海外競馬情報 2008年02月08日 - No.3 - 3
馬主の賠償責任が保険でカバーされる(イギリス)【その他】

 2008年1月1日から、馬主協会(Racehorse Owners’ Association: ROA)の会員は、損害賠償責任保険に自動加入することになる。これが実施されることになった契機は、2005年4月に馬の輸送を担当していた主任厩務員 のクリス・キネーン(Chris Kinane)氏が馬(馬名:Saameq)に頭を蹴られ重傷を負った事件である。同事件で、主要馬主であるデーヴィッド・アーバイン(David Irvine)氏は、損害賠償により破滅するおそれがあり、ROAは対応措置を講じた。

 キネーン氏の家族は弁護士に依頼し、訴訟を起こし、当該馬の関係者の過失責任を追及している。賠償金請求は、最大500万ポンド(約12億円)に達する可能性がある。

 アーバイン氏は保険でカバーされておらず、来月の結審で、もし損害賠償責任を認める判決が下されると、その後の裁判費用もかさみ、同氏には財務的にひどい打撃となる。

 ROAの最高経営責任者のマイケル・ハリス(Michael Harris)氏の11月23日の話によると、新しい保険の仕組みはニューマーケットを本拠とする保険代理店リセッツ・ハミルトン社(Lycetts Hamilton)とQBE(ヨーロッパ)保険会社(QBE Insurance (Europe) Ltd)が追加保険料無しで組んだものであり、ある馬主の馬が原因で引き起こされた第三者の損害に対して保険金で損害補償することになる。

 ハリス氏は、次のように付言した。「クリス・キネーン氏の悲惨な事故によって、保険でカバーされない場合やカバーが不十分な場合の、膨大な損害賠償のリスクに対して、多くの馬主が懸念しています」。

 「同様に、悪評高い“マーヴァヘディ対ヘンレー事件(Mirvahedy vs. Henley)”で、馬主たちは彼らの馬により損害や怪我が生じた際、動物法のもとでは馬主たちは、従来考えていたよりもリスクが大きくなったことを目の当たりにしました」。

 損害賠償額は、1つの訴訟だけで1,000万ポンド(約24億円)にまでのぼる可能性があり、調教中の競走馬、育成段階の競走馬、休養中の競走馬に適用される。

 ハリス氏は、次のように語った。「調教師たちには、損害賠償保険に加入する義務があります。しかし、馬主は所有馬が調教馬場から離れているときや馬主の牧場にいる場合の事案において、訴訟で矢面に立たされるかもしれないのに、馬主には加入義務がありませんでした」。

 「これらの状況において、私たちの新しい保険枠組みが馬主たちに適用されます。彼らは保険でカバーされたことを知って安心するでしょう」。

 1月に新たな枠組みが導入され、ROAの会員は、保険でカバーされることになる。

 ハリス氏は、「会員が個人で同じ内容の保険に加入しようとすると、保険料はROAの年会費自体よりも高額になるだろう」と述べた。

 リセッツ・ハミルトン社のジョニー・マキャーバイン(Johny McIrvine)氏は、「これまでのグループ保険に今回の新たな枠組みを追加できたことを嬉しく思います。ROA会員は今では、財政的にひどい打撃とな る事案の矢面に立たされることがなくなり、枕を高くして寝られるでしょう」と述べた。

By Howard Wright
(1ポンド=約240円)

[Racing Post 2007年11月28日「ROA membership will include insurance cover from January 1」]