海外競馬情報 2010年09月24日 - No.18 - 2
競馬界は連帯してスポンサーの心を掴む必要(アメリカ)【開催・運営】

 全米のパリミューチュエル賭事の売上げが3年間連続で減少しているこ とから、競馬界は賞金額を増加させる手段を模索している。競馬界の誰もが賭事とは別の形態から収益を得る効果を認識しているが、資金調達のもう1つの手段 であるスポンサーシップはこの10年間で減少している。資金提供があふれているスポーツ界において、企業スポンサーは、自身の資金をサラブレッド競馬に拠 出することにあまり興味を示していない。競馬界はこの障害を乗り越えなければならず、そうすることによって競馬により多くの収入をもたらすことが出来る。

 ストリート&スミス社(Street & Smith)発行のスポーツビジネスジャーナル(SportsBusiness Journal)によれば、トップ25のスポンサーは2009年にその資金提供と広告に28億ドル(約2,800億円)を拠出した。しかしサラブレッド競 馬は、その25社から非常に少ない額、おそらく合計で200万ドル(約2億円)しか受け取っておらず、そのうちケンタッキーダービーへのスポンサーシップ の額が相当な割合を占めている。ケンタッキーダービーのスポンサーのヤム!ブランズ社(Yum!Brands)は別として、2009年にトップ25入りし た他の広告主の中では、トヨタがブルーグラスS(G1)のスポンサーになり、ユナイテッド・パーセル・サービス社(United Parcel Service Inc.: UPS)がブリーダーズカップ社(Breeders’ Cup Ltd.)とチャーチルダウンズ社(Churchill Downs Inc.)とスポンサー契約を交わし、ミラークアーズ社(MillerCoors)がアーリントンパーク競馬場で音楽イベントのスポンサーとなり、クライ スラー社(Chrysler Group)がブリーダーズカップ社とスポンサー契約を交わした。それですべてである。

 ゼネラルモーターズ社(General Motors)は2009年に、スポーツイベントのスポンサーとマーケティングに3億8,840万ドル(約388億4,000万円)の資金提供を行い、最 高額を拠出した企業であった。シボレー、キャデラックおよびGMCトラックなどの多様なモデルを通して、この自動車メーカーは、野球、フットボール、バス ケットボール、ホッケー、サッカー、カーレースのプロチーム、ゴルフイベント、自転車競技、フェンシングおよびフィッシングに資金提供を行ったが、競馬は 支援しなかった。

 2番目に高額の資金援助を行った企業は、アンハイザー・ブッシュ・インベブ 社(Anheuser-Busch InBev)であり、考えうるすべてのスポーツに3億920万ドル(約309億2,000万円)をつぎ込んだ。同社がスポンサーとなったスポーツには、野 球、バスケットボール、フットボール、サッカー、ゴルフ、ホッケー、カートレース、ラクロスそしてブルライディング(雄牛乗り)が含まれる。しかし同社 は、かつて多額のスポンサー料を注ぎ込んだブリーダーズカップや、アーリントンミリオンS(G1)、ワシントンD.C.インターナショナルS(G1)のよ うな一流競走のスポンサーとはなっていない。

 トップ25のスポーツへの高額拠出スポンサーのリストには、次の企業が含まれている。AT&T[2億2,670万ドル(約226億7,000万 円)]、コカコーラ[7,990万ドル(約79億9,000万円)]、フォード[1億9,730万ドル(約197億3,000万円)]、マスターカード [4,660万ドル(約46億6,000万円)]、マクドナルド[1億5,540万ドル(約155億4,000万円)]、ミラークアーズ[2億7,200 万ドル(約272億円)]、ペプシコ[9,210万ドル(約92億1,000万円)]、プロクター&ギャンブル[9,540万ドル(約95億4,000万 円)]、サウスウエスト航空[1億2,650万ドル(約126億5,000万円)]、スプリント[2億5,00万ドル(約205億円)]、ステートファー ム[1億1,710万ドル(約117億1,000万円)]、サブウェイ[9,860万ドル(約98億6,000万円)]、トヨタ[2億4,550万ドル (約245億5,000万円)]、ヴェリゾン[2億2,820万ドル(約228億2,000万円)]、VISA[6,390万ドル(約63億9,000万 円)]、ヤム!ブランズ[2億1,000万ドル(約210億円)]である。

 各社はかなりの額を支出しているが、競馬が国民的関心を得ていないことは、米国の最も重要な企業スポンサーの心の中に競馬がないことによって物語られて いる。競馬を観戦する年間数百万人に上る人々はクレジットカードを使い、車を運転し、ビールやソーダを飲み、ファーストフードのレストランで食事をし、旅 行し、携帯電話を使う。にもかかわらずトップ25のスポンサーは、競馬のファン層に深い関心を持っていないように思われる。

 これらの企業が競馬を遠ざける理由には、競馬が賭事であるという要素があるが、それはMGMミラージュ社(MGM Mirage)、ハラーズエンターテインメント社(Harrah’s Entertainment)およびウィンリゾーツ社(Wynn Resorts)のような大手の賭事運営業者にとっては理由とならないだろう。それに、レジャー、アルコール、旅行および投資に関連する企業の広告が競馬 ファンの前で展開されることはごく自然なことのように思われる。

 競馬界は、ブリーダーズカップ社やNTRA(全米サラブレッド競馬協会)と提携しているようなわずかなスポンサーしか有していない。NTRAはそのアド バンテージプログラム(Advantage Program)を通じ、ジョンディア社(John Deere)、UPS社、シャーウィンウィリアムズ社(Sherwin Williams)、オフィスデポ社(Office Depot)を含むスポンサーを有している。ブリーダーズカップ社は、センティエントジェット社(Sentient Jet)、グレイグース社(Grey Goose)、エミレーツ航空(Emirates Airline)、TVG社(Television Games Network)をスポンサーとして有しているが、それにもかかわらずその中のどの企業も一般には競馬の主流スポンサーとは考えられていない。

 チャーチルダウンズ競馬場のようないくつかの競馬場はスポンサーを惹きつけることができている。だがチャーチルダウンズ競馬場は、米国の主要レースであ るケンタッキーダービーを開催していることで他の競馬場よりも有利な立場にあり、このことが、ダービーやオークスの開催日にスポンサーを獲得することに役 立っている。キーンランド競馬場も、そのステークス競走で多くのスポンサーを惹きつけることのできる競馬場の1つである。

 スポンサーを惹きつけるためには、NTRAやブリーダーズカップ社を通じ、米国中で連帯した取り組みが必要とされる。そのことにより一括して全米のあら ゆる競馬場にスポンサーがもたらされるだろう。一方スポンサーとしては、すべての競馬場に看板を出すことができ、場内放映やサイマルキャスト放映における 広告、ステークス競走のスポンサー、毎日のプログラムへの広告およびイベントのスポンサーシップを得ることができるだろう。

 スポンサーを取り込む利点はまた、それらの企業が競馬界に代わって競馬を唱道し、資金と専門知識を利用し競馬の売込みを支援してくれることである。

 競馬は確実にその大きな支援を利用できるだろう。

 

By Mark Simon
(1ドル=約100円)


[Thoroughbred Times 2010年7月31日「Missing the gravy train」]