海外競馬情報 2026年03月12日 - No.8 - 1
アレン卿がBHA会長をわずか半年で辞任(イギリス)【開催・運営】

 アレン卿がわずか6ヵ月で英国競馬統括機関(BHA)の会長を辞任したことを受け、有力な競馬場が異例の反応を示した。アスコット競馬場を筆頭とする影響力が特に強いイギリスの競馬場が、喫緊のガバナンス改革を求めたのだ。

 3月3日(火)午前9時18分、アレン卿の辞任に関する第一報がBHAからもたらされた。そこからわずか22分後、英ジョッキークラブとアスコット、グッドウッド、ニューベリー、ヨークといったイギリスを代表する競馬場が「競馬界の改革支援」のため、競馬場協会(RCA)の統治体制に関する緊急の見直しを求めた。

 競馬場側からの最後通告には、BHAに独立した理事会の新たな設置に対する支持も盛り込まれていた。これは元々、アレン卿がBHA会長の就任にあたり、前提条件として掲げてきたものだった。

 この通告に名を連ねた関係者は、競馬界に影響を与える重要な決断を下す際には、競馬場の発言権を拡大するよう求める意向を明らかにした一方で、アスコット競馬場のCEOフェリシティ・バーナード氏は、必要があれば、RCAを脱退する用意があるとしている。このほか、サラブレッドグループ(Thoroughbred Group)の会長ジュリアン・リッチモンド-ワトソン氏もBHAに独立した理事会の設置への支持を表明している。

 BHAの構成組織が、独立した理事会設置やより商業性を重視した役割への改革案に合意できず、かねてより予想されていたアレン卿辞任のニュースが現実のものとなった。アレン卿と競馬界の勢力である競馬場や競馬関係者との間に生まれた対立により、こう着状態に陥ったことから、アレン卿の進退に関する憶測がここ数週間で強まっていた。

 アレン卿はコメントを寄せた。「競馬は大きな可能性を秘めた素晴らしいスポーツです。この1年間、情熱に満ち、レースを愛し、競馬が存続して発展するには改革が不可欠だと信じている多くの素晴らしい方々にお会いしました。また、勤勉かつ献身的に取り組んでくれたBHAの皆さんにも敬意を表します。競馬界の今後の発展を祈念しております」。

 2024年11月にアレン卿の任命が明らかになった際は、「飛びぬけた能力の持ち主だ」と絶賛されていたが、あまりにも早い幕引きとなってしまった。

 BHAの上級独立理事デビッド・ジョーンズ氏は「理事会は、アレン卿が野心的かつ実現可能なビジョンを策定していくために、多くの時間を割いて尽力してくれたことに対して感謝の意を表します。また、ビジョン策定を推し進めるためにガバナンス改革を実行に移せなかったことを遺憾に思っています。ご一緒できて光栄でした。今後のご活躍をお祈りしています」と語った。

 アレン卿の任期は短かったが、大きな波紋を広げるものであった。独立した理事会の設置を就任の条件として求めたため、当初は昨年6月に就任の予定だったが、そこから3ヵ月後の9月にようやくBHA会長として就任するに至った。

 就任からたった数週間で、レース開催日のデータ権の商業化に関する新たな方針について関係者と議論を開始したところ、競馬場側から激しい抵抗を受け、衝突してしまうこととなった。競馬場側は、現行の契約が満了になる2028年以降も同じ内容の契約が維持されるものと考えていたのだ。

 この手詰まりの結果、アレン卿の譲歩がない限り、競馬場側は独立したBHA理事会の新設を含めた改革案を一切承認しないという状況となった

 一方、馬主協会(ROA)、サラブレッド生産者協会(TBA)といった他のBHAを構成する団体や免許を交付されている関係者らは、アレン卿が競馬場側に譲歩すれば、ガバナンス改革案には賛成しないとして、膠着状態に陥ってしまった。

 最終的に、アレン卿がデータ権の問題で競馬場側に配慮したとみられている。しかし、これがほかの関係者から辞任を突き付けられるきっかけになってしまった。

 こうした一連の混乱を背景として、アスコットをはじめとする各競馬場が驚くべき行動に移った。RCAのウィルフ・ウォルシュ会長に同協会のガバナンス体制に関する正式な見直しや4月末を期限とした改革案の提示を求める書簡を送ったのだ。

 今回の書簡に名を連ねた競馬場側によれば、その目的は、RCAの「理事会および決議権の構成を均衡が取れて信頼に足るもの」に変え、「主要競馬場の重要な意見を意思決定に反映し」、「業界に広く影響を及ぼす問題について断固とした行動をとれる」体制を整えることにあるとした。

 また競馬場側は、独立したBHA理事会の設置により、「BHAが英国競馬界で一元化された強いリーダーシップを発揮できるようになること」を支持しており、現在の体制が「迅速で効率的な意思決定を妨げている」と認識していると述べた。

 バーナード氏は、アレン卿辞任のニュースに際し、「非常に残念だ」と述べるとともに、アスコット競馬場としても非常に不満が残るものだとした。

 同氏は「今こそ、RCAのガバナンス体制を見直すタイミングであると強く感じています。RCAは、競馬場側の立場を説明し、BHA内での競馬場の利益を守る役割を担っているのです。だからこそ、自分たちの代表として(RCAが)正当に機能していると実感できることが重要なのです」と話した。

 「おそらく現時点では、我々の代表として十分に機能しておらず、こちらが期待するような影響力もありません。これを看過することはできません。競馬場側はどうすれば、50年後も競馬を存続させられるかを真剣に見極めていく必要があるからです」。

 バーナード氏によれば、競馬場側は以前から、この問題に関して懸念を表明していたものの、既存の体制でも解決できるだろうと期待していた。しかし、同氏は「実際には、さらに多くの業界関係者が協議のため、再び一堂に会し、組織構造を再検討して、業界全体で進められる改革がないかを模索することになると思います」と話した。

 「もし4月末までに、これが実現できないようであれば、RCAからの脱退も辞さない考えです。そうなれば、アスコット競馬場の立場や役割を確認する必要が出てくるでしょう」。

 このほか、英ジョッキークラブのCEOジム・マレン氏も「旧態依然とした体制が維持されてしまった」と失望を隠さなかった。

 「この状態が競馬のためになるとは思いません」とマレン氏は続けた。「今回の一連の事態によって、変革の必要性や独立したBHA理事会が必要だという我々の訴えが正しかったことが証明されました。これこそがRCAに変革を求めている理由なのです」。

 RCAは現時点で、一連の経緯に関するコメントを出していない。また、アリーナレーシング社はコメントを控えた。

 BHA理事会は、アレン卿辞任後の暫定的な措置について協議をする予定だ。ジョーンズ氏は以前、暫定的にBHA会長を務めたことがある。

 2025年初頭からBHAのCEO代理を務めているブラント・ダンシー氏について、そのまま正式に任命されるのではないかとの見方がある。

訳注:BHAは3月5日(木)、デビット・ジョーンズ氏を暫定会長、ブラント・ダンシー氏を正式なCEOに任命すると発表した(BHA公式HP)。

By Bill Barber

[Racing Post 2026年3月3日「Major racecourses demand urgent reform after Lord Allen quits as BHA chair」]