海外競馬情報 2024年03月22日 - No.3 - 4
アフォーダビリティチェックに関する国会討論が紛糾(イギリス)【開催・運営】

 多くの国会議員が2月26日(月)、アフォーダビリティチェック(経済力チェック)について考え直すよう大臣たちに迫った。彼らはこの政府案を"ひどい政策"だと非難している。

 しかし国会討論において、スチュアート・アンドリュー賭事担当大臣は"競馬界に悪影響を及ぼしてはならない"と主張しながらも、この政策を推し進めることを誓った。

 アフォーダビリティチェックの廃止を求める嘆願書に4週間足らずで10万以上もの署名が集まったことにより、国会討論には多くの議員が押し寄せた。昨年発表されたギャンブルに関する政府報告書の中で、アフォーダビリティチェックはひとつの政策として提案されていた。

 この政策は今後5年間、競馬界の財政に毎年5,000万ポンド(約95億円)の影響を及ぼすと予測されている。また2月中旬にレグルスパートナーズ(Regulus Partners)が発表した調査では、経済的打撃の結果、最大7人に1人の割合で競馬従事者の雇用が失われる可能性があると見込まれている。

 アンドリュー大臣は、政府と賭事委員会(訳注:英国における賭事の規制と賭事法の監督を行う非省庁的な公的機関)はいずれもアフォーダビリティチェックについて表明された懸念に耳を傾けてきたが、賭事委員会はこの政策を進めていくことになるだろうとくりかえし述べた。ただ強化されたチェックは試験的に始められることになる。

 そしてアンドリュー大臣はこう続けた。「これらのチェックが競馬界や競馬従事者に悪影響を与えたり、顧客の行動や心理を妨げたりするようなものでないことを確実しなければなりません」。

 「また、馬主や調教師といった競馬界に投資する富裕層の個人を遠ざけるようなことがあってはなりません」。

 「リスクにさらされている人々を守りたいと思っており、それは当然のことだと考えています。大多数の馬券購入者に及ぼされる混乱は微々たるものであり、被害はまったくないでしょう」。

 影の内閣の賭事担当大臣であるステファニー・ピーコック議員は、政府に対してよりはっきりとした説明を求めた。「現代において弱い立場の人々をギャンブルの被害から守るために、規制を新しくする必要性については意見が一致していると思います」。

 「しかし同時に、政府がどのようにしてアフォーダビリティチェックをしっかりと実施していくかを明確にすべき相手は、賭事客・競馬界・賭事業界です。このチェックは責任をもって賭事を行う人たちに不要な摩擦を生じさせない方法で、正確に実施される必要があるのです」。

 今回の国会討論では政治的志向性を異にする議員たちが発言した。そのなかには選挙区に競馬場がある議員も多くいた。

 かつて文化相や健康相を歴任したマット・ハンコック議員(ウェストサフォーク地区選出)も出席していた。彼の選挙区にはニューマーケットが含まれる。

 彼はアフォーダビリティチェックを"大問題"だと述べ、「今後の競馬界にとって絶対的に核心をなす問題であり、私たちは過ちを犯しつつあります。いったん立ち止まって、出直さなければなりません」と語った。

 ハンコック議員は、1年間で馬券売上げが9億ポンド(約1,710億円)も落ち込んだことを示す賭事委員会の最新の数字を引き合いに出し、「競馬界はすでに経済的打撃を受けています。ほかの国では賞金が増額されつつあるのに、英国では信じられないほどひっ迫しているのを目の当たりにしてきました」と述べた。

 さらに自らが"組織の体質上の問題"と評する点についても指摘した。

 「大臣がチェックは摩擦のないものになると述べたのを、賭事委員会は"大多数にとって摩擦のないもの"と言い換えています」。

 「違いますよね。アフォーダビリティチェックが実施されるのであれば、摩擦のないものであるべきです。大臣はそうなるように尽力しており、それが政府の方針であるにもかかわらず、規制当局である賭事委員会は"摩擦なし"を"大多数にとって摩擦なし"と不当に誤って説明しています。これは明らかに問題ですね」。

 ヘイドックパーク競馬場のあるセントヘレンズ北地区選出のコナー・マクギン議員は、競馬界全体がこの問題について異口同音に声をあげていると述べた。

 「どのような客観的尺度から見てもひどい政策ですね。根拠に基づいたものではないわけですので、客観的尺度で見ること自体が困難でさえあります」。

 「つじつまが合わず、さまざまなレベルで伝聞や感情に反応したものになっています」。

 「政府のかなり行き過ぎた行為であり、個人の権利を侵害するものです。英国の合法的に楽しむことのできるレジャーの中で、政府がこのような形で支出制限を定めたものはほかにありません」。

 マクギン議員は、「アフォーダビリティチェックの影響がどのようなものかを想像してみる必要すらありません。それはすでに競馬界で実感されていて、"財政危機"を招いているのです」と述べ、「政府はできれば永久的に、そうでなければ約束どおり摩擦がないものであると証明されるまでは確実に、このアイデアを却下すべきです」と付け足した。

 フィリップ・デイヴィス議員は競馬産業、そして何よりも賭事客のために率直に発言したいと語った。

 また、多くの懸念を抱いていると述べ、政府や賭事委員会が"賭事にはもともと嫌悪感のようなものがある"と考えていることを不適当だと判断すると続けた。さらに、政府が"上から目線で賭事客をある種の下級民として扱っている"と非難した。

 デイヴィス議員は、「政府・賭事委員会・ブックメーカーが個々の賭事客が使える金額を彼らのあいだだけで決定し、賭事客自身が事実上これに対して何も発言できないというのは、受け入れられません」と付け足した。

 国会討論で発言した全員がアフォーダビリティチェックに批判的だったわけではない。

 労働党のキャロライン・ハリス議員は、「誰も、少なくとも私は、人々が賭事を行うのをやめさせようとは思っていません。チェックが発動する人の数は取るに足らないものです。アフォーダビリティチェックに反対する主張は理解しがたいものです。少人数にわずかな不便が生じるだけで、被害を減らすことができるのです」と語った。

By Bill Barber

(1ポンド=約190円)

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