英国と欧州連合(EU)間の枠組み(ブレグジット後の関係)をリセットする合意の発表により、両域内での競走馬および繁殖馬の移動が円滑になる見通しとなった。
英国のキア・スターマー首相と EU 委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏は5月19日(月)、ロンドンで、ブレグジット後に蓄積された貿易障壁を取り除くための一連の取り組みを発表した。その中には、共通の衛生植物検疫措置(SPS)地域の設立も含まれている。
スターマー首相は、英国が再び「貝類やミートパティ」を欧州に輸出できるようになると述べ、このSPS合意による農産物・食品分野での進展を強調したが、これによってサラブレッドやその他の競走馬を含むほぼすべての家畜の移動も自由化される。
BHA(英国競馬統括機関) は、この広範に渡る合意の中で特に重要な意味を有する箇所を大いに称賛した。報道官は次のように述べている。「英国とEUが共通の衛生植物検疫措置地域に関する合意に向けて取り組んでいることを歓迎します。これにより、英国とEU間のサラブレッドの円滑な移動が促進され、英国産馬が EU域内で、また EU産馬が英国で出走することが容易になり、生産界の活性化にもつながります。
「今後、詳細が明らかになるのを待ち望んでおり、環境・食料・農村地域省(Department for Environment, Food and Rural Affairs;Defra)との議論を通じて、英国競馬関係者の声が引き続き反映されるよう努めていきます。」
2020年1月にブレグジット合意が発効して以来、大陸へ移動する馬は、英国からEU加盟国へ入国する際に獣医検査を受けることが義務付けられてきた。そのため、移動は「営業時間内」に合わせて調整しなければならず、書類手続きに時間がかかる場合、大幅な待ち時間が生じることもあった。
5月16日、ジェームズ・テイト調教師は、フランスの港で契約獣医師がストライキを行ったため、シャンティイ競馬場のG 3競走(テクサニタ賞:Prix Texanita)に出走を予定していた管理馬(クラザニン:Kullazain)を取り消さざるをえなくなった。
同様に、デビッド・ムニュイジエ調教師とラルフ・ベケット調教師も、英国が正式にEUから離脱した後に導入された国境検査制度でトラブルに巻き込まれた。
多くのフランスの調教師も、この制度は煩雑だと感じている。馬は目的地に向かう途中で英国の港を自由に通過できるものの、帰国時には遅延に見舞われるからである。
ブレグジット以前は、英国、アイルランド、フランスは、1973年に英国とアイルランドが欧州経済共同体(当時の EU)に加盟する以前に締結された、馬の自由な移動に関する 3 カ国間協定に署名していた。
ブレグジット後、ヨーロッパの主要競馬開催国の関係者は、サラブレッドがEUへの家畜輸入規則の特別健康免除の対象となるよう努力したが、その取り組みは行き詰まっていた。
昨年夏、英国で政権を掌握した労働党政権は、EUとの交渉で進展が見込める分野として、農産物・食品と家畜移動に関する合意を挙げていた。そして5月19日(月)の発表では、防衛協定、英国パスポート保持者への電子ゲート通過の迅速化、排出量取引協定、欧州漁船のイギリス水域へのアクセス延長とともに、このSPS計画が重要項目として取り上げられた。
By Scott Burton
[Racing Post 2025年5月20日
「New UK-EU reset deal set to pave the way for a return to frictionless movement of horses」]