海外競馬ニュース 2022年09月01日 - No.32 - 1
バーイード、凱旋門賞出走の可能性大だが馬場状態次第(イギリス)[その他]

 ウィリアム・ハガス調教師は8月28日(日)、バーイードが凱旋門賞(G1 10月2日 ロンシャン)で競走生活を終える"可能性はかなり高い"と述べた。

 馬場状態が良ければ、無傷のバーイードは欧州で最も権威あるレースで初めて2400mの試練に臨むことになるだろう。

 英インターナショナル(G1 ヨーク)での他を圧倒する勝利により10連勝を果たして以来、バーイードの今後の目標についてさまざまな憶測が飛び交っている。可能性として、凱旋門賞・英チャンピオンS(G1)・愛チャンピオンS(G1)などが候補に挙がっていた。

 ウィリアム・ハガス調教師は世界最高レーティングを獲得しているバーイードの今後の計画を説明する声明においてこう述べている。「バーイードはヨークから大変調子が良く、誰もが彼の健康状態に満足しています。ヒッサ王女、アンガス・ゴールド氏、リチャード・ヒルズ氏と長いあいだ話し合った結果、今シーズンはもう1戦だけするという結論に達しました」。

 「残念ですが、愛チャンピオンSに出走することはなさそうです。しかし凱旋門賞か英チャンピオンSのどちらかには参戦します」。

 「時期が迫ってくれば決定を下すでしょう。凱旋門賞には登録していませんので、追加登録する必要があります。しかしロンシャンの馬場状態が悪い場合は出走させる気はありません。だから馬場状態が良ければ凱旋門賞に出走する可能性はかなり高いです。そうでない場合は、英チャンピオンSに参戦することになるでしょう」。

 総賞金500万ユーロ(約7億円)の凱旋門賞の追加登録の締切は9月28日(水)であり、追加登録料は12万ユーロ(約1,680万円)である。

 バーイードはロンシャンで出走した経験がある。昨年9月のムーランドロンシャン賞(G1 1600m)で優勝したのだ。

「バーイードのような馬はロンシャンで問題ありませんね」

 戦後の競馬史において、オリヴィエ・ペリエ騎手ほどフランス最高峰の競馬場での騎乗経験がある騎手はほとんどいない。彼は凱旋門賞4勝を達成し、このレースの勝利数で首位タイとなっていた。ただし、その後フランキー・デットーリ騎手がエネイブルで2勝を挙げたため水をあけられている。

 そしてペリエ騎手はバーイードが凱旋門賞に出走すれば、このレースにとって大きな後押しになると信じて疑わない。

 「彼はすでに真のチャンピオンであることを証明しました。凱旋門賞に出走するためにロンシャンに向かうかもしれないというのは朗報です」。

 「英国の最高級の競馬場を走りこなしてきた彼のような馬なら、ロンシャンで問題ありませんね」。

 「凱旋門賞はほとんどいつもいいペースで展開します。私が見たところ、彼は道中素晴らしいペースで走っています。だから、レースが適切なペースにならない場合が唯一危ないでしょう」。

 「関係者がペースメーカーを走らせるかどうかは分かりませんが、競馬を楽しむ気持ちとしては素晴らしいことだと思います」。

 パディパワー社(本社:アイルランド)はバーイードの凱旋門賞での勝利に1.7倍のオッズをつけている(出走しない場合は返還)。同社のスポークスマンであるポール・ビンフィールド氏はこう語った。

 「(雨が降れば)アイルランドのブックメーカーは損をするのですが、フランスもしくは英国のブックメーカーは得をしますね。だけど、これらの国の競馬を愛する人々はパリに雨が降らないことを望んでいるでしょう。おそらく、バーイードが真のチャンピオンとして競馬界の伝説の一部になるためには、多くの人が欧州最高峰のミドルディスタンスレースと見なす凱旋門賞に挑んで勝たなければならないでしょう」。

 コーラル社(本社:英国)は当初、バーイードに1番人気の3倍のオッズをつけていたが、その後2.8倍に引き下げた。同社のスポークスマンであるデヴィッド・スティーヴンス氏はこう語った。「3倍というオッズは、馬券購入者が"パリは晴れる"と強く信じていて、バーイードへの信頼が高まっていることを浮き彫りにしていました」。

 バーイードはデビューした年に6戦6勝を果たして2021年の最強マイラーとなった。

 今年はマイル戦をさらに3勝した後、距離を伸ばして英インターナショナルS(約2000m)に挑んで驚異的な6½馬身差の勝利を収め、自己最高のレーシングポストレーティング(RPR)138を獲得した。芝部門でこれを上回るレーティングを獲得しているのはフランケルだけである。

 また、バーイードはBHA(英国競馬統括機構)によりレーティング135を与えられている(レーティング128から上昇)。これは2004年にワールドベストレースホースランキングが導入されて以来、フランケル(140)と父シーザスターズ(136)に次ぐ数字である。

凱旋門賞の馬場状態はバーイードに合ったものだろうか?

 過去3回の凱旋門賞は骨の折れる馬場状態で施行された。しかしもう少し長い目で見れば、バーイードに適した馬場状態になるかは五分五分といったところだろう。

 凱旋門賞は過去10回のうち6回は「重」あるいはさらに悪い馬場で施行されたが、過去20回では「良」での開催は11回にのぼる。

 ウィリアム・ハガス調教師とバーイードのチームにとって決断を難しくしているのは、秋のロンシャンは雨が降ると馬場状態が急変し得るということだ。

 一例として2021年凱旋門賞の前の金曜日に馬場状態はまだ「良」だったが、土曜日に雨が降ったために「重」となり、当日はさらに悪い状態で凱旋門賞は施行されることになった。

 しかし、楽観的にさせてくれる要素はある。

 まず、日曜日にはロンシャンの馬場の内側に傷んでいない区域が確保される。

 それから、フランスがペネトロメーター(馬場硬度計)で測定して「重(soft)」あるいは「稍重(good to soft)」とした馬場状態では、英国がターフトラックス社のゴーイングスティックを使って定めた同じ馬場状態よりも速く走れるという証拠も出てきている。

 トレヴは2013年に公式発表で「重」の馬場状態で標準よりも1½秒だけ遅いタイムでゴールした。一方、エネイブルは2017年にシャンティイで凱旋門賞初制覇を達成したとき、馬場状態はやはりペネトロメーターで「重」とされていたが走破タイムは平均よりもわずか0秒31遅いだけだった。

 ハガス調教師は2018年凱旋門賞の前に大雨のなかでコースを歩いた。この凱旋門賞で、管理馬シーオブクラスが最終的に追い込んでの2着となった。しかし彼と競馬界は10月2日にユーロスターでフランスに向かうとき傘を持って行く必要がないことを望むだろう。
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By David Milnes

(1ユーロ=約140円)

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[Racing Post 2022年8月28日「'Strong chance' Baaeed runs in Arc - but only if ground is suitable says Haggas」]