海外競馬情報 2010年12月03日 - No.23 - 1
トート社、売上げ減少にもかかわらず競馬への資金提供を増額(イギリス)【開催・運営】

 トート社(Tote)の英国競馬への資金提供は、経済不況と10年にわたる場内馬券売上げ減少にもかかわらず、直近の2009年度において10%近く上昇し1,087万4,000ポンド(約15億2,236万円)となった。

 パリミューチュエル賭事の売上げは、場内馬券売上げが2008年度対比6.1%減の9,560万ポンド(約133億8,400万円)となり、初めてインターネット賭事と国際賭事を合わせた売上げを下回った。

 しかしトート社のCEOであるトレヴァー・ボーモント(Trevor Beaumont)氏は、トート社全体にとっての競馬部門の重要性を強調した。

 ボーモント氏は2010年の年間報告において、「競馬はトート社の最優先事項です。競馬を提供することがトート社の存在理由であり、それはあらゆる面であてはまります」と述べた。

 2009年度の目玉は、レース映像と賭事を結びつけるために、60競馬場すべてと連携協定を締結したことと、アットザレーシズ社(At The Races)とレーシングUK社(Racing UK)の海外での共同事業体であるGBIレーシング(GBI Racing)と緊密なつながりを持ったことである、と同氏は述べた。

 そして次のように付け足した。「連携協定は、不確かな時期に何らかの確実性を与え、手腕が問われるその後3年間における競馬場への収入を維持するよう設計されています」。

 「連携協定はまた、トート社のベッティングショップ事業を活性化するための競馬場とトート社との連携をもたらします。そしてトート社の賭事総利益に基づく年度末の追加資金提供を可能にする収益力をもたらします」。

 すでに報道されたとおり、トート社は6月に60競馬場に追加的に100万ポンド(約1億4,000万円)の特別分配金を与えた。この原資は主として海外 賭事事業の賭事利益からもたらされたもので、国内資金プールを7,280万ポンド(約101億9,200万円)増加させた。これは前年よりも1,120万 ポンド(約15億6,800万円)多い。スポンサーシップ拠出は470万ポンド(約6億5,800万円)の記録に達した。

 トート社において以前大当たり馬券として目玉であったスクープ6馬券やスーパー7馬券などのエキゾチック馬券の大口購入が減ったことが、馬券売上げ減少 の原因となった。そしてこれがベッティングショップに賭事を提供しているトート・ダイレクト社(Tote Direct)にも影響を与え、トート・ダイレクト社は、1993年2月の設立以来2番目に大きい年間売上げ低下を被った。

 報告は次のように記している。「ベッティングショップでの売上げの下落、多くの競馬開催日の削減、何通りもの馬券の大口購入の減少が賭事産業全体に一般 的に広がっていることを考えれば、2010年度のトート・ダイレクト社の業績は堅調だったと考えられ、2011年度に向けて楽観的になる理由がある」。

 トートグループ全体の収入、総売上げ、粗利益において数パーセント減少したにも拘わらず、ボーモント氏は、「同じ時期の他のブックメーカーと比較して業績を見れば、楽観的になれます」と述べた。

 同氏は次のように付言した。「財政面では1年の大半を確固たる将来の準備のためにささげました。また賭事事業は何とか景気の谷を切り抜けています」。

 「卓越した成果によって、これまで投資を減らさずに済みました。その結果トート社は、多くの競争相手が大きな苦難に見舞われている中で、2010年度にその投資から利益を得るでしょう」。

 ボーモント氏は、収入を増加させた重要な要素として、ベッティングショップにおけるスクリーン表示、ベッティングショップにおけるセキュリティーを備え たIT技術、インターネットにおける改良されたウェブサイト、そしてパリミューチュエル賭事におけるフレキシ馬券の導入を強調した。2009年度に生じた 例外的な項目を除く運営費は7.4%減少して1億2,360万ポンド(約173億400万円)となった。また例外的な項目を差し引く前の事業利益は、 33.2%増の2,520万ポンド(約35億2,800万円)となった。

 税引前利益は1,330万ポンド(約18億6,200万円)で、前年よりも720万ポンド(約10億800万円)増加した。

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By Howard Wright
(1ポンド=約140円)

[Racing Post 2010年10月14日「Pools drop but racing’s share rises to £10.87m」]