海外競馬情報 2023年03月20日 - No.3 - 1
急成長のワールドプール、競馬界にとっての救世主となるか(国際)【開催・運営】

 UKトート社のCEOアレックス・フロスト氏によると、28の国・地域のパリミュチュエル賭事業者が参加する共同賭事プール計画、ワールドプールは"競馬界にとっての救世主"だという。UKトート社は筆頭主催者の香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club: HKJC)とともにワールドプールを推進している。

  "ワールドプールは近年で最も重要なイノベーションの1つである"とその提唱者たちは信じている。競馬場への放映権料の増加や共同賭事プールによる収入増加により、より大きな財政的見返りを英国競馬界にもたらすと期待されている。

 メルボルンで開催されたアジア競馬会議(Asian Racing Conference: ARC)に集まった35ヵ国からの約700人の代表者たちに向けて、フロスト氏はワールドプールが2019年ロイヤルアスコット開催で導入されてからの成長を"実質的であり大規模に発展できる"と説明した。2022年ロイヤルアスコット開催だけでも総売上高は35%増の1億6,800万ポンド(約277億2,000万円)に達している。

 しかし2月18日のライトニングS(G1 ヴィクトリア州・フレミントン)において豪州で初めてワールドプールが運営され、2月25日にはサウジアラビアが加わるなど、フロスト氏と共同主催者はこれで終わりになることはないと信じている。

 フロスト氏は「素晴らしいオッズ設定と流動性という組合せが、間違いなく成長に寄与するでしょう」と述べた。

 新たなレースが徐々に日程に加わっている以外では、新しい技術プロトコルが導入されることでワールドプールの手順が最も大きく変わることになる。

 HKJCのCEOウィンフリート・エンゲルブレヒト⁼ブレスゲス氏はこう語った。「すべてのパリミュチュエル賭事業者にとって鍵になっているのはグローバルな流動性です。それは競馬産業への収益にもつながります。グローバル基盤のために競馬賭事の統合プロトコルを更新することが肝要です」。

 昨年7月にHKJCのトレーディング担当理事から賭事商品担当専務理事に昇格したマイケル・フィッツサイモンズ氏は、数年前から準備されてきた進展についての最新報告を行った。

 「現在のプロトコルは賭事の高速照合に苦労しています。しかし新しいプロトコルはより幅広いエキゾチック馬券の発売を可能にし、すべての賭事業者のあいだで馬券の発売締切を同期させることができ、消費者の信頼を確保することができるでしょう。年内には準備が完了すると思います」。

 ブレスゲス氏はこう続けた。「新しいプロトコルによって、より多くのワールドプールレースが開催できるようになります。現在のところ、出走取消や競馬開催国によって異なる賭事ルールなど、断片的な多くの問題に対処しなければなりません。しかし、すべての馬券購入者が香港と同じように詳細情報にアクセスできる状況を実現したいと考えています。そのために新しいプロトコルが必要なのです」。

ブレスゲス氏は、昨年12月に本紙(レーシングポスト紙)で述べた「ワールドプールは"近い将来"世界トップ100のG1競走で提供可能である」という主張をくり返した。そして、フランス・アイルランド・南米のレースがさらに加わると予測している。

 豪州の賭事業者タブコープ社のCEOアダム・ライテンスキルド(Adam Rytenskild)氏はさらに踏み込んで、「毎週土曜日にワールドプールが開催されるようになるのが楽しみです。ライトニングSをきっかけに豪州でワールドプールが頻繁に開催されるようになれば嬉しいですね。ワールドプールは素晴らしいイノベーションです。パリミュチュエル賭事の流動性を高めることができるあらゆるアイディアに弊社は興味を持っています」と語った。

 ライトニングSでのワールドプールの発売金は610万豪ドル(約5億4,900万円)に上った[1レースあたりの最高記録は2022年英ダービー(G1)の700万ポンド(約11億5,500万円)]。また、ライトニングS開催日全体(全9レース)の発売金は4,690万豪ドル(約42億2,100万円)だった。

 ライテンスキルド氏は、「国際的な協力がパリミュチュエル賭事の強化には不可欠です。そしてワールドプールはパリミュチュエル賭事を馬券購入者にとっていっそう魅力的なものにしているのです」と付け足した。

 フロスト氏はUKトート社の経験を詳しく語り、「プレイスポット(Placepot 第1~6レースの3着以内にくる馬を当てる馬券)などの既存の馬券を活性化させ、トーナメントやファンタジー大会を通じて若いファンを引きつけることが、ビジネスを成長させるのに不可欠です」と述べた。

 そして、「保証付きプレイスポット馬券は、新たな若い顧客を取り込むのに寄与しています。そのような影響はファンタジー大会にも見られます。私たちが尊大すぎてファンタジー・フットボールのような他のスポーツから学ぼうとしないということはないのです」と続けた。

 フロスト氏によると、昨年9月に提供が開始されたトートファンタジー(Tote Fantasy)は毎週22%の成長を示しているという。このゲームでは、賭事客は仮想通貨1万ギニーの予算で自らの厩舎を開業し、午後の時間帯に少額を賭けて実際の賞金を獲得できる。

 またタブコープ社も若い顧客の取り込みを図っている。ライテンスキルド氏が"自らを創造的に破壊する"と表現する全体戦略の一環として、ソーシャルベッティング基盤のダブル(Dabble)の株式を20%購入している。

 「弊社の関連市場を創造的に破壊する覚悟でいます。弊社は新たに統合された顧客体験を作り出し、最新デジタル技術を活用した会場での賭事体験を年内に提供することを約束します」とライテンスキルド氏は語った。

By Howard Wright

(1ポンド=約165円、1豪ドル=約90円)

[Racing Post 2023年2月20日「Burgeoning World Pool hailed as a 'life-saver' for the racing industry after Australia first」]