海外競馬情報 2011年09月22日 - No.18 - 2
メディア権料収入増加で最低賞金額の水準が上がる可能性(イギリス)【開催・運営】

 ホースメングループ(Horsemen’s Group)が、賦課金収入は減少しているものの、メディア権料は急激に増加していると主張していることから、2012年の最低賞金額の水準は引き上げられるかもしれない。

 ホースメングループは7月28日、各競馬場の資金提供を幅広い観点から見ると他のプロジェクトから賞金に、より多くの額を絞り出せると確信し、最低賞金額の指針となる水準を引き上げるつもりだと述べた。

 競馬場は、(1) すべてのレースの賞金が最低賞金額を満たしている第1グループの競馬場、(2) 最低賞金額を満たすためにあらゆる努力を行っている第2グループの競馬場、(3) 最低賞金額を満たさないことがしばしばある第3グループの競馬場、の3つにグループ化される。

 ホースメングループのポール・ディクソン(Paul Dixon)会長は、BHAの最低賞金保障システムが廃止されたことを受けて導入されて以来最低賞金額表は大成功であり、大規模な財政破綻を回避したと主張した。

 今や90%近くの平地競走の賞金が最低賞金額に一致しているか上回っているが、最低賞金額表を導入する以前はその数字は40%に留まっていた、とディクソン会長は付け足した。

 またホースメングループのCEOアラン・モルコム(Alan Morcombe)氏は、詳細は述べなかったが競馬場は2012年により多くの収入を得るだろうと主張した。

 同氏は、「今事業年度において賞金に充てるための資金は約1億3,900万ポンド(約194億6,000万円)に上り、また来年は1億5,200万ポンド(約212億8,000万円)となります。賦課金収入が減少していても、私たちには急激に増加しているメディア権料をはじめとする他の収入源があります」と語った。

 そして次のように続けた。「私の役目は、来年増えるように見えるこの全体のパイから適切な額が確実に賞金に充てられるよう保証することです。最低賞金額が下がるとは考えられず、上昇する場合もあると考えるのも極めて妥当でしょう。しかし私たちは最低賞金額を設定する前に、賞金額の規模と賞金額の各レースに対する分配方法を把握する必要があります」。

「新たに考え出された競馬場のグループ分けによって、引き上げられた最低賞金額に合わせるようにする圧力が他の競馬場からもたらされる結果となるかもしれません」ともモルコム氏は語った。
そして次のように付言した。「第1グループの競馬場については、現在でも相当な賞金額を受け取っているので、最低賞金額表の適用について楽観していられます」。

「私たちは、賞金額の適切なバランスに基づく最低賞金額をときに満たさないことがある第2グループの競馬場までは受け入れられるかもしれませんが、第3グループの競馬場に対しては限られた協力しか行わないでしょう」。

 ウェザビーズ社(Weatherbys)は、2012年の現役馬頭数は2011年の1万340頭から9,069頭に減少すると予測している。ホースメングループはこのことから、調教師にとって2,000万ポンド(約28億円)の収入減がもたらされるだろうと示唆した。

 その上、免許を付与された調教師の数は、この2年間で50人減少している。

 継続する賞金額減少の懸念は、マーク・ジョンストン(Mark Johnston)調教師とジョン・ゴスデン(John Gosden)調教師がいずれも管理頭数を減らしていると述べ、ライアン・ムーア(Ryan Moore)騎手が検量室での主な話題は賞金額の少なさであると語ったことからも明らかである。

 ムーア騎手は、「騎手の未来に大きな期待は描けません。もし年間で50勝しか挙げられないとすれば、私は英国には留まることはないでしょう」と語った。

 ゴスデン調教師は、「私の最も重要な顧客であるアメリカの馬主とサウジアラビアの馬主は、フランスに多くの馬を移籍させています」と語った。

 そして次のように付言した。「彼らは満足できない賞金額の英国で馬を走らせることにうんざりしています。競馬界のトップにはリーダーシップが欠如しており、私たちは自らの手で対処したいと考えています」。 

By Jon Lees
(1ポンド=約140円)

[Racing Post 2011年7月29日「Tariff levels could rise next year as Horsemen’s Group eyes media rights income」]