海外競馬情報 2010年09月24日 - No.18 - 3
タタソールズ社、初めてのステロイド検査を実施予定(イギリス)【生産】

 タタソールズ社(Tattersalls)は2010年秋のセールから、1歳馬を対象としたステロイド検査を初めて導入する。

 タタソールズ社は1歳馬の売り手全員と連絡を取り、上場馬がコルチコステロイド(corticosteroids)の検査対象となることについての確認をとった。コルチコステロイドは馬体内に最長42日間残留し、関節の炎症を抑え治癒を早めるために用いられる。

 英国のある一流獣医師は8月6日、売り値に影響しないようにするために馬の軽微な傷をコルチコステロイドで治療することは“知られていないわけではない”と述べた。

 この獣医師は次のように語った。「これは大きな変更であり、大きな効果をもたらす可能性があります。検査を実施するまでは効果がどれほどのものか知り得ませんが、もしこのルール変更が行われなければ購買額の半分の価値しかなかった馬もいるでしょう」。

 「1歳馬があらゆる種類の軽微な打撲や衝撃を受けるのは不可避であり、この些細な出来事が長期にわたる成績にどのように影響するかについては議論の余地があります」。

 「10万ギニー(約1,300万円)で売れると期待する馬がセールの数週間前に球節にちょっとした衝撃を受けたような場合でも、ルールの範囲内で行動し ている限りは売り手が非難されることはありません。このケースの場合にはステロイド検査が実施されれば期待していた価格の半分になってしまうでしょう が」。

 購買後の薬物検査は、購買者に240ポンド(約3万3,600円)と付加価値税(VAT)を負担させるが、陽性反応があった場合には当該馬を返却する権利が認められる。タタソールズ社は、すでに非ステロイド系抗炎症薬物の検査を実施している。

 タタソールズ社のマーケティング部長であるジミー・ジョージ(Jimmy George)氏は8月6日、「我が社の獣医師との協議を経て、コルチコステロイドを禁止薬物のリストに加えました。彼らは、コルチコステロイドは私たち がすでに検査している非ステロイド系抗炎症薬物と同様の目的で使用される可能性があると助言しました」と語った。

 ある有名なタタソールズ社のコンサイナーは、コルチコステロイドの使用は跛行、骨片、骨軟骨症(関節の損傷)を治療するための乱用につながる可能性があったと語った。

 

コルチコステロイド (corticosteroids)とは何か?

コルチコステロイドは、副腎皮質内で自然にあるいは合成的に作られるホルモンである。腫れと炎症を治療するために用いられ、塗り薬/軟膏、筋肉内あるいは静脈内注射で使用される。通常、関節注射により1歳馬に投与される。

2つの最もよく使用されている薬物は、残留期間がずっと短いトリアンジノロン(triamsinolon 英国ではアドコーティルとして商品化されている)とメチルプレドニゾロン(methylprednisolone 英国ではディポメドロンとして知られている)である。後者は、2001年のフランス2000ギニーにおいてノヴェール(Noverre)が陽性反応を示 し、失格となった薬物である。


By Richard Griffiths

買い手も売り手もタタソール社の薬物検査の新方針に賛成

 買い手と売り手は8月7日、同日付のレーシングポスト紙で明らかになった、タタソールズ社が2010年の1歳馬セールにおいてコルチコステロイド使用の検査を行うとの決定をおおよそ支持した。

 チェヴァリーパーク牧場(Cheveley Park Stud)のCEOクリス・リチャードソン(Chris Richardson)氏は、コルチコステロイドの検査は購買しようとしている1歳馬に対する買い手の信頼を高めるというタタソールズ社の考え方を支持した。

 同氏は次のように語った。「自動車を購入する場合、その車が全く何の問題もなく運転できる状態にあることを望むと思います。したがって1歳馬を買う場合にも良質であることを期待するでしょう」。

 「この決定は有益であると確信しています。これはタタソールズ社が選択した方法であり、このことは商品としての馬の質を向上させるでしょう」。

 馬を上場する前に長期の疾病を隠すために薬物を使って売り手が得る潜在的な利益に関して、このような行為は逆効果を招くものであるとリチャードソン氏は感じている。

 「そのような場合売り手の評判がかかっているのです。評判を築くためには長年を要しますが、壊すには2分しかかかりません。そうなるかもしれない立場に自らを置くことはばかげています」。

 同氏は次のように付言した。「私たちは購買する馬に横断的な検査を試みています」。

 サラブレッド売買仲介者であるマイケル・グッドボディ(Michael Goodbody)氏は、リチャードソン氏と意見が一致している。同氏は、「これは良いアイデアだと思います。誰もが自身の1歳馬を販売したいと思ってい ますが、一か八かでコルチコステロイドを使用しようとする人々はほとんどいないと思います」と語った。

 「できる限り厳密に実施される検査は、高価な1歳馬を対象にする場合は特に、正しい考え方に基づくものでなければなりません」。

 一流コンサイナーであるトリクルダウン牧場(Trickledown Stud)のポール・ソーマン(Paul Thorman)氏は、誠実さと開示性が買い手の信頼を得るための最重要事項であると確信している。

 同氏は次のように述べた。「私たちはしばしばセールの前に“この馬に何か投与しましたか?”と聞かれます。トリクルダウン牧場は尋ねられれば常に治療について公表しましたし、何かを隠すために治療を施すことはありません」。

 「隠そうとしている問題を意識しながら馬を販売した場合、私は町から追い出されるでしょう。私たちはリピーターを非常に頼りにしています。不正に治療した馬を販売することは、私たちの利益からかけ離れています」。

 

By George Kimberley
(1ポンド=約140円)


[Racing Post 2010年8月7日「Tattersalls to test for steroids for first time」]
[Racing Post 2010年8月8日「Buyers and vendors in broad agreement over Tattersalls’ new testing policy」]