海外競馬情報 2010年08月27日 - No.16 - 4
賦課金収入減少を受けて競馬開催日数も削減(イギリス)【開催・運営】

 BHA(英国競馬統轄機構)は、競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)が賭事産業の粗利益から受け取る収入が急激に減少したことに対応するために、2011年競馬開催日程から約250日を削減する構えである。

 BHAの競馬担当理事ルース・クイン(Ruth Quinn)女史は、今後の暗い展望が確実であるとしつつ、「2011年に私たちが賦課公社から受け取るであろう収入と支出レベルを考慮すると、2010 年のような1,503日にも及ぶ開催日数は正当化できません」と語った。

 その結果2011年BHA競馬開催日程は、現在行っている検討により全体で約250日が削減され、この5年間実施されていた入札プロセスも廃止されるだろう。

 唯一削減の対象とならないBHA競馬開催日程は、新設されたフォスラス競馬場のために割り当てられた16日間である。

 2011年の競馬開催日数が約1,240日とされれば、2002年以来最も少ない日数である。また過去15年において前年よりも開催日数が減少するのは2回目である。

 賦課公社が2010年8月2日〜12月31日の賞金への拠出額を210万ポンド(約2億9,400万円)削減すると発表した6月末、2010年1月〜12月の収入は7,260万ポンド(約101億6,400万円)となると予測されていた。

 クイン女史は6月30日、賦課公社の役員は2011年の賦課金収入を6,890万ポンド(約96億4,600万円)と見込んでいることを明らかにした。

 同女史は、「そして賞金額は、2010年は5,210万ポンド(約72億9,400万円)でしたが、2011年は諸経費、公正確保および規制のための費 用そして250万ポンド(約3億5,000万円)の開催奨励計画費を差し引いて、3,700万ポンド(約51億8,000万円)になると思われます」と 語った。

 「その金額を1,500日の開催日程のまま薄く配分することは受け入れがたいことです。もしそうすれば、競馬に壊滅的な影響が出るでしょう」。

 「したがって、2週間後に行われる賦課公社の会合までに何の変更もなければ、この開催日数は実行に移され、現在行っている割当て検討手続きにおいては入札は行われないでしょう」。

 また、それぞれの言い分の隔たりを少なくするために、BHA、賦課公社、競馬場協会(Racecourse Association)、ホースメングループ(Horsemen’s Group)および個々の競馬場はより多くの取組みをしなければならないだろうと、次のようにクイン女史は述べた。

 「開催日程の大半は賭事客にとって不都合なものとなっており、それらを排除することで、例えば1月に障害競走を行わない5日連続開催というような日程になるでしょう」。

 「私たちは開催日程における枠組みを保持する必要があります。そして特定の非開催日を除き、毎日どこかで競馬を開催する日程とすることも検討するでしょう」。

 「依然として答えを出さなければならない問題がたくさんありますが、それらは私たちが賦課公社の資金をどれだけ使用出来るか分からなければ対処できません」。

 こうした状況によって、2011年開催日程の手続きは必然的に遅れた。通常であれば、7月の3週目に発表されるはずの開催日程は8月末まで発表されず、しかも重要日程しか発表されないかもしれない。

 BHAは、2010年8月2日から年末までの賞金削減がすべてのレースで実施されるということについて、RCA、ホースメングループおよび賦課公社の役 員と合意した。個々の競馬場の賞金に支出される基本給付額(basic daily rate: BDR)と追加レースの資金は9%減少し、最低賞金額は平均で7%減少するだろう。

 パターン競走とリステッド競走は、BHAの強化資金投入を受け、一律に少額の削減がなされる。一方レースごとの最も少ない賞金総額は、平地競走のクラス 6のレースでは2,250ポンド(約32万円)、またバンパーレース(bumpers 訳注:ナショナルハント競馬のルールの下で施行される、障害競走馬になる予定の未出走馬による平地競走)とハンターチェイスの障害競走においては 1,150ポンド(約16万円)となる。

 

英国の競馬開催日数
平 地 障 害 合 計 薄暮開催 日曜開催
1986 474日 515日 989日 92日
1987 488日 524日 1,012日 123日
1988 492日 525日 1,017日 127日
1989 502日 535日 1,037日 131日
1990 577日 562日 1,139日 125日
1991 577日 565日 1,142日 136日
1992 583日 554日 1,137日 140日
1993 596日 554日 1,150日 138日
1994 623日 530日 1,153日 170日
1995 643日 533日 1,176日 219日 24日
1996 641日 533日 1,174日 191日 30日
1997 645日 532日 1,177日 176日 36日
1998 666日 525日 1,191日 179日 36日
1999 675日 528日 1,203日 181日 36日
2000 682日 527日 1,209日 162日 62日
2001 688日 525日 1,213日 162日 61日
2002 695日 527日 1,222日 163日 60日
2003 726日 544日 1,270日 175日 70日
2004 804日 537日 1,341日 223日 132日
2005 814日 535日 1,349日 221日 129日
2006 845日 546日 1,391日 229日 139日
2007 871日 544日 1,415日 287日 144日
2008 948日 556日 1,504日 372日 148日
2009 919日 571日 1,490日 357日 151日
2010 913日 590日 1,503日 369日 153日
2011 約1,240日

 クイン女史は次のように付言した。「より洗練されたことを年内に行うには遅すぎます。トップレベルの競走には保護策がありますが、収入減を踏まえた対応策は簡潔なものでなければなりません。しかし、2011年に向けてはより詳細に見直しを検討するでしょう」。

 

By Howard Wright
(1ポンド=約140円)


[Racing Post 2010年7月1日「Axe falls on fixtures」]