海外競馬情報 2024年02月21日 - No.2 - 8
実験室で馬の腸が創出されれば疾病研究は次なる段階へ(イギリス)【獣医・診療】

 "馬の疾病研究は次なる技術的段階に入ろうとしている"と、スコットランドのモアダン研究所(Moredun Research Institute)のベス・ウェルズ(Beth Wells)博士は述べる。彼女は国際サラブレッド生産者連盟(ITBF)のウェビナー(1月18日)で、馬自律神経異常症 (Equine Grass Sickness: EGS)に関するプレゼンを行い、研究者たちが実験室で馬の腸を作ろうとしていることを明らかにしたのだ。

 さらにウェルズ博士は、この創出方法はほかの家畜種で可能であることが証明されており、これが完成すれば"世界で初めて実験室で創出された馬の腸"となると語った。

 モアダン財団・馬自律神経異常症基金のタニス・ハート(Tanith Harte)博士は腸を創出するために、ほかの理由で安楽死措置となった健康な馬だけでなく、EGSで死んだ馬からも組織を採取している。

 ウェルズ博士は、「ハート博士はまず胃腺の一部を創出しています。これらは最終的に、馬の胃とまったく全く同じ生理機能を持つミニ胃(mini horse stomach)を形成することになります」と語った。

 世界の一部の地域では「マルセコ病(mal seco)」とも呼ばれているEGSは、主に馬の胃腸系に影響を及ぼす自律神経機能障害である。1907年にスコットランドで初めて報告されたEGSの謎は、一世紀以上経っても原因も予防法も解明されていない。

 北米ではEGSの発症例はほとんどない。

 ウェルズ博士は、「これはもちろん、健康な馬とEGSを患った馬の両方における腸の機能について理解を深めるという点で、絶対的な恩恵をもたらす研究となるでしょう」と述べる。

 とりわけ欧州において、EGSは馬主にとって複雑かつきわめて有害な問題となっている。ウェルズ博士は、プロジェクト全体の要となるのは"協力し合うこと"だと考えている。そして世界各地の馬主に「サンプル提供の検討」と、「ウェブサイト(grasssickness.org.uk)を通じてのEGSの症例報告」を勧めている。

 報告される症例が何年も前のものであったとしても、より広範な症例のデータベースを構築することは、研究チームが環境的・気象的・地理的なものと考える要因を追究したり、馬主に潜在的なリスクを警告したりするのに役立つだろう。

 ウェルズ博士は、このデータ収集を通じてスウェーデンの共同研究者とともに腸管オルガノイドの創出を目指していると表明した。EGS研究のために馬の腸を作ることで、胃潰瘍・疝痛・大腸炎などのほかの腸疾患にも焦点を当てる機会が研究者に与えられる。

 ITBFの獣医諮問委員会の委員長であるデズ・レドゥン博士は、「サラブレッド生産において我々が行っていることの正当化と、ソーシャルライセンス(訳注:活動を継続するには社会に貢献する必要があるという考え方)にとって、これは非常に貴重なモデルとなります。馬の健康管理に対する献身ぶりを示すことは、我々の活動を正当化する上でとても重要なことなのです」と語った。

By Sean Collins

[bloodhorse.com 2024年1月19日「Lab-Grown Horse Gut Next Step in Equine Medical Tech」]