カンザス州は、1,000 台の「ヒストリカル・ホースレーシング(HHR)」のゲーム端末機の設置を承認した。これは、同州におけるサラブレッド競馬復活の前兆だ。カンザス州では 2008 年以降、サラブレッド競馬が開催されていないが、2026 年秋に復活させ、できれば2028 年以降さらに拡大していくことが目標となっている。
すべてが計画通りに進めば、ユーレカ市のユーレカダウンズ競馬場で1年以内に競馬が再開される見込みだ。しかし、その前に課題が山積している。
ユーレカダウンズ競馬場は 2011 年に閉鎖されたが、所有者を含む地域の関連団体の働きかけもあり、グリーンウッド郡フェア委員会は、競馬にとどまらず地域社会にも役立つ施設として再生する計画を立てた。
「2026 年にユーレカで競馬を開催すること、それが我々の望んでいることです」と、カンザス州競馬賭事委員会の渉外マネージャーのランディ・エヴァンス氏は述べる。「現時点では、競馬場の所有者はまだ多くの仕事を抱えています。競馬場は現時点ではまだ準備が整っておらず、ユーレカダウンズで実際に競馬を開催できるよう、準備を進めているところです」。
同州では数年間、競馬が開催されていなかったため、ユーレカダウンズを競馬開催可能な状態にするには、多額の投資が必要だった。ユーレカヘラルド紙によると、州は競馬場の改修に 200 万ドル(約3億1,000万円)を予算化したほか、多数のボランティアが会場の清掃作業を行い、高校の木工科の生徒たちが事務所棟を建設するなどの恩恵を受けた。
カンザスサラブレッド協会の上級役員のピーチ・マドル氏によれば、州が配分した200 万ドル(約3億1,000万円)は返済される予定だが、ユーレカダウンズ競馬場は 100 万ドル(約1億5,500万円)の助成金を受け取り、そのおかげで工事を開始することができたとのことである。
同氏は、新しい場長のマイク・ワイス氏の指導のもとで進行中の取り組みとして、新たな馬場の導入を挙げた。
州はユーレカダウンズ競馬場に対し最大44日間の競馬開催を承認したが、当初は10~16日間という控えめな規模で開始する。
しかし、業界を支援する資金は、ローラ・ケリー州知事が署名した法令が根拠となっている。HHR機の粗利益の3%が2つの競馬基金に拠出される。そのうち30%はカンザス州競走馬生産振興基金へ配分され、70%はフェア競馬利益基金へ配分され、賞金の一部・施設改良・運営費に充てられる。
「支出額を上回る資金が確保できそうなので、開催日数を増やす予定です。1,000 台の HHR 機で予測を立てると、その額は数百万ドルにも達するでしょう」とマドル氏は述べた。
HHR 機は、ユーレカ市から西へ約 1 時間のパークシティにあるギリーズという娯楽施設に設置される予定だ。ギリーズのオーナーである実業家のフィル・ルフィン氏は、カンザスシティにあるウッドランズ競馬場の再開を試みたが、失敗に終わった。ギリーズは 12 月 15 日にグランドオープンの予定だ。
しかし、HHR 機とレース配信により、ルフィン氏はこの業界に収益をもたらす立場にある。
「(ウッドランズ競馬場の試みが失敗してから)数年間は何の報せもなかったが、HHR機の成功について耳にするようになりました」とマドル氏は語った。「これはルフィン家によるもので、彼らは何年もこの問題に取り組んできました。2024 年に州議会で可決され、非常に高い支持を得ましたが、施行するための資金調達手段を見出せないということから、知事が拒否権を行使し、再審議が必要となりました。そして、今年の7月に知事が署名しました」とマドル氏は述べている。
HHR機がなければ競馬は成り立たず、競馬がなければHHR機も成り立たない。
「HHR機に関しては、潜在的に数百万ドルにも上る粗利益の3%の税金が実際に競馬業界にもたらされるということを業界関係者が理解したことで、彼らの支持を得られました」とエヴァンス氏は述べた。
まだほかにもあるかもしれない。
こうした一連の動きは、少なくとも立法の観点から言えば、これらすべては2022年にカンザス州がスポーツ賭事を合法化したことから始まった。この州法は、パークシティのあるセジウィック郡でのみ、1,000台のHHR機の設置を許可した。また、2028年まで、カンザス州で競馬を開催できる唯一の場所はユーレカであると定めている。
しかし、そこには具体的な計画がすでに存在しているわけではない。エヴァンス氏によれば、それはむしろ、カンザス州における競馬の将来について一部の人々が抱いている考えやアイデアのようなものだという。
「カンザス州最大の施設は、1990年代後半から2000年代にかけてのウッドランズ競馬場でした。しかし、現在はアマゾンの倉庫となっています」
「つまり、巨大な競馬施設は存在しないのです。誰かがそれを建設しなければならないでしょう。いくつかの小規模な競馬場はありますが、2008 年以来競馬が開催されていないユーレカと同じ問題に直面することになります。競馬場を整備し、安全を確保するには、多くの造園作業やその他の作業が必要なのです。でも、施設は一つにとどまらないという期待は確かに持ちたいと思います」と彼は語った。
さらに、(スマホ)アプリ上で行われるスポーツ賭事の事業者たちは、ユーレカ競馬の再稼働の成功度合いを見極めようとしている。その上で、州内での営業ライセンスの申請を増やし、業界としてさらなる利益を得ようとするのだろう。
施設の整備に加え、カンザス州は競走馬生産の再建も必要としている。米国ジョッキークラブの統計によれば、2014年から2023年にかけて、州内の登録産駒頭数は20頭から7頭に減少した。
マドル氏は今後の最大の課題について、次のよう述べた。
「カンザス州で競走馬を生産することが、経済的に合理的な選択となるようにしなければなりません、今すぐに。これまでは、商業的な生産者であれ、オーナーブリーダーであれ、州産馬限定競走に出走させるために他州へ移動せざるを得なかったのです。今こそ『ちょっと待って、ここで競走馬を生産すれば、報われるから』と人々が口にするよう働きかけています」。
By Joe Perez
(1ドル=約155円)
[bloodhorse.com 2025年11月26日「Kansas' Approval of HHR Paves Road for Racing's Return」]
