海外競馬情報 2008年04月18日 - No.8 - 2
筋肉増強剤規制の模範ルールに対する不協和音(アメリカ)【獣医・診療】

 競走馬への筋肉増強剤投与を規制すべきであることに関しては幅広い合意が得られているものの、模範ルールの内容と実施時期については、競馬界の意見が分かれている。

 この問題に関する数ヵ月間の検討のあとに、2つの主要な馬主・調教師グループの代表者たちは、筋肉増強剤規制の模範ルールの導入は時期尚早であると主張した。彼らはまた、欠陥のある模範ルールでは、競馬関係者に不当処罰といった形で問題を生じる恐れがあると述べた。

 模範ルールは、北中米競馬委員会協会(Association of Racing Commissioners International: RCI)と薬物規制標準化委員会(Racing Medication and Testing Consortium: RMTC)によって立案された。

 しかし、全米馬主調教師福祉保護協会(National Horsemen's Benevolent and Protective Association: NHBPA)の議長であり、RMTCの代表であるケント・スターリング(Kent Stirling)氏は、作業は計画通りには進んでいないとし、「模範ルールには問題が残っており、ルールを実施するにはまだ体勢が整っていません」と述べた。

 NHBPAは“筋肉増強剤規制に対する見解”を出し、その中でこの問題に触れ、RMTCの模範ルールの目的は筋肉増強剤の規制であり、禁止することではないと述べている。NHBPAはまた、適切な数(20以上)の競走馬を用いた研究により血液検査の閾値レベルを定めることを提案している。

 さらにこの見解では、規制されている4つの筋肉増強剤、ボルデノン(boldenone [Equipoise])、ナンドロロン(nandrolone [Durabolin])、スタノゾロール(stanozolol [Winstrol])およびテストステロン(testosterone)は、RCIの薬物分類では同じ区分であるべきだと指摘している。また、模範ルールの中には、閾値レベルと投与中止期間の関連づけがないが、NHBPAは関連づけが必要であると考えている。

 筋肉増強剤の規制は、ニューオリンズで開催されたNHBPAの冬季会議で中心の議題となった。

 ルイジアナ州競馬委員会(Louisiana Racing Commission)の化学者であるスティーヴン・バーカー(Steven Barker)博士は、筋肉増強剤の模範ルールと規制に対して厳しい見方をしている。バーカー博士は、「模範ルールには当惑しています。これをまとめたグループは、つまみ出してやっつけてやるべきです。模範ルールにはおびただしい数の誤解と伝説が混じっています」と述べた。

 模範ルールを、その一部を変更したものを含め、採用した州は、競走の最長120日前に筋肉増強剤の投与を中止するよう競馬関係者たちに警告した。RMTCの勧告する投与中止期間は15〜30日間である。

 バーカー博士は、「このような長い投与中止期間には、何の根拠もありません。RMTCは筋肉増強剤の中止期間を短く設定すると思っていました」と述べた。

 競馬界の代表的人物の中にはこのコメントに激怒する者がいた。スターリング氏のNHBPA議長からの解任を要求する者やバーカー博士のコメントに関してRMTCの委員会メンバーに抗議のEメールを送る者がいたようだ。

 ジョッキークラブ(the Jockey Club)の専務理事でRMTCの議長であるダン・フィック(Dan Fick)氏は、バーカー博士のコメントに驚いたと述べた。

 フィック氏は、「私が言えることは、委員会のRMTCの代表者たちがバーカー博士のコメントに対して反駁する機会が与えられることを願うのみです」と述べた。

 スターリング氏は、州ごとにではなく全国的な筋肉増強剤規制の必要性を繰り返した。

By Tom LaMarra

[The Blood-Horse 2008年2月2日「Model Rule on Steroids Questioned; Further Dialogue Sought」]