海外競馬情報 2020年11月20日 - No.11 - 2
北米最大規模のフロセミド研究に競馬主要団体が共同出資(アメリカ)【獣医・診療】

 業界主要団体・競馬場・競馬統括機関からなるグループは、フロセミドの効果と2歳競走馬における運動誘導性肺出血(EIPH)の罹患率・重症度に関する北米最大規模の研究へ共同出資することに同意した。

 この研究は、競走馬にとって利尿剤フロセミド(別名ラシックス、もしくはサリックス)の投与の効果が"有益"か"有害"もしくは"まったくない"かについての議論に取り組むことを目的としている。ストロナックグループ(TSG)、ブリーダーズカップ協会(BCL)、チャーチルダウンズ社(CDI)、キーンランド協会、ケンタッキー州競馬委員会(KHRC)、ケンタッキー州サラブレッド協会、ニューヨーク競馬協会(NYRA)が、この研究に資金を提供する。

 『フロセミド:2歳競走馬における運動誘導性肺出血(EIPH)の罹患率・重症度および運動時の正常な免疫反応へのフロセミドの効果』と題されたこの研究は10月に着手され、ワシントン州立大学獣医学部獣医臨床サービス学科のウォリック・ベイリー(Warwick Bayly)博士とマカレナ・サンズ(Macarena Sanz)博士が主導している。これは、2歳競走馬へのフロセミドの効果を評価することに重点的に取り組んだ、これまでで最大規模の研究である。

 北米競馬界は10年以上にわたり、主要な争点としてフロセミドの使用と対峙してきた。この研究はフロセミド使用の核心において答えのない以下の問題に対処する機会をもたらす。

1. レースもしくは調教の4時間前のフロセミド投与は2歳競走馬の運動誘導性肺出血(EIPH)の重症度を軽減するか?
2. レースの4時間前のフロセミド投与は馬の競走能力に影響を及ぼすか?

 この研究は、600頭以上の馬を次の3つのグループに分けて内視鏡検査により評価する。(1) レース48時間以上前にフロセミドを投与された馬・あるいは全く投与されていない馬、(2)レース24時間前にフロセミドを投与された馬・あるいは全く投与されていない馬、(3)レース4時間前にフロセミドを投与された馬。これらの馬は、主要な競馬開催州であるカリフォルニア州・デラウェア州・フロリダ州・ケンタッキー州・ルイジアナ州・メリーランド州・ペンシルベニア州・ニュージャージー州・ニューヨーク州を代表する3グループから提供される。各州の開業獣医師は、既存の顧客でこの研究に進んで参加してくれる調教師を起用するよう求められる。

 ベイリー博士はこう語った。「この研究は、フロセミドの使用に関する知識の欠けた部分を埋める機会をもたらします。その種で初めての徹底した研究として、完了すれば、追加的な情報を提供できるようになることを望んでいます。それにより競馬産業は、科学的な情報に基づいて米国におけるフロセミドの規制に取り組むことができるでしょう」。

 ストロナックグループの最高獣医責任者であるディオンヌ・ベンソン(Dionne Benson)博士はこう語った。「米国におけるフロセミド投与に関する現行のルールや規制は寄せ集めであり、それは馬と馬をケアする者に害を及ぼしています。この研究は競馬産業の利害関係者が団結して、緊急課題に取り組むために有意義な措置へ出資するチャンスとなります。それにより、ルールや規制の水準をより高く一貫性のあるものに進展させられるでしょう」。

 CDIの馬医療担当部長のウィル・ファーマー(Will Farmer)博士はこう語った。「ラシックス使用は長きにわたり盛んに議論されてきたテーマです。競走馬の安全と福祉の擁護者として、この研究は、ラシックスの使用と効果についてのいくつかの疑問に答えるための、現場の重要な情報を収集して分析するだけでなく、ラシックス使用に関して常識的な規制を導き出すためのチャンスと考えています」。

 この研究の暫定結果は、検体の量・質がベイリー博士とサンズ博士が設定した統計上の妥当性の要件に見合うものならば、来春に入手できると見込まれている。

 キーンランド協会の馬安全性担当部長であるスチュワート・ブラウン(Stuart Brown)博士はこう語った。「この研究は北米競馬関係者のかけがえのない協力関係を表わしています。レース後に実施される内視鏡検査を通じて、若馬における真のEIPH罹患率についての理解を深めることができるでしょう。さまざまな競馬管轄区におけるフロセミド使用の現状に基づいて洞察を得られれば、それは競走馬の安全・福祉のためになる決定を行うのに役立つでしょう」。

By Blood-Horse Staff

[bloodhorse.com 2020年10 月29 日「Tracks, Industry Groups to Jointly Fund Lasix Study」]