海外競馬情報 2021年06月22日 - No.6 - 1
競馬界への馬の供給の悪化を示唆する報告書(イギリス)【生産】

 サラブレッド生産者協会(TBA)が発表した重大な報告書は、新型コロナウイルスの影響で国内の生産界がさらに衰退した結果、中長期的に英国競馬の健全性に"壊滅的な影響が及ぼされる可能性がある"と注意喚起している。

 この報告書はセリやウェザビーズのデータに加え、広範囲にわたる生産者への調査や産業レポートをもとに作成された。そして2018年経済影響調査報告の発表以降、英国生産界および一般的な英国競馬への馬の供給の見通しがいっそう悪化していることを明らかにしている。

 さらに報告書には、馬主が所有馬の数を減らしたり、より高額な賞金を得るためにフランスやアイルランドに馬を預託していることや、今年3人の重要な生産者が亡くなったことから、「英国競馬界が慣れ親しんできた規模で競馬番組を維持するのに十分な馬はいなくなるだろう」と記されている。

 2020年には英国とアイルランドで生産頭数が再び減少した。報告書は、昨年は未出走馬のセリの総売上額が7,000万ポンド(約108億5,000万円)以上も減少したと指摘している。また、競馬番組に必要な頭数と生産頭数のギャップを、他国からの馬の輸入で埋められるとは考えていない。

 "早急であるものの慎重に考えられた行動"のために出された勧告には以下が含まれている。

・ トップクラスの生産と競馬の"拠点"としての英国の評判を十分に利用すること。

・ レース体系の最上位にある重賞競走を保護すること。

・ 多様性があり魅力的な競馬番組を提供すること。

・ 中距離と長距離のレースを特に支援すること。

 また報告書は競馬産業が一丸となって、賦課金制度改革を確かなものにし、競走馬の所有を拡大させるための努力を支援し、他国で成功を収めている取組みを検討することを求めている。

 TBAのジュリアン・リッチモンド⁻ワトソン会長はこう述べた。「TBAの2018年経済影響調査報告が発表されて以来、英国の生産者と血統にとっての環境を改善するための戦略的計画の一環として多くのプロジェクトを実施してきました」。

 「昨年6月の競馬再開に間に合うようにグレート・ブリティッシュ・ボーナス(GBB)が実施され、英国産サラブレッドに投資する人々のために切望されていた支援を提供できたのは素晴らしいことでした」。

 「私たちは2020年を通して積極的に状況を監視し、さまざまな情報源からデータを収集して、生産界への潜在的な影響を評価しました。本日の報告書は、2018年経済影響調査報告で最初に指摘された傾向のいくつかが過去12ヵ月間の出来事によって、残念なことに加速してしまった証拠を提供しています」。

 「GBBは初期段階で成功の兆しを見せていますが、それだけでは生産界の問題をすべて解決できません。今回の報告書は将来生産界が盛り返すための勧告を提供しています。競馬界、競走馬、関係者の長期的な利益のために、業界パートナーが私たちを支援してくれることを願っています」。

By Tom Peacock

(1ポンド=約155円)

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[Racing Post 2021年5月25日「TBA warns of urgent need for intervention to protect British racing's health」]