海外競馬情報 2025年09月11日 - No.34 - 2
オンライン賭事の9%が闇市場に流れる(イギリス)【その他】

 違法ブックメーカーの利用が爆発的に増加した結果、違法賭事事業者が英国のオンライン賭事市場の9%を支配していることが、今週発表された報告書で明らかになった。

 賭事に関する民間調査会社「Yield Sec社(YS社)」の報告書によると、違法賭事事業者は2025年上半期だけで3億7,900万ポンド(約758億円)を稼いでおり、531もの違法賭事事業者が積極的に英国の顧客をターゲットにしていることが分かった。

 YS社によると2022年時点で、賭事収益のうち闇市場に起因するものはわずか2%であったが、今回の報告はそれから3倍以上に拡大したことを示している。

 公正な賭事推進キャンペーン(CFG)が委託した本報告書は、違法ブックメーカーの増加は他の広く報じられた賭け金額制限やアフォーダビリティチェック(馬券購入者の経済性チェック)の影響を受けて賭事客が闇市場へ移動したことよりも、(ギャンブル依存対策で)自主規制している顧客や18歳未満の者を標的としたことによるものと「完全に説明可能」であると主張している。そして一般の賭事を食い物にするような「闇市場の脅威」は存在しないと結論付けた。

 CFG創設者のデレク・ウェッブ氏は政府に対し、先月ゴードン・ブラウン元首相が提案した賭事税の大幅引き上げ計画の採用を求めており、「違法セクターは、英国の確立された有名な賭事事業者とは競合していません。弱い立場にある未成年者や自主規制している層を標的とし、『Gamstopの制限を受けないカジノ』と銘打った宣伝を通じて、最も中毒性の高いコンテンツを押し売りしています」と語った(訳注:Gamstopは、ギャンブル依存対策のため、英国で認可されたすべてのオンライン事業者へのログインやアカウント作成をブロックする無料のアプリ)。

 YS社の最高経営責任者(CEO)イスマイル・ヴァリ氏は次のように述べた。「一般消費者が、英国で違法な賭事事業者を利用することで、一体どんな利益が得られるというのでしょうか?英国における違法賭事事業者は、価格・商品・プロモーションのいずれにおいても合法な賭事事業者に常に勝つことはできません。一般消費者が違法賭事事業者を利用する正当な理由はありません。違法賭事事業者は、これを必要とする悪質な理由を持つ消費者、すなわち18歳未満の者やGamstop登録して自主規制している者のみを標的としています」。

 YS社の報告書の結論は、英国で税率を倍増させれば「犯罪が流入する」ことになると述べたヴァリ氏の最近の主張と矛盾しているようだ。

 業界アナリスト企業レグルス・パートナーズ社(レグルス社)のポール・レイランド氏は報告書に対し、闇市場の拡大は複数の要因によるものであるとしている。その一方で、未成年者によるオンライン賭事の実態は乏しく、違法サイトによる「Gamstopの制限を受けない」マーケティング戦略は自主規制している者だけでなく全プレイヤーを対象としていると反論した。

 レグルス社は、英国のオンライン賭事における闇市場の規模は5.3%と小規模であると主張している。これは2018年にはわずか2.1%であった。

 それ以前の主な要因は、制限により合法的に賭事ができない客層であったが、その後新たな要因が浮上している。具体的には、無料プレイに対する課税によりボーナスが付与できる闇市場が優位性を獲得したこと、賭事委員会による事業者の支払い能力審査やマネーロンダリング対策(AML)チェックの強化、そして最近ではオンラインスロットの賭け金上限5ポンド規制などが挙げられる。

 レイランド氏は今回の報告書の主張について次のように述べた。「賭事の総収益の観点からすれば、この数値は英国のオンライン賭事市場の現実を反映しつつあると言えるかもしれません。しかしながら、それは主に違法賭事が疑わしい利用規約付きではありますが非課税でボーナスを提供できているからなのです」

 「2018年以前の低水準から闇市場が急拡大した主な要因は、2017年の賭事ボーナスに対する課税、認可賭事事業者(特に大手企業)へのAML・支払い能力審査強化、そして直近ではスロット賭け金5ポンド制限です」

 「Gamstopは二次的な要因であり、実際に利用するよりも(抜け道を探すなどの)検索行動に大きく影響しています。一方で、オンラインゲームと並行して賭事コンテンツの配信が問題を顕在化しているとはいえ、闇市場においても未成年者のオンライン賭事は実質的に確認されていません」。

 CFGによれば、2022年から2024年にかけて合法オンライン賭事は19%成長したのに対し、違法賭事は345%増加した。これは、「衝撃的な数字であり、業界関係者はこの数値を根拠に、(変更を加えることで、違法賭事により優位性を与えるとして)収益構造・ギャンブル規制・課税制度の変更を回避しようとするだろう」と報告書は述べている。

 しかし、報告書には次のようにも付け加えられている。「この数字は、英国の闇市場の表に見えない暗部で起きていること──弱い立場にある18歳未満の若者と自主規制している顧客の被害──によって完全に説明されます」。

 大幅な増税を改めて訴えたウェッブ氏は、「2005年賭事法を制定した労働党は、今回のブラウン元首相の税制提案を受け入れることで、オンライン賭事がもたらした経済的損害を償う機会を得ています」と述べた。

 これは、金融調査・メディア企業であるヘッジアイ社との最近のYouTubeインタビューでヴァリ氏が述べた見解と一致しない。ヴァリ氏は、増税すれば、「価格、製品、販促活動はすべて台無しになります」と述べていた。

 さらに、「『税率を倍増する』といったサプライズを突然与えたら、何が起きると思いますか?人々は賭事活動から退き、支出が減り、雇用が減り、地域に還元されるお金も減ることになります。そうなるとどうなりますか?以前のように競争力のある価格設定ができなくなるため、犯罪が蔓延するのです」と続けた。

 YS社にコメントを求めたが回答は得られなかった。

By Bill Barber

(1ポンド=約200円)

[Racing Post 2025年9月4日
「Illegal bookmakers now control nine per cent of UK market, explosive black market report claims」]