海外競馬情報 2020年04月22日 - No.4 - 5
ウイルス感染拡大の影響で変化を求められる競馬チャンネル(アメリカ)【その他】

 数ヵ月前には、誰もが4月最初の週末を待ち遠しく思っていた。ケンタッキー大学の学生たちが4月4日にアッシュランドS(G1)やブルーグラスS(G2)などを観戦するためにキーンランド競馬場へ押し掛けるはずだった。アケダクト競馬場ではウッドメモリアルS(G2)、サンタアニタ競馬場ではサンタアニタダービー(G1)が施行される予定だった[訳注:キーンランドの春開催(4月2日~24日)は中止、ウッドメモリアルSとサンタアニタダービーは延期となった]。

 それどころか、新型コロナウイルス感染拡大のために、4月4日にレースを施行したのはわずか4つのサラブレッド競馬場だった。とはいえ、あらゆるメジャープロスポーツやカレッジスポーツが中止となっている現状を踏まえれば、感謝しなければならない。それにNBCスポーツと提携したTVG(競馬賭事チャンネル)のおかげで、競馬は全米で放映されている。テレビ業界の統計によれば、TVGは米国の4,500万世帯で視聴できるが、NBCスポーツは8,000万以上もの世帯で見ることができる。

 多くのスポーツ/レジャー関連企業が解雇・休業・閉鎖を発表しているが、競馬は何とか持ちこたえるためにベストを尽くしている。ホースマンたちはひたすら馬を世話し続けて、事態が良い方向に向かうように期待している。

 TVGのスタッフは、レースを放映できる競馬場が激減して週間プログラムしか組めないにもかかわらず、そのプログラムを視聴者に届けるべく熱心に働いている。現在レースの放映が可能な競馬場は、ガルフストリームパーク・タンパベイダウンズ(いずれもフロリダ州)、オークローンパーク(アーカンソー州)、ウィルロジャーズダウンズ(オクラホマ州)、フォナーパーク(ネブラスカ州)である。TVGでは、出演者も裏方のスタッフもこのような状況下で最善の方法で取り組んでいる。

 ファンデュエル社(FanDuel デイリーファンタジースポーツサイト)の社長でありTVGネットワーク・ベットフェアUS社のCEOであるキップ・レヴィン(Kip Levin)氏はこう語った。「あらゆることが刻一刻と展開する目まぐるしい変化を経験しています。しかし、社員の安全を念頭に全ての決定を下してきました。目が回るほど多忙です。一番大きな変化があったのはテレビ番組制作部門です。この部門では100人以上が働いていますが、その大半が在宅勤務となりました」。

 数週間前、TVGはいくつかの競馬場から生中継を続けていたが、3月14日(土)のレベルS(G2 オークローンパーク)の後にその姿勢を見直した。

 レヴィン氏はこう続けた。「経営陣はその土曜日の夜に集まり、"今日という日を乗り切ったわけですが、それで何が分かったことはありましたか"と言いました。良い手本を示すべきだという責任をそれぞれが感じていました」。

 「ソーシャルディスタンシングに関する情報やリアルタイムの作業手順に関する情報が変更されました。そのため、さらなる緊急時対応策が導入されました」。

 「土曜日はいつでも、スタジオには50人のスタッフがいましたが、今では8人のボランティアが個別の部屋あるいは仕切のある作業エリアで、各自推奨されたガイドラインに従って働いています。そして制作チームの残りの人々が在宅で作業してそれをサポートしています。私たちは細心の注意を払って作業を継続しています」。

 キャスターのトッド・シュラップ(Todd Schrupp)氏はTVGの中で唯一スタジオに来るタレントである。ロボット制御機能で撮影は行われており、シュラップ氏以外は全員、自宅から中継している。

 レヴィン氏はこう語った。「目まぐるしく変わる状況へ俊敏に適応し、即座にやり方を変えるチームの才能を、大変誇りに思っています。3月27日(金)にTVGの映像が初めてNBCで放映される予定になっていました。トッドは1人でサンタアニタの野外のデスクにいたところ、放映30分前にサンタアニタ競馬場が競馬中止を発表しました。そのため私たちは急いで第2の手段に切り替えなければなりませんでした。それはリポーターのクリスティーナ・ブラッカー(Christina Blacker)が自宅中継で番組のオープニングに出演するというものでした」。

 「テレビ制作チームが信じられないような状況で何とか対処したことに敬意を表したいと思います」。

 「誰もがやる気に満ちていますが、疲れています。彼らは困難な状況で所定外の時間も働いています。私たちはうまくいかせるように全ての安全対策を取っています。チームは競馬に対してすごい情熱を持っています。そして、このぞっとするような状況に立ち向かって新規競馬ファンを獲得するということを原動力にしています」。

 競馬を継続させるために、誰もが難題を引き受け、協力し合い、実行する必要がある。現在のところ、競馬産業はこの状況を広い視野でとらえている。


By Evan Hammonds


[bloodhorse.com 2020年4月8日「What's Going On Here―Big Show」]