海外競馬情報 2016年05月20日 - No.5 - 3
ダービーに絶大な影響力をもつ種牡馬ガリレオ(イギリス)【生産】

 近年英ダービー(G1)に信じられないほどの影響力を与えている種牡馬は、わずか2頭である。ダービーの主なトライアルの結果や出走馬確定前の賭けのオッズを見ても、今年もその影響力は続きそうだ。

 2001年ダービー馬ガリレオ(Galileo)は種牡馬として、3頭のダービー馬を出している。2008年のニューアプローチ(New Approach)、2013年のルーラーオブザワールド(Ruler Of The World)、2014年のオーストラリア(Australia)である。オーストラリアの母ウィジャボード(Ouija Board)は傑出した競走馬であったが、その父ケープクロスは2頭のダービー馬を出している。2009年のシーザスターズ(Sea The Stars)と2015年のゴールデンホーン(Golden Horn)である。なお、シーザスターズはガリレオの半弟である。

 これらの種牡馬の産駒ではないダービー馬は、過去8年のうち3頭だけだ。キャメロット(Camelot)とプールモワ(Pour Moi)はモンジュー(Montjeu)産駒であり、ワークフォース(Workforce)は、キングズベスト(King's Best)産駒である。モンジュー(2012年に死亡)は4頭のダービー馬を出しており、この記録はトップタイである。キングズベストは名牝アーバンシー(Urban Sea ガリレオの母)の半弟なので、血統的にガリレオと似通う部分がある。

過去8年の英ダービー馬

2015年ゴールデンホーン

(父ケープクロス-母Fleche D'Or、母父ドバイディスティネーション)

2014年オーストラリア

(父ガリレオ-母ウィジャボード、母父ケープクロス)

2013年ルーラーオブザワールド

(父ガリレオ-母Love Me True、母父キングマンボ)

2012年キャメロット

(父モンジュー-母Tarfah、母父キングマンボ)

2011年プールモワ

(父モンジュー-母Gwynn、母父ダーシャーン)

2010年ワークフォース

(父キングズベスト-母Soviet Moon、母父サドラーズウェルズ)

2009年シーザスターズ

(父ケープクロス-母アーバンシー、母父ミスワキ)

2008 年ニューアプローチ

(父ガリレオ-母Park Express、母父アホヌーラ)


 英オークス(G1)についても同じことが言える。ガリレオは2015年優勝馬クオリファイ(Qualify)の母父、2013年優勝馬タレント(Talent)の父父、2012年優勝馬ウォズ(Was)の父であり、絶大な影響を与えている。また、2014年にシーザスターズ産駒のタグルーダ(Taghrooda)がこのレースを制したことで、ケープクロスとガリレオの影響が組み合わされれば並外れた才能をもたらすことを初めて証明した。

 シーザスターズと同じサイアーラインのムーンライトマジック(Moonlight Magic)は、4月にバリーサックスS(G3)でハーザンド(Harzand 父シーザスターズ)の5着に敗れた。しかし、5月8日にデリンズタウンスタッドダービートライアル(G3)で手堅い勝利を収めたことで、再びダービー有力馬として浮上している。

 ダーレーの自家生産馬である同馬の父はケープクロス、母はガリレオとシーザスターズの半姉メリカー(Melikah)である。メリカーは2000年に英オークスで3着、愛オークス(G1)で2着となっている。ムーンライトマジックのダービー挑戦に向けての明るい要素は、半兄が凱旋門賞(G1)3着馬のマスターストローク(Masterstroke)というだけではなく、メリカーの父が1995年ダービー馬のラムタラ(Lammtarra)であることだ。

 英ダービーの出走馬確定前の賭けにおける上位人気馬には、その他にも多くのガリレオ産駒が入っており、そのすべてはG1馬の近親である。英1000ギニー(G1)で圧倒的勝利を収めた牝馬マインディング(Minding)は、コロネーションS(G1)優勝牝馬リリーラングトリー(Lillie Langtry)の娘である。一方、ミッドターム(Midterm)は中距離で傑出した牝馬ミッデイ(Midday)の息子で、ダービー出走の切符を手に入れるべく5月12日のダンテS(G1)に出走する。また、チェスターヴァーズ(G3)優勝馬ユーエスアーミーレンジャー(US Army Ranger)は愛オークス優勝馬ムーンストーン(Moonstone)の息子であり、2着馬ポートダグラス(Port Douglas)は独ダービー(G1)優勝馬ヴィーナーヴァルツァー(Wiener Walzer)の半弟である。

 さらに、香港ヴァーズ(G1)優勝馬ハイランドリール(Highland Reel)の全弟アイダホ(Idaho)はバリーサックスSで2着、デリンズタウンスタッドダービートライアルで3着となった。

 ガリレオは種牡馬としてダービー馬3頭を出している。今年も強力な影響力をもち、優良馬となるべく生産された産駒が育ちつつある。同馬がモンジューの最高記録である4頭に追いつき、それを超える可能性は高い。

 ガリレオ産駒のテオフィロ(Teofilo)は種牡馬として、出走馬確定前の賭けでの上位人気馬リストに2000ギニー2着馬マッサート(Massaat)を出している。マッサートにダービー制覇の可能性があると思われているのには根拠がある。同馬の母マダニー(Madany)はその父アクラメーション(Acclamation)のスピード力を受け継ぎ6ハロン(1200m)のレースを制しており、また一流スプリンターのドルドアップ(Dolled Up)とジーティング(Zeiting)の半妹である。一方で、テオフィロと交配した半姉ジーティングは1マイル2ハロン(2000m)のリステッド勝馬スコティッシュ(Scottish)を生んでいる。ガリレオの半弟シーザスターズは、ハーザンド(Harzand)のほかに、もう1頭のダービー有力馬を出している。それは5月8日のサンクルー競馬場のグレフュール賞(G2)で宿敵ロビンオブナヴァン(Robin Of Navan)を打ち負かしたクロスオブスターズ(Cloth Of Stars)である。

 クロスオブスターズはピーター・アナスタシオウ(Peter Anastasiou)氏の生産で、バロダ&コルビンズタウンスタッド(Baroda and Colbinstown Studs)により1歳セールに上場され、40万ギニー(約6,510万円)でゴドルフィンに購買された。同馬の母はオークス馬ライトシフト(Light Shift)の全妹で未出走馬のストロベリーフレッジ(Strawberry Fledge)である。

 英ダービーの出走馬確定前の賭けで25-1(26倍)以下のオッズがついている上位人気馬12頭を見たところ、ガリレオやその兄弟・産駒を父とせず、また母馬がガリレオの近親ではない馬はファウンデーション(Foundation)のみである。つまり11頭にはアーバンシーの血が入っているということだ。大した牝馬である。


joho_2016_05_01.jpg

By Martin Stevens

(1ポンド=約155円)

[Racing Post 2016年5月10日「A Classic case of family benefit in the Derby」]