マキシマムセキュリティの2020年サウジカップの優勝資格を剥奪し総賞金2,000万ドル（約27億円）を再配分するという決定がなされれば、馬主のゲイリー・ウエスト氏は支持するつもりだと述べている。

　ウエスト氏は12月9日（金）の遅くに発表した声明でこう述べている。「司法制度を信頼して法的な訴追の成り行きを辛抱強く見守ってきました。ジェイソン・サーヴィス氏が有罪を認める答弁を行った今、サウジカップが賞金の再配分を決定するならば、私たちがその決定を支持することをはっきりさせておきたいと思います。できれば、その措置によって今後このような性質の行為が防止されることを望んでいます。マキシマムセキュリティからサウジカップの1着賞金を取り戻して再配分するという決定が正しいものであると信じています」。

　サーヴィス調教師はマキシマムセキュリティを10戦にわたり管理して2020年2月にサウジカップで頂点を極めたが、2020年3月に逮捕された。サウジアラビア・ジョッキークラブ（Jockey Club of Saudi Arabia）の関係者はその約1ヵ月後、サーヴィス氏に対する訴訟が決着するまで確定着順について公正かつ妥当な判断ができないとし、1着賞金1,000万ドル（約13億5,000万円）を保留とした。

　サーヴィス氏は12月9日（金）、ニューヨークの連邦裁判所において、競馬統括機関の検査では検出されない偽ラベルが貼られ変造された競走能力向上薬（PED）を管理馬に投与したという容疑について有罪を認める答弁を行った。

　米国連邦地裁のメアリー・ケイ・ヴィスコチル判事に答弁する際に、サーヴィス氏は法廷において「マキシマムセキュリティは禁止薬物SGF-1000を投与されており、馬主への請求書の項目を『鍼治療とカイロプラクティック』に改ざんしていました」と述べた。

　サーヴィス氏は2023年5月18日の判決で、最長4年の禁固刑を受けることになっている。

　マキシマムセキュリティは2020年2月29日にサウジカップを制した。そのわずか9日後にサラブレッドとスタンダードブレッドへのドーピングで最初に27人が起訴され、その中にサーヴィス氏が入っていたのだ。また、モンマスパーク競馬場でリーディングタイトルを7回獲得していたトレーナー、ホルヘ・ナヴァロ氏もそれに名を連ねていた。ナヴァロ氏は1年前に有罪を認め、現在5年の禁固刑に服している。

　マキシマムセキュリティはサウジカップに出走した当時、ゲイリー＆メアリー・ウエスト夫妻のほかにクールモアのチーム（ジョン・マグニア夫人、マイケル・テイバー氏、デリック・スミス氏）により所有されていた。そして現在6歳の同馬は種牡馬としてそのチームのアシュフォードスタッド（ケンタッキー州）で供用されている。

　マキシマムセキュリティ（父ニューイヤーズデー）が失格となった場合、2位入線のミッドナイトビズーが優勝馬とされ、1着賞金1,000万ドル（約13億5,000万円）を受け取ることになる。

　さらに3着ベンバトル・4着ムーチョグスト・5着タキトゥスも2着～4着に繰り上がり、獲得賞金も2着～4着の賞金350万ドル（約4億7,250万円）、200万ドル（約2億7,000万円）、150万ドル（約2億250万円）に引き上げられる。

　サウジカップで失格となれば、マキシマムセキュリティが主要なG1競走で優勝資格が剥奪されるのは2度目となる（訳注：マキシマムセキュリティが出走した時点でサウジカップはまだ国際G1競走に格付けされていなかった）。2019年ケンタッキーダービー（G1）で1位入線したが走行妨害で17着とされ、長い歴史を誇るこのレースにおいてこのような形で降着となった初めての馬となっているのだ。

　ウエスト氏は裁決委員による降着処分を覆すために訴訟を起こしたが、2019年11月に訴えは退けられていた。

　サーヴィス氏の有罪判決により、マキシマムセキュリティが2019年の最優秀3歳牡馬として受賞したエクリプス賞が取り消されるべきかどうかも問われている。

　現時点でのマキシマムセキュリティの通算成績は14戦10勝（2着2回）である。4歳になってボブ・バファート厩舎に移籍し、2020年パシフィッククラシックS（G1）を制覇するなど4戦2勝の成績を挙げ、2021年から種牡馬生活を開始している。

By Bob Ehalt

（1ドル＝約135円）

（関連記事）海外競馬ニュース　2022年No.47「サーヴィス調教師、有罪を認めて最長4年の禁固刑へ（アメリカ）」

［bloodhorse.com 2022年12月10日「West Would Support Saudi Cup DQ of Maximum Security」］