海外競馬ニュース 2022年12月22日 - No.48 - 1
デットーリ騎手、2023年末の引退を発表(イギリス)[その他]

 世界で最も有名なジョッキー、フランキー・デットーリ騎手は来年末に引退する意向であることを宣言し、"さよならツアー"を盛大に祝ってくれるよう競馬ファンに呼びかけている。

 12月15日(木)に52歳になったデットーリ騎手は、22日(木)に渡米してカリフォルニアで10週間の短期騎乗を行う。彼はその地で行われる2023年ブリーダーズカップ開催(11月3日・4日 サンタアニタ)に参戦し驚異的な波乱万丈のキャリアに幕を閉じる予定だ。

 デットーリ騎手は現役最後となる年にさらに多くの海外遠征を行うだろう。しかし英国でリーディングタイトルを3回獲得している彼は、第二の故郷である英国で活躍することに最も重点を置き、ジョン&セイディ・ゴスデン厩舎の主戦騎手として騎乗し続けると明言している。

 ジョン・ゴスデン調教師は12月17日(土)、デットーリ騎手を褒めたてる競馬界の多くの重鎮の1人として、本紙(レーシングポスト紙)のインタビューで「彼は頂点に立ったままで、ファンの熱烈なサポートを受けながら引退したかったのです」と説明した。

 デットーリ騎手はこう語った。「事実と向き合ってきたのです。52歳に近づくにつれて、なんとなく分かってきたのです。どこまでやっていけるのか自分に問うようになりました」。

 「発表することは最初の一歩です。それに何を計画しているのかを世間に知ってもらうことは、フェアなことだと思うのです。最後は盛大に祝ってほしいということなのです。どうしてもそうやってみたいのです」。

 「感情が込みあげてしまうでしょうね。たくさんの涙を流してしまうことはわかっています。でも素晴らしい最後にしたいと思っているので最高のものにもなるでしょう。マイケル・ジョーダンが何と言ったか知っていますか?『ラストダンスを楽しもう』と言ったのです。今度は私のラストダンスですよ」。

 デットーリ騎手の英国での最後の騎乗は英国チャンピオンズデー(10月21日 アスコット)であると見られている。それまでに、今年G1優勝を果たした2歳馬シャルディーンとコミッショニングにクラシック競走で騎乗するだろう。また古馬の有力馬であるインスパイラル、エミリーアップジョン、キンロスなどの手綱も取ることになるだろう。デットーリ騎手は、1996年にアスコット競馬場で伝説のマグニフィセントセブン(1日7レース全勝)を達成し一躍有名人になった世界的なセレブリティである。その4年後には、死者が出た飛行機墜落事故から生還し、まったく別の理由で新聞の見出しを飾った。

 デットーリ騎手はITVレーシングに対してこう語った。「素晴らしいキャリアを積んできました。毎年"あと1年"と思いながら続けてこれたのですが、今が潮時だと感じるのです。ほかのことをやる若さは残っていますし」。

 「最高の力を発揮して終わりたいと思っているのです。今のところ、まだベストを尽くして戦えるだけの力があります」。

 長きにわたりゴドルフィンの主戦騎手だったデットーリ騎手は、2012年10月にモハメド殿下のチームと袂を分かち、その直後にコカイン陽性反応で6ヵ月間の騎乗停止処分を受けた。2015年以降はゴスデン厩舎の主戦騎手として騎乗しており、ゴールデンホーンで2度目の英ダービー(G1)優勝を果たし、その後凱旋門賞(G1)も制覇した

 デットーリ騎手はゴスデン調教師が管理したエネイブルに騎乗して自身にとって5回目および6回目となる凱旋門賞制覇を達成した。傑出した名牝エネイブルはキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)の3勝を果たしたことでも競馬史にその名を刻んだ。

 デットーリ騎手は1990年代半ばにもゴスデン調教師とコンビを組んでいたことがある。それ以前はルカ・クマーニ厩舎の所属騎手として騎乗していた。彼はわずか14歳のときに父ジャンフランコによりイタリアからニューマーケットに送り込まれ、初めて協力関係を築いたのがクマーニ調教師であり、彼らは輝かしい日々を送った。

 南アフリカに滞在中のクマーニ元調教師はこう語った。「彼が引退を決めたのには当然もっともな理由があります。頂点に立ったままで退きたいと思っているのは明らかであり、腕が鈍った状態で乗っているのを見られたくないのです。その意味では、とても理解できる決断ですね」。

 「しかしこんな日が来ないことをずっと願っていたものですから、悲しいニュースです。フランキーは人気も才能もすごくあるから、永遠に続けられるといいのにと考えていました。この3~4年のあいだの彼の活躍ぶりは、彼は本当にいつまでも続けられると思わせるものでした」。

 クマーニ元調教師はデットーリ騎手の騎乗技術に敬意を表しながらこう続けた。「彼は間違いなくこれまでで最も偉大なジョッキーの1人です。最も重要なことは、競馬というビジネス、ジョッキーであること、そして馬を愛していることです。それにより彼は偉大な存在となったのです。馬を扱う天賦の才能があり、手綱をつうじて馬の脳に勝利への意志を伝える驚異的な能力があるのです。彼はそれを何度も発揮しましたね」。

 また、ゴドルフィンの主戦として長年騎乗していたデットーリ騎手の盟友であるサイード・ビン・スルール調教師も溢れんばかりの賛辞を贈った。

 「フランキーと私は素晴らしい瞬間をともにしてきました。過去にも偉大なジョッキーはいましたが、私の考えでは、フランキーはこれまでで一番でしょう。今年も最高の騎手であり続けていることを示したと思います。フランキーは英国、欧州、そして世界中の競馬界にとって素晴らしい存在であり続けてきました。彼がいなくなると、競馬界は寂しくなってしまうでしょう」。

 デットーリ騎手はこの決断に複雑な心境であることを認めながらこう語った。「来年はとても感動的な年になるでしょう。手放してしまうのはとても辛いです。ジョッキールームでは年を取ったと感じることは一度もありませんが、現実には年を取ってしまったのです。やめなければならないのです」。

 「エキサイティングなことですが、拷問のようなものでもありますね。35年の生活に別れを告げるのは消耗させられることですが、決めてしまったことなので実行するのみです。感情が込みあげることもありますが、前向きにとらえてお祝いの年にしようと思っているのです」。

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By Lee Mottershead

[Racing Post 2022年12月17日「'I have to give up' - Frankie Dettori reveals bombshell retirement next year」]