海外競馬情報 2020年03月23日 - No.3 - 3
2020年ブリーダーズカップ、安全対策を強化、賞金増額(アメリカ)【開催・運営】

 ラリー・ブラムラージ(Larry Bramlage)博士(ルード&リドル馬診療所の著名な獣医師)は、昨年のブリーダーズカップ開催でモンゴリアングルーム(Mongolian Groom)が予後不良となったことを鑑みて6つの提案を行った。2020年の同開催(キーンランド競馬場)ではこの6つの提案が採用される。

 ブリーダーズカップ協会(Breeders' Cup Ltd.: BCL)は3月3日、BCLの理事会が定例会議(2月25日)で承認した一連の変更を発表した。そして産業内でリーダーシップを発揮して、ブリーダーズカップにかぎらず様々な開催で、強化された安全対策の採用が進むように引き続き努めていくと明言した。

 BCLはまた、3レースの賞金を合計400万ドル(約4億2,000万円)引き上げる決定も発表した。これにより、ブリーダーズカップ開催(2日間)の賞金総額は3,500万ドル(約36億7,500万円)となる。

 ブラムラージ博士は報告書(1月15日発表)の中でブリーダーズカップ開催に向けて以下の6つの提案を行っている。

(1) 調査を要するほど深刻な症状が過去にあった馬を、競馬場に到着する前に特定しておく。到着後には、この"監視対象"の馬に特別な注意を払わなければならない。そして馬に関する最終決定に責任を負う指定獣医師および調査チームの獣医師は、これらの馬をあらゆる機会に観察するように留意しておかなければならない。

(2) 検査は2人体制とする(競馬場指定検査官&馬の調教拠点の競馬統括機関の指定検査官)。2人の検査官が各馬の検査に関する最終的な責任を担う。

(3) "コース上観察"の区間を110ヤード(約100m)以上とし、運動のためにコースに入ったブリーダーズカップ開催の全出走馬にこの区間を速歩させることを要求し、観察の質を向上させる。

(4) "要監視リスト"に入っている馬が円を描くようにジョグするのを指定獣医師が観察できるように、厩舎エリアのどこかにスペースを設ける(調馬索をつける。必要であれば両方向に回らせる)。

(5) 指定馬に対する競走前検査の一環として、レントゲン検査・核医学検査・超音波検査・MRI検査・PET検査のような画像診断を実施できるようにする。

(6) ブリーダーズカップ開催前に入手できる出走予定馬のビデオ映像を活用する。"要監視リスト"に入った馬の歩様を評価するために、その馬の既存のビデオ映像を見つけてよく観察する意識的な取組みがなされるべきである。競馬場あるいは賭事業者が馬の速歩・ジョグする様子をビデオで撮影しているのであれば、その馬の検査を担当する獣医師はそのビデオ映像を活用すべきである。

 BCLの声明にはこう記されている。「これらのプロセス改善は、今後のブリーダーズカップ開催での安全性と獣医師による評価手順の向上を目指したものです。この報告書は、BCLが競馬界における情報公開と説明責任を促進するにあたり模範を示す最初の取組みとなりました」。

 BCLは、サラブレッド安全連合(Thoroughbred Safety Coalition:TSC)が提唱している州・競馬場レベルでの"安全・公正性に関する19の改革の実施(2019年11月&12月に発表)"にも深く関与している。そのため、TSCのメンバーではない米国の競馬場はBCチャレンジ競走(優勝馬にBCへの優先出走資格が与えられる競走)を開催するために、"安全・公正性に関する19の改革"の全面的な採用への同意が義務付けられ、これらの改革の実施に向けて誠実に取り組んでいることを示さなければならない。

 BCLの会長兼CEOのドリュー・フレミング(Drew Fleming)氏はこう語った。「ブラムラージ博士の報告書では、安全対策の強化が強調されています。BCチャレンジ競走を施行する競馬場に安全・公正性に関する改革の採用を義務付けることにより、競馬運営全体において最高水準の安全・公正性を導入するためのBCLの長年の取組みは強化されます」。

賞金増額

 キーンランド競馬場(ケンタッキー州レキシントン近く)で実施される今年のブリーダーズカップ開催(11月6日・7日)では3レースの賞金が引き上げられる。さらに、賞金はこれまで8着までに支払われていたが、今後は10着にまで支払われるようになる。賞金が引き上げられたレースは下記のとおりである。これらの賞金増加により、BCターフは世界最高賞金の芝G1レースの1つとなり、BCダートマイルは世界最高賞金のダートマイル競走としての地位を固める。また、BCクラシックは引き続き、北米最高賞金レースおよび世界で3番目の高額賞金G1競走であり続ける。

 フレミング氏は、「これらの賞金増額は、BCLの使命を反映しています。その使命とは、ブリーダーズカップ開催を最高レベルで運営し、世界の数々の競馬祭典と競合させ続けることです。全レースで10着まで賞金を出すというBCLの決定は、毎年ブリーダーズカップ開催を支えるために忠実に馬を出走させてくれる馬主・調教師へ敬意を示すものです」と付言した。

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By Blood-Horse Staff

(1ドル=約105円)


[bloodhorse.com 2020年3月3日「Breeders' Cup Continues Safety Reforms, Hikes Purses」]