海外競馬情報 2018年02月20日 - No.2 - 1
女性騎手は能力面で男性騎手と同等であるという研究結果(イギリス)【開催・運営】

 "女性騎手は能力面において男性騎手と同等である"と、リヴァプール大学競馬産業経営学修士課程(MBA)が実施した研究は示している。

 過去14年間のデータを詳細に分析したこの研究は、女性騎手は同等の馬を与えられればその騎乗能力が基本的に男性騎手よりも良くも悪くもないと結論付けている。

 またデータは英国において、(1) プロ騎手免許のうち女性が保有しているのは11.3%に過ぎないこと、(2) 研究対象期間の全騎乗回数のうち女性が騎乗したのはわずか5.2%だったこと、を明らかにした。

 この研究を執筆したのは、北部競馬学校(Northern Racing College)の職場体験学習マネージャーであるヴァネッサ・キャッシュモア(Vanessa Cashmore)氏とリヴァプール大学競馬産業経営学修士課程(MBA)の最近の修了者である。同大学は、BHA(英国競馬統轄機構)・競馬賭事賦課公社(Levy Board)・競馬財団(Racing Foundation)からの資金援助を受けて、この修士課程を運営している。

 キャッシュモア氏はこう述べた。「この研究は女性騎手があらゆる面で男性騎手と同じぐらい優秀であることを強調しています。この研究結果が女性騎手により多くの騎乗機会が与えられる一助となり、さらに多くの女性が騎手としてキャリアを積む後押しとなることを望んでいます」。

 BHAは1月30日、男女の騎乗機会の不均等に対処することを繰返し約束した。これには、2017年に設立された"競馬における多様性促進グループ(Diversity in Racing Steering Group:DiRSG)"が協力する。

 BHAのCEOニック・ラスト(Nick Rust)氏はこう述べた。「この研究は、競馬界の多くの人々がある程度感じてきたことに、さらに証拠を提供するものです。女性騎手は男性騎手ほど優秀ではないと考える理由などありません。英国競馬が男女同等の条件で競える数少ないスポーツの1つであることを、私たちは誇りに思います。しかし、女性騎手が男性騎手と同等の騎乗機会を与えられていないのであれば、これを平等とみなすことはできません」。

「"なぜ女性騎手が男性騎手より少ないのか"、また、"なぜ(とりわけビッグレースで)女性騎手の騎乗数が男性騎手よりも少ないのか?"。私たちはこれらの原因を突き止める決意ですし、DiRSGもこれについて検討するでしょう。競馬は公正性と尊敬の精神に基づいて運営されなければなりません。これらの価値観が英国競馬界のすべての側面をしっかりと支え、参加者全員に公平な機会を提供することが、私たちの目標です」。

 BHAは多様性の問題に取り組み続けており、その一環としてフランスの状況を見守っている。というのも、フランスギャロ(France Galop)は一部のレースで女性騎手に減量特典を与えているからだ。BHAは今後数ヵ月間において、(1) フランスの取組みの結果、(2) DiRSGの見解、(3) キャッシュモア氏の研究結果、(4) BHA内部で実施されるさらなる統計分析の結果、を検討する。それにより、女性騎手に男性騎手と同等の騎乗機会を与えるために取るべき短期的・長期的措置を決定する。

 DiRSG のスポークスパーソンであるスザンナ・ギル(Susannah Gill)氏はこう述べた。「女性騎手の強さや能力については議論がし尽くされてきました。この研究は、そのような議論は脇に置き、変わりつつある考え方や姿勢に焦点を合わせています。そして最も重要なことですが、行動の変化を促すことを重点的に取り上げています」。

 「オックスフォード・ブルックス大学は"競馬界の女性(Women in Racing 競馬界の女性の認知度を高め上級職への採用を奨励することを目的に2009年に設立されたグループ)"と協力して英国競馬界におけるジェンダー(男女の差異)の象徴と多様性についての研究を発表しました。これを受けて設立されたDiRSGは、これらの重要な領域を強化し、新しい意見や議論を交わす場となるように協調することで、英国競馬界における多様性の課題に挑戦しようとしています。一丸となって取り組むことで、競馬界が様々なバックグラウンドをもつ才能ある人々を歓迎し支援することを保証できます。そうすれば、私たちは皆、均等な機会を得て、英国競馬界の将来の成功のために貢献することができます」。

 女性ジョッキーとして600回以上騎乗して約50勝を挙げているジェンマ・タッティ(Gemma Tutty)騎手はこう述べた。「私たちは"女性騎手は男性騎手と同じ能力を持っている"とずっと言い続けてきました。この研究はそれを裏付けました。これがより多くの馬主と調教師に、とりわけビッグレースで女性騎手を起用するよう説得する際の一助となることを望んでいます」。

 リヴァプール大学競馬産業経営学修士課程(MBA)の指導教官であるニール・コスター(Neil Coster)氏はこう述べた。「競馬産業で上級管理職に就くことを目指す人々に、このMBAは技能・バックグラウンド・知識を提供します。最初の修了者が行った数々の研究の中でも本研究は、このMBAが持つユニークな価値を示しています」。

 競馬財団のCEOロブ・へゼル(Rob Hezel)氏はこう述べた。「競馬財団が資金援助したMBAの研究において、競馬場で競う個人だけではなく競馬界全体に肯定的な結果がもたらされたことを嬉しく思います。競馬財団は人材育成・教育・研究を支援し続けます。そして、リーダーたちがこの研究結果を受け入れ、現在と未来のホースマンのために競馬産業を向上させる良い機会として捉えることを歓迎します。キャッシュモア氏の研究と、以前行われたオックスフォード・ブルックス大学の研究は、ジェンダー(男女の差異)が競馬界において問題となっていることを実証しました。この問題に対して、オープンで、確かな情報に基づき、建設的な方法で取り組みが行われることを期待しています」。

女性騎手についてのデータ

・2016年のプロ・アマチュアの騎手免許保有者778名のうち24%が女性。過去10年間、この数字に変化はない。

・プロの騎手免許のうち11.3%は女性が保有(見習騎手を含む)。

・2017年6月時点で、競馬の厩舎スタッフの51%が女性。2010年の42%から大きく増加。

・2016-17年度において、英国の2つの主要競馬学校(英国競馬学校・北部競馬学校)の生徒のうちほぼ4分の3が女性。

・14年間のデータ分析において、12万8,488レースの延べ125万5,286回の騎乗のうち、女性騎手はたった5.2%にしか騎乗していない(平地6.5%、障害2.9%)。データ収集期間中、これらの数値は若干上昇傾向にあった。

・女性騎手は平地競走のクラス1の全騎乗回数の1.1%に騎乗し、クラス6とクラス7ではそれぞれ10%と9.3%に騎乗した。

・女性騎手は障害競走のクラス1の全騎乗回数の0.8%に騎乗し、クラス5とクラス6ではそれぞれ3.8%と5.4%に騎乗した。

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