海外競馬ニュース 2022年02月17日 - No.6 - 1
2021年の年度代表馬はニックスゴー(アメリカ)[その他]

 年度代表馬にはさまざまな要素が求められる。

 ニックスゴーはそのすべてをクリアした。

 ニックスゴー(父ペインター)は2021年、米国において最高の賞金と権威を誇るダート3競走、BCクラシック(G1)、ペガサスワールドカップ(G1)、ホイットニーS(G1)を制した。

 そして海外遠征し、国際競走にも挑戦した。

 2021年の競走成績は7戦5勝で、獲得賞金は732万4,140ドル(約8億4,228万円)。

 1月から11月にかけて輝かしい活躍をし、その最初と最後をG1圧勝で飾り、まさに年度代表馬というにふさわしい1年を過ごしたのだ。

 それゆえ2月10日のエクリプス賞授賞式で2021年の年度代表馬がKRA(韓国馬事会)のニックスゴーであると発表されたとき、まったく驚きはなかった。

 ブラッド・コックス調教師は2021年の英雄的な活躍により最優秀ダート牡馬にも選ばれたニックスゴーについて、「正真正銘の年度代表馬でした。1月のペガサスワールドカップ制覇から11月まで活躍し続け、BCクラシックでの優勝により年度代表馬の座を確実にしました。とてつもない1年でした。ほかに有力馬がおらず本当に戦わずして半年あるいは1年の好成績で年度代表馬に選ばれたというわけではありません。素晴らしい馬が揃った年だったのです」と語った。

 メリーランド州産馬として無敵のシガー(1995年&1996年)以来の年度代表馬になる過程で、ニックスゴーは2021年シーズンの最初と最後に本領を発揮した。ペガサスワールドカップとBCクラシックをいずれも2¾馬身差で制し、安定性と持久力を見事に証明してみせたのだ。

 コックス調教師はアンジー・ムーア氏により生産されたニックスゴー(牡6歳 芦毛 母コスモズバディ 母父アウトフランカー)について、「BCクラシックではほかの馬とは一線を画しました。私たちの厩舎にいるエッセンシャルクオリティ(馬主:ゴドルフィン)も年度代表馬の候補であり素晴らしい1年を送りましたが、ニックスゴーはさらにレベルを上げて最高レベルのG1競走を3勝することができました」と語った。

 韓国の競馬統括機関であるKRAは、競走で活躍して韓国の血統強化に寄与する若馬を見つけることを期待して、1歳だったニックスゴーを購買した。そして期待以上のものを手に入れたのである。ニックスゴーは今年1月のペガサスワールドカップで2着となった後に引退した。その競走生活において通算25戦してブリーダーズカップ開催で2勝を挙げ、獲得賞金は925万8135ドル(約10億6,469万円)に上る。そしてテイラーメイドスタリオンズ(ケンタッキー州)で種牡馬としてキャリアを開始する。

 KRAのレーシングマネージャーであるジュン・パク氏は、「ブラッドはニックスゴーですごい仕事を成し遂げました。ニックスゴーも競走キャリアにおいて私たちの期待以上の働きをしてくれました。また彼のような馬を所有したいと思っていますが、それは難しいでしょうね」と語った。

 ニックスゴーは米国で人気を博したのと同様に、韓国の競馬ファンのあいだでも待望のロックスターとなった。

 「韓国ではパンデミックのあいだに競馬が開催されていなかったので、米国のニックスゴーを応援し勝利を祝うことができたのは、韓国の競馬ファンにとって素晴らしいことで、とても元気づけられましたね。韓国では今、ニックスゴーの優勝トロフィーが展示されており、その展示は3月まで延長されています」とパク氏は語った。

 KRAは2017年キーンランド9月1歳セールで、ニックスゴーをウッズエッジファームのエージェントから8万7,000ドル(約1,001万円)で購買した。もともと2016年キーンランド11月繁殖セールで、ノースフェイスブラッドストック社が同馬をビル・レイトラー氏から4万ドル(約460万円)で購買していた。

 2歳のときにベン・コールブルック調教師のもと、ニックスゴーは単勝71倍で挑んだブリーダーズフューチュリティS(G1)で大番狂わせの勝利を収め、BCジュベナイル(G1)では2歳王者ゲームウィナーの2着に入った。

 そしてケンタッキージョッキークラブS(G2)に単勝4倍の1番人気で臨んだが、不良馬場で前半は2番手で追走していたものの調子が狂いだして11着に沈み、2歳シーズンを終えた。

 3歳のときは8戦したが勝利はなく、3着内も2回にとどまり、KRAは2020年シーズンに同馬をコックス厩舎に転厩させることにした。ニックスゴーはそこで絶好調の走りっぷりを取り戻すだけでなく、最終的に競馬界の名だたるレースで予想を超える高みを極めることになる。

