海外競馬情報 2007年10月19日 - No.20 - 2
インターネット賭事客、競馬映像の減少に不満をぶつける(アメリカ)【開催・運営】

 3月にチャーチルダウンズ社(Churchill Downs Inc.: CDI)とマグナエンターテイメント社(Magna Entertainment Corp.: MEC)は、競馬映像提供会社トラックネットメディア社(TrackNet Media Group: TNMG)を設立した。それ以降、利用できる競馬映像が減少したことに不満を募らせたインターネット賭事客は、競馬産業のリーダーたちに不満をぶつけ始めた。

 8月25日、ペースアドバンテージ・コム(PaceAdvatage.com)というウェブサイト上で日頃から議論し合っているインターネット賭事客のグループは、アルバカーキ・ダウンズ競馬場を舞台として、いわゆる“バイコット(buycott)”を計画した。賭事客の重要性を競馬産業に認識してもらうために、賭事客はCDIとMED所有の競馬場での馬券購入を完全に“ボイコット”するというよりは、ニューメキシコ州の小さい競馬場であるアルバカーキ競馬場のレースを買うよう働きかけた。これが“バイコット”である。

 この意欲的な取り組みにより、アルバカーキ競馬場における場外馬券の売上げは前週の土曜日から78.5%も急増した。同競馬場の競走担当スチュアート・スレイグル(Stuart Slagle)氏は、場外馬券の売上げがステークス競走のない日としては過去最高となる12万6,057ドル(約1,513万円)を記録したと述べた。

 2つ目の試験的な“バイコット”では、9月4日にヤヴァパイ・ダウンズ競馬場のレースを買うことが計画された。これらの競馬場は、インターネットにレース映像を快く提供している。

 ペースアドバンテージ・コムの設立者マイク・ゲイツ(Mike Gates)氏は、報道発表で、アルバカーキ競馬場での記録的な売上げは強いインパクトを与えたが、多くの賭事客が利用している会員制賭事(advance deposit wagering: ADW)のプロバイダーを通してアルバカーキ競馬場とヤヴァパイ・ダウンズ競馬場のプールに賭けを行うことはできなかったと述べた。

 同氏は、「残念なことに、競馬関係者と競馬界全体にとって、現在のオンライン賭事環境が、売上げの増大を妨げています。多くのインターネット賭事客は、彼らが現在使っているADWサービスにヤヴァパイ・ダウンズ競馬場が含まれておらず、賭事が出来ないと気づきました。彼らの唯一の頼みの綱は、多数のADWに会員登録すること、あるいは団結して“バイコット”し続けることです。フラストレーションと怒りが募ったことで、今回のペースアドバンテージ・コムにおける運動が起こったのです」と語った。

 “バイコット”が起こったのは、ジョッキークラブ(the Jockey Club)と全米サラブレッド競馬協会(National Thoroughbred Racing Association: NTRA)に対し、2大コンテンツプロバイダーであるTNMGとテレビジョン・ゲームズ・ネットワーク社(Television Games Network: TVG)との間の論争を解決するよう求める嘆願書の提出直後にだった。400名が署名した嘆願書は8月19日、ジョッキークラブ競馬円卓会議(Jockey Club's Round Table Conference on Matters Pertaining to Racing)で発表された。なお、円卓会議の共同議長は、CDIのロバート・エヴァンズ(Robert L. Evans)社長とTVGのデイヴィッド・ネイサンソン(David Nathanson)上席副社長であった。

 TNMGは3月に設立されてから、TVGに有利な映像独占契約の終了を求め、場外馬券発売所には受信料金の値上げを要求した。不思議なことに、TNMGはプロバイダーにTVGの映像かTNMGの映像かを選択するように要求し、これによってインターネット映像の提供を劇的に制限した。

 TVGに独占契約を終了させようとして、TNMGはTVGからの映像を使用して賭事を提供しているユーベット社(Youbet.com)などの場外馬券発売所に対する映像配信を打ち切った。CDIが買収する予定のアメリカタブ社(AmericaTab.com) のような販売店は、TNMGの番組を提供することを選択したため、TVGで映像が送られているニューヨーク競馬協会(New York Racing Association)所有の競馬場などのレースで賭事を行うことができなくなった。

 エヴァンス社長は、TNMGの発表当初から賭事客の不満が出ることは予想していたが、断固として独占契約に反対し、場外馬券発売所に映像受信料引き上げを要求してきた。ケンタッキーダービーを放映できなかったにもかかわらず、TVGは今年の第2四半期で1億2,500万ドル(約150億円)を売上げた。TVGは今夏、サラトガ競馬場とデルマー競馬場で十分収益を上げられると確信していると述べた。

 第2四半期における北米競馬全体の賭事売上げは昨年度と比べて0.87%増加した。

 ゲイツ氏は、憤慨している賭事客の心情を理解できる競馬界のリーダーが現れることを望んでおり、「嘆願書と“バイコット”のいずれも、馬券購入者を力づけるために計画したものです。馬券購入者はたびたび無視されていますが、競馬産業において絶対的に不可欠な構成員なのです」と語った。

By Frank Angst
(1ドル=約120円)

[Thoroughbred Times 2007年9月8日「Internet handicappers attempt to send message to tracks」]