海外競馬情報 2025年06月19日 - No.23 - 2
ジム・マレン氏が英ジョッキークラブCEOに就任(イギリス)【その他】

 英国ジョッキークラブの最高経営責任者(CEO)に就任したジム・マレン氏は、同国競馬最大の商業組織において困難な決断が避けられないことは認めつつも、何ごとも「十分な検討をもって」行うと述べた。

 6月2日から職務に就いているマレン氏は、ジョッキークラブを「私が受け継いだ時よりもずっと良い状態」で残すことが目標だと述べた。

 また、BHA(英国競馬協会)の会長職に6月から着任予定であったチャールズ・アレン氏がもしその職に就くようであれば、全面的に支援すると述べた。しかしながら、現在新会長の就任は不確実な状況となっている。

 マレン氏は、ラドブロークスコーラル社(ブックメーカー)や英国の新聞発行者であるリーチ社で最高経営責任者を務めた経歴を持ち、競馬場メディアグループ(RMG)取締役会メンバーとして、競馬界とのつながりを維持してきた。ジョッキークラブへの加入を「たいへんな名誉」と表現し、「多くの組織が自らの目的を定義するために莫大な時間を費やしています、ジョッキークラブはそれを既に持っていますし、その内容にも共感しています。」と語った。

 マレン氏はジョッキークラブのために「正しいことをしたい」と述べ、「クラブにとって正しいことは競馬にとって正しいこと」だと強調した。また、競馬が直面する数多くの課題について認めつつも、「その捉え方をリセットしたい」と述べた。

 同氏は次のように語った。「私たちはダービーの前日、つまりオークスの当日に今ここにいます。ジョッキークラブは素晴らしいチェルトナム開催と信じられないほど成功したエイントリー開催を終えたところです。この国には世界有数のスポーツ資源があるのです。もしも誰かに『これをあなたにそっくり任せます。何ができるか見せてください』と言われたらば、あなたの目は輝き、『どれほど自分は幸運なのか』と思うでしょう」

 「課題や障壁があることは明らかです。しかし、これを良い機会と捉え、どうすればさらに良くすることができるのかを考えましょう。ダイドー(・ハーディング氏, 貴族院議員でありジョッキークラブ会長)が私をここに連れてきた理由は、この捉え方をリセットするためなのです」。

 近年、ギャンブル規制、経済状況、入場者数の減少などの影響によって利益が減少し、ジョッキークラブの財務状況は悪化している。多くの人が、厳しい決断を下すためにハーディング氏がグラスゴー出身のビジネスマンを連れてきたのだと考えている。

 54歳のマレン氏は、もし最高経営責任者にそうした状況に対する備えがないようなら職務を果たすことはできないとしたが、「厳しい決断が必要になるというのは本当のことです」と述べた。

 「新しい最高経営責任者や上級幹部が就任する場合には、まず自らの手元にあるすべてのデータに基づいて客観的な決断を下すことが重要だと考えます。そして次は、その決断をいかにして実行に移すかということです」

 「その者は、一緒に作業をするのが自分の仕事に情熱を持った人々だということを理解していますので、十分な検討の上であらゆることは実施されるでしょう」。

 マレン氏が直面する難しい決断の一つに、ジョッキークラブが所有する15の競馬場に関する事案が含まれるとの憶測が出ている。エプソム、エイントリー、チェルトナムのほか、ウォーリック、ウィンカントン、ノッティンガム等の小規模な競馬場がある。ノッティンガムは、先週日曜日にマレン氏が初仕事を終えた場所だ。

 マレン氏は次のように述べた。「イギリスにおける競馬の命脈であるこれらの地域コミュニティとのつながりを失うのは愚かなことです。公的な経営責任者なら、それらを救うために犠牲をいとわないでしょう」

 「とはいえ、私は財務諸表を良く見て、ジョッキークラブに効率的で明るい未来を提供しながら、地域社会への関与や根付かせのための活動を継続できるようにしていく必要があります。それも3年から5年ではなく、10年から20年というより長いスパンを見据えての話です。もしこれらの小規模競馬場がなくなれば、イギリス競馬は立ち行かなくなってしまいます。」

 任期を終える時に現在と同じ数の競馬場を維持することができるかという質問に対し、マレン氏は、ジョッキークラブの職に就いて間もないためその質問にはまだ答えられないと述べた。

 しかし、次のように付け加えた。「ジョッキークラブを去った後で、再び競馬場に招かれ、妻と紅茶を飲みながらレースを観戦し、委員会室を歩いたりパドックで誰かに挨拶されたりしたときに、胸を張っていられるようにしたいのです」

 「そのためには、私が受け継いだ時よりもずっと良い状態でジョッキークラブを去らなければなりません。それが私の目標です」。

 今週からアレン卿がBHAの会長に就任する予定だったが延期された。マレン氏の同郷のスコットランド人である彼は、英国競馬のガバナンスモデルに対して懸念を抱いていると伝えられている。

 マレン氏は次のように述べた。「彼が就任すれば、私は彼を支持します。適切なガバナンスがなければ、すべてが崩れてしまうからです」

 「彼は私よりもはるかに経験豊富な人物なので、直接彼に聞くのが良いでしょう。私が彼を代弁して話をするのはおこがましいです。しかし、彼がこの業界に来られるのであれば、同じランカシャー出身者として一緒に働くことを楽しみにしています」。

By Bill Barber

[Racing Post 2025年6月6日
「New Jockey Club chief wants to reset the narrative but admits 'there will be hard decisions'」]