海外競馬情報 2024年01月19日 - No.1 - 6
豪州リーディングのユースタス調教師、香港に移籍(香港)【その他】

 2022年メルボルンカップ(G1)の勝利トレーナーであるデヴィッド・ユースタス調教師(32歳)は、物心ついたときから香港で調教することを強く望んでいた。来シーズン、この数々の旅を重ねてきた若き英国人の夢が現実のものとなる。彼は家族をつうじて香港の競馬コミュニティと強いつながりを持ってきた。

 彼の叔父は香港を拠点に活動していたデヴィッド・オートン調教師である。ユースタス氏の競馬に関する記憶は、ニューマーケットで厩舎を営む父ジェームズの活躍と同じぐらい、叔父の世界各地で成し遂げた数々の快挙によって満たされてきた。

 ユースタス氏はこう語る。「私の母ガイはデヴィッド・オートンの姉妹なのです。だから9歳か10歳のころ、叔父が香港を拠点に調教しているのを知って、いつかそこで調教できたら素晴らしいだろうと思っていたのです」。

 「実はそれ以来ずっと、純粋にそのことが気になっていたのです」。

 「母が叔父からファックスをもらっていたのを覚えています。香港で彼らの馬が優勝したのです。当時はそのような方法でしか連絡が取れませんでした」。

 「香港のG1を制したプレシジョンのことも記憶に残っています。ほんの子供だったのですが。ニューマーケットの台所に優勝写真が飾ってあったので、香港はつねに身近だったのです」。

 「調教師として香港に招待されるのはとても光栄なことです。枠は限られていますし、熾烈な競争を強いられますが、間違いなくテンションがあがりますね。この年齢の調教師にとって香港を拠点にできるのはおそらくめったにないチャンスだと思うので、できれば長くて実り多いキャリアを築きたいです。それが狙いであるのは確かですね」。

消えずに残っていた野望

 ユースタス氏は弟ハリーとともに英国競馬の中心地で育ち、父のもとで働き、すぐに世界進出に乗り出したが、香港で調教したいという野望はつねに残っていた。なお、弟ハリーも今や独立して自らの厩舎を構えている。

 ユースタス氏はこう続けた。「そのころは夢にすぎなかったのです。しかしぜひ香港に行ってみたいと思っていたところ、2009年に父が管理していた中で最強のスプリンター、ウォーアーティストが香港スプリント(G1)に参戦することになり、それに同行する機会にめぐまれたのです。当時18歳でした」。

 「またロジャー・ヴェリアン調教師の管理馬の豪州遠征に同行したのですが、そのときもファラージが2014年の香港カップ(G1)に参戦することになったので香港に来ました。実はファラージの鞍上を務めたのはアンドレア・アッゼニ騎手なのですが、彼とは親しくしているのです。とても優秀なジョッキーですね。香港で彼と近況を話し合えることを楽しみにしています」。

 「2014年は滞在を2週間延長して、競馬場のキャスパー・ファウンズ厩舎やデヴィッド・ホール厩舎で過ごして、現場の感触を少しつかんだのです」。

国際的な経験

 もっと国際的な経験を積みたいと願って、ユースタス氏は豪州に戻り、ピーター・ムーディ厩舎とピーター&ポール・スノーデン厩舎で働き、そして最終的にキアロン・マー調教師とパートナーシップを組むことになった。

 「ピーター・ムーディ厩舎で1年、そしてちょうどキャピタリストがゴールデンスリッパー(G1)を制したころにピーター&ポール・スノーデン厩舎で1年過ごしました。素晴らしい経験でした。キアロンとは、2015年から一緒に働くようになったのです」。

 ユースタス氏は2018年8月にマー調教師と共同で厩舎を運営するようになって以来1,600勝以上を挙げており、その中にはゴールドトリップによる2022年メルボルンカップ制覇を含むG1・30勝が含まれている。マー&ユースタス両調教師は昨シーズン347勝を挙げて豪州のリーディングトレーナーに輝き、今シーズンもクリス・ウォラー調教師をリードして現時点でランキングの首位に立っている。

 2人は何よりも、スポーツ科学の活用とデータ収集が成功の不可欠な要素であると認めている。

 ユースタス氏は香港に落ち着き厩舎を開業したら、従化の世界クラスの施設とスポーツ科学の方法論をフル活用するつもりである。

 「香港ではさまざまな調教スタイルをもたらしたいと考えています。それは英国と豪州での経験から培ったものであり、また香港の調教・競走寿命・キャリアを向上させるためのスポーツ科学とデータの活用に重点を置くことで実現できるでしょう」。

 「香港ジョッキークラブ(HKJC)とも、馬主の皆様とも、コミュニケーションをとっていくことがたいへん重要で、それを最優先していくつもりです。それこそが若さ・活気とともに、私が発揮したいと思っているものです」。

 「私が向かっているところが世界で最も競争の激しい競馬開催地のひとつであることは心得ています。ワクワクしていますね」。

唯一無二の総合能力

 HKJCの競走担当理事であるアンドリュー・ハーディング氏はユースタス氏の免許取得を歓迎し、この英国人トレーナーが香港の世界クラスの調教師陣を補完してくれると確信している。

 「デヴィッド・ユースタス氏は、その年齢の調教師としてはめずらしい豊富な経験と唯一無二の総合的な能力をもたらしてくれます」。

 「彼は世界中の名伯楽たちと一緒に仕事をし、多くのことを学んできました。また、スポーツ科学を理解し、調教方法を確立しています。香港でデヴィッドのキャリアが輝かしいものになるのを楽しみにしています」。

 「重要なのは、彼が豪州で目覚ましい活躍を見せただけでなく、その英国の競馬に関する知識と経験もまた香港競馬界にとってとても貴重であるということです。世界レベルに達しつつある私たちの競馬を補完するために欧州から馬を呼び寄せるのに貢献するでしょう。香港競馬界は世界中から集まった才能を常にブレンドしてきたのです」。

By Hong Kong Jockey Club/Leo Schlink

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