海外競馬情報 2021年04月20日 - No.4 - 1
2020年の予後不良事故率、前年につづき最低記録を更新(アメリカ)【開催・運営】

 米国ジョッキークラブが3月29日に発表した"事故馬データベース(Equine Injury Database:EID)"によると、2020年は前年につづき馬の安全性の面で画期的な年になった。

 EIDによると、2020年の予後不良事故率は出走馬1,000頭当たり1.41件。記録開始からの12年間で最低の数値となった。2019年の出走馬1,000頭当たり1.53件に続いて2年連続で最低記録を更新したことになる。

 2020年の予後不良事故率は、出走馬の99.86%がそうした事故に遭わず無事にゴールしたことを示している。

 予後不良事故率は全体的に減少傾向にある。EIDでは2009年の予後不良事故率は出走馬1,000頭当たり2.00件と記録されているが、2020年の予後不良事故率はその当時よりも29.5%、すなわち3分の1近く減少している。また、これまでの最低記録だった2019年の予後不良事故率と比較しても7.8%減少した。
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 2009年からの事故馬データベース(EID)の傾向については、以下で確認できる。

jockeyclub.com/pdfs/eid_12_year_tables.pdf

 2009年にEIDが作成され始めて以来、年齢別では2歳馬の予後不良事故率が一貫して最低の数値だったが、2020年に2歳馬の予後不良事故率は前年を43%上回った。一方、3歳馬と古馬(4歳以上)の予後不良事故率は前年をそれぞれ8%と14%下回った。予後不良事故の年齢別の差異は、統計的に有意なものではなかった。

 2020年のダートの予後不良事故率は出走馬1,000頭当たり1.49件で過去最低となった。芝の予後不良事故率は、前年を19%下回り、この馬場種類においては2009年以降で4番目に低かった。人工馬場の予後不良事故率は出走馬1,000頭当たり1.02件で、すべての馬場種類の中でふたたび最低となった。

 競走距離6ハロン(約1200m)未満での予後不良事故率は出走馬1,000頭当たり1.66件で、他の距離よりもふたたび高い数値になった。競走距離6ハロン~1マイル(約1200m~1600m)と競走距離1マイル(約1600m)超の予後不良事故率はそれぞれ1.35件と1.22件であり、いずれもEIDが作成され始めて以来最も低いものとなった。

 EIDの設立時から顧問を務めてきた獣医疫学者のティム・パーキン博士はこう語った。

 「2019年から2020年にかけて、予後不良事故のリスクが全体的に8%減少しました。2009年以降、このリスクは29.5%減少しています。予後不良事故率が2009年と同じとした場合に比べると、2020年には140頭がそうした事故に遭わないで済んだということになります。2020年のデータの傾向をよりよく把握するために、これからの数ヵ月間、詳しく数値を調べていきます」。

 ジョッキークラブの上級顧問でありEIDの管理者でもあるクリスティン・ワーナー氏は、追加的なデータが予後不良事故をさらに減らすように努める上で有益な情報を提供するはずだと述べている。

 「2020年に予後不良事故率が改善したことは喜ばしいことであり、競馬場や競馬統括機関の馬の故障を減らすための努力を称賛します。しかし他の分野でのより詳細な調査が必要とされています。競走馬場試験研究所(Racing Surfaces Testing Laboratory)の電子治療記録システムや管理品質システム(MQS)のようなツールを使って追加的なデータを記録することで、競馬統括機関・競馬場・研究者は馬の健康と競馬場の安全性についてよりよく把握できます。そして馬の故障を防止することを目的としたさらなる精査や研究を可能にするでしょう」。

 2012年3月から、各競馬場はEIDの統計をジョッキークラブのウェブサイトに任意で公表できるようになった。EIDの統計を公表した競馬場の予後不良事故率は出走馬1,000頭当たり1.30件であったのに対し、公表しなかった競馬場の予後不良事故率は1.47件だった。

 NTRA(全米サラブレッド競馬協会)の安全・公正に関する同盟(Safety and Integrity Alliance)の認定競馬場21場は、出走馬1,000頭当たり1.32件の予後不良事故率を報告した。それに対し、2020年に競馬を施行した非認定競馬場62場がEIDに報告した予後不良事故率は1.48件だった。

 EIDの統計では、レース後72時間以内に馬が死に至った事故を予後不良事故としている。この統計は正式なサラブレッド競走だけを対象としており、障害競走は含んでいない。この統計はまた、報告の適時性など多くの考慮事項により数値が変わることがある。

 EIDの調査に参加する競馬場の一覧と、統計を任意公表した競馬場からの詳細なデータは以下で閲覧できる。

jockeyclub.com/default.asp?section=Advocacy&area=11

 EIDには、2020年を通じて北米で出走した全サラブレッドの約99.7%が含まれる。

 事故馬データベース(EID)は2008年7月に、グレイソン-ジョッキークラブ研究基金の第1回目の競走馬福祉・安全サミット(Welfare and Safety of the Racehorse Summit)で考案され、ジョッキークラブにより立ち上げられた。EIDは有効な統計を作成する標準化フォーマットを用いてレース中に発症した故障の頻度・種類・結果を明らかにしようとすると同時に、故障のリスクが高まっている馬の特徴を突き止め、安全性の向上と故障の予防を目的とした研究のためのデータソースとして役立っている。

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By Blood-Horse Staff

[bloodhorse.com 2021年3月29日「Equine Injury Database: Another Record Year for Safety」]