 4歳シーズンにアローワンス選択クレーミング競走で大差の勝利を2度挙げ、BCダートマイル(G1)を楽勝した。そして年度代表馬を目指すシーズンを迎えることになった。

 ニックスゴーは2021年シーズンの皮切りに、単勝2.2倍の1番人気で臨んだペガサスワールドカップ(1月23日)で2¾馬身差の勝利を収めた。

 その後サウジアラビアに遠征してサウジカップに挑んだが、シャーラタンに早くにリードを奪われ4着に終わった。

 米国に戻ったニックスゴーはメトロポリタンH(G1)で単勝1.8倍の1番人気で送り出されたが、序盤から先頭に立ってペースを作っていたものの4着に敗退した。

 コックス調教師はターンが1つしかないメトロポリタンHの競走距離はニックスゴーには不向きであるという推論を立てた。それが正しかったことが証明される。ニックスゴーはルートレース(距離1800m~2000mの競走)に戻り、主戦のジョエル・ロザリオ騎手を背にプレーリーメドウズコーンハスカーH(G3 プレーリーメドウズ)を10¼馬身差で制し、権威あるホイットニー(G1 サラトガ)では最優秀ダート牡馬の最終選考に残ったマックスフィールドとメトロポリタンHの勝馬シルバーステートを破って4½馬身差の勝利を決めたのだ。

 ブリーダーズカップに向けてのウォーミングアップとして、ニックスゴーはルーカスクラシック(G3 チャーチルダウンズ)で4馬身差の楽勝を収めた。

 シーズン末の大一番、総賞金540万ドル(約6億2,100万円)のBCクラシックに向けての準備は整った。このレースでは、エッセンシャルクオリティ、メディーナスピリット、ホットロッドチャーリー、そしてジョッキークラブゴールドカップ(G1)の勝馬マックスプレイヤーといったトップクラスの3歳馬と対戦することになっていた。

 初距離となる1¼マイル(約2000m)のBCクラシック(デルマー)で、ニックスゴーはロザリオ騎手を背にすぐさま先頭に立ち、華麗な走りっぷりで見事な快挙を成し遂げた。勢いよくスタートを切ると一度も振り返ることなく4ハロン45秒77、6ハロン1分10秒04という速いタイムを叩き出した。¼ポール(残り2ハロン)で1馬身先行すると、最後の直線ではスパートをかけて7頭のライバルを引き離してリードを広げ、メディーナスピリットに2¾馬身差をつけて1分59秒57でゴールした。

 KRAのシニアマネージャーであるジン・ウー・リー(Jin Woo Lee)氏はBCクラシックの後に通訳を介してこう語っていた。「今日の結果をとても嬉しく思っています。3歳のときには厳しい時期もありましたが、大変な1年を乗り越え、危機を脱しました。それから彼は特別な馬になったのです。それに実際のところブリーダーズカップを勝つことは今年初めに立てた最終目標であり、その勝利を達成することができました」。

 ニックスゴーはこのブリーダーズカップ2勝目を挙げることで、2021年シーズンの最初と最後に大きな勝利を達成し、どの馬が年度代表馬になるかという問題で無駄な物議を一切不要のものとした。

 コックス調教師は、「彼はとてもよく走ってくれ、素晴らしい2年間を私たちにもたらしてくれましたね。2021年にG1・3勝を挙げ、そのうち2勝を1月と11月に挙げることができるなんて、信じられないほどです。正真正銘の年度代表馬でした」と付言した。

2021年エクリプス賞受賞馬/受賞者

年度代表馬:ニックスゴー(5歳)

最優秀2歳牡馬:コーニッシュ

最優秀2歳牝馬:エコーズールー

最優秀3歳牡馬:エッセンシャルクオリティ

最優秀3歳牝馬:マラサート

最優秀ダート牡馬:ニックスゴー(5歳)

最優秀ダート牝馬:レトルースカ(5歳)

最優秀短距離牡馬:ジャッキーズウォリアー(3歳)

最優秀短距離牝馬:シーシー(5歳)

最優秀芝牡馬:ユビアー(GB)(3歳)

最優秀芝牝馬:ラヴズオンリーユー(JPN)(5歳)

最優秀障害馬:ザミーンクイーン(IRE)(5歳)

最優秀馬主:ゴドルフィン

最優秀生産者:ゴドルフィン

最優秀騎手:ジョエル・ロザリオ氏

最優秀見習騎手:ジェシカ・パイファー氏

最優秀調教師:ブラッド・コックス氏

By Bob Ehalt

(1ドル=約115円)

 (関連記事)海外競馬情報 2022年No.1「米国年度代表馬ニックスゴーを生んだK-Nicksプログラム(韓国)

[bloodhorse.com 2022年2月10日「Knicks Go a True Horse of the Year」]