海外競馬情報 2020年12月22日 - No.12 - 6
新種牡馬が増える2021年に期待(アメリカ)【生産】

 新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄された2020年は、米国の労働者の大半を2つのグループに分けた。1つ目のグループは、失業者や"不可欠ではない職種"における不完全就業者という不幸な状況におかれた人々である。2つ目のグループは、"くたばれコロナ"と言わんばかりに以前よりも多忙になった人々である。サラブレッド産業の人々は幸いにも2つ目のグループに入っている可能性が高い。

 米国ジョッキークラブの"産駒報告"と"種付牝馬報告"によれば生産頭数は減少し続けているが、今年の感染拡大の初期に生産界はかなり多忙であったようだ。ここ数年よりも厳しい健康ガイドラインに従わなければならなかったが、種付場は使われ続けており、例年どおりのビジネスが営まれていた。ただし、セリでは2歳馬・1歳馬・当歳馬・繁殖牝馬の総売上額がすべて2019年を下回っていた。しかし驚くなかれ、2021年には今年よりも多くの新種牡馬が供用される。ケンタッキー州中部の新種牡馬は2020年には17頭だったが、2021年には22頭となる。他の地域についても同じことが言え、フロリダ州で6頭、インディアナ州で5頭、ニューヨーク州で4頭の新種牡馬が供用される。

 いったい何が起こっているのだろうか?

 ポープ・マクレーン(Pope McLean Jr.)氏は、「想定外ですが、このような状況になりました」と述べた。マクレーン家が経営するクレストウッドファーム(レキシントンの近く)はケンタッキー州中部の生産者に向けて、トラヴァースS(G1)2着馬カラカロ(Caracaro)とカナダの優秀なスプリンターであるヨークトン(Yorkton)を供用することを発表している。

 マクレーン氏はこう語った。「いつも努力が必要ですが、だいぶ前から我々の種牡馬を繁殖牝馬の相手に選んでくれる生産者たちがいます。生産者たちも支持してくれるような馬を供用するように努めていますが、それは簡単なことではありません。2頭は素晴らしい馬格をしています。馬格に関してはうるさくなければなりません。生産者が見に来たときに、その馬を気に入ってもらわなければならず、さもなければうまく行きません」。

 「さまざまなことが立て続けに起こっていますが、種牡馬に成功するチャンスを与えるのに十分な牝馬を集められると感じています」。

 どのようなレベルの種牡馬にとっても支援は必要だが、とりわけ頂点を極めていなかったり、あるいは商業的に次なる目玉と見られていない若い種牡馬にとっては肝要である。

 フロリダ州中部にあるオーファレル家(O'Farrell family)のオカラスタッドは、2021年に新たに3頭の種牡馬、シーキングザソウル・ウィンウィンウィン・ダクアタックを供用する。これら3頭は、常連の生産者・馬主が送り込む繁殖牝馬によって支援されるだろう。デヴィッド・オーファレル(David O'Farrell)氏によれば、チャールズ・フィプケ(Charles Fipke)氏は自身が生産・所有したシーキングザソウルを支援し、エアドリースタッド(ケンタッキー州)は共同所有するウィンウィンウィンとダクアタックを支援する。

 オーファレル氏はこう語った。「つらい年でしたが、頭を上げて前進しなければなりません。幸いにも、私たちは昨年よりも好調です。多くの顧客は動揺しておらず、昨年よりも数頭多くの繁殖牝馬を連れてくるかもしません。おそらく、彼らは今年のセリでチャンスを見いだしたのでしょう。セリでの売上げは減少しましたが、私たちは現在のところ馬の受入れや馴致でたいへん多忙です」。

 オーファレル氏は、フロリダ州の生産者たちの計画表はケンタッキー州とは少し異なるが、オカラスタッドには2021年シーズンに向けて馴致を受けて始動する馬が前の年よりも沢山いると述べた。

 そして「ここでは生産者にどの種牡馬と交配させるかを決めてもらうのに手間が掛かります。彼らは電話してきて、"種付権利を買いたい"と言ったかと思うと、"ところで、今日の午後にでもうちの繁殖牝馬を予約したいのだが"と言ってきます」と笑いながら語った。

 馴致や調教を行わないクレストウッドファームの状況は少し異なるが、彼らも将来に向けて自信があるようだ。

 マクレーン氏は同ファームの2020年のビジネスについてこう語った。「このような状況に直面しているのに、よく持ちこたえていると思います。会いたいと思っている多くの顧客が牧場に来られなかったことと、キーンランドの春開催が中止になったこと以外では、状況はあまり大きくは変わりませんでした。それがどのような影響を及ぼすかについては、知るよしもありません。セリでの売上げは明らかに減少しましたが、思っていたほどではありませんでした」。

 「数頭の牝馬を購買しましたが、思っていたよりも大変であり、それは仕方ないことでした。キーンランドのセリへの上場馬は800頭減りました。供給が減ったことが馬を販売するのに役立ったはずです。私たちは毎年、当歳馬を10頭ほど売却しますが、今年は3頭上場して2頭が売れました。当歳市場が弱気になることは予想していました」。

 ホースマンは今年誰もがそうであったように多忙だったが、それでも進むべき道は1つしかない。それは、全速力で前進することだ。

 マクレーン氏は、「全体として楽観的にならなければなりません。しかし、やみくもに楽観的になるわけにもいきません。ゆくゆくは良くなると思っています。新型コロナウイルスを過去のものとすれば、私たちは大丈夫でしょう」と付言した。

By Evan Hammonds

[bloodhorse.com 2020年12月8日「What's Going On Here―New Stallions, New Year」]