があると述べている。

 香港に拠点を置く ARF のアンドリュー・ハーディング事務局長が署名したこの書簡は、次のように締めくくられている。「ARFは、オーストラリアがブルーブックのパート I から格下げされることは、RAだけでなく、オーストラリア、ARF 地域、そしておそらくはそれ以上の地域における競馬および生産界全体に非常に重大な影響をもたらすと認識しています」。

 エスプリン氏は、ARF の書簡と、オーストラリアがブルーブックのパート II に格下げされるという脅威を考慮すると、同国の競馬施行団体は「150 年以上の歴史の中で、オーストラリアの生産界を最も深刻な状況に陥れた」と述べた。

 同氏は次のように付け加えた。「この国の競馬施行団体が、オーストラリア全土の生産牧場に関わる全員の生計、そして全オーストラリア生産馬の価値を深刻な危機に晒したことは、まさに恥ずべき行為です。我々の見解では、RNSWが我々と真摯に向き合おうとしている様子は見られません。利害関係者の意見を考慮しているとも思えません。これらの理由から、理事会の退陣を求めます」。

 これに対しRNSWは声明を発表し、ブラックタイプ基準とパターン競走を巡る「広範な誤情報」の是正を求めた。

 声明で次のように述べた:「RNSWは、APCが承認したブラックタイプ基準の制定およびパターン競走における全ての重要側面に対して専門的かつ公平な監督体制を確保し、オーストラリアのブラックタイプ制度の公正性、公平性、信頼性を守るための独立ブラックタイプ諮問グループの設置を強く支持します」。

 さらに次のように付け加えた:「現在の状況は、RNSWによるいかなる行動の結果でもありません。むしろ、国際的に承認された改訂案を承認しないというRAの決定に起因するものです。オーストラリアで最も成功している州の競馬施行団体の理事会に辞任を求めるのは、ばかげた要求です」と広報担当者は述べた。

 ARFが11月14日の期限までにRAから書面による回答を受けたかどうかは不明だが、ある情報筋によればRAは延長を求めた可能性があるという。この件に関する明確化を求めて本紙がRAのCEOポール・エリクソン氏に問い合わせたが、回答は得られなかった。

By Trevor Marshallsea/ANZ Bloodstock News

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