海外競馬ニュース 2022年04月14日 - No.14 - 3
2009年ケンタッキーダービー馬、マインザットバードの現在の生活(アメリカ)[その他]

 マーク・アレン氏が行くところには、2009年ケンタッキーダービー(G1)優勝馬マインザットバードもついて行く。

 大半のダービー馬はレースキャリアを終えるとさっさと種牡馬入りする。しかしマインザットバード(せん16歳)は2009年にチャーチルダウンズ競馬場(ケンタッキー州ルイビル)で電撃的な勝利を挙げて、2010年に現役を引退してからも、馬主であるマーク・アレン氏とレナード・"ドク"・ブラック氏の生活の一部であり続けている。

 現在マインザットバードはHV牧場(テキサス州ローンオーク近郊)でアレン氏とともに働き、ポニーホース(先導馬)のような役割を果たしている。アレン氏はそこでロサ・ラミレス調教師を手伝っている。マインザットバードは普通のポニーホースではないかもしれないが、アレン氏にとってはダービー馬の近くにいつづけるチャンスである。

 アレン氏は「マインザットバードはとても優秀なポニーホースですが、やはり先導するだけでなくレースもしたいようです」と述べる。この馬は競馬場に行く馬と仲良くすることはないが、アレン氏が乗ると彼らと一緒に歩く。「だから本当に、彼に乗って回りを歩かせ馬を見せるだけなのです。彼は何でも見ることが好きなのです。とても賢い馬で、私はこの馬が大好きですね」とアレン氏は続けた。

 「とてもなめらかに動くのです。先日振り落とされそうになりましたが、とてもなめらかなに動くので、実際のところ楽しかったのですよ。ただ、彼に乗って歩き回るのが好きですね。脚を少し伸ばして、彼が大きな馬であることを実感させてあげるのです」と63歳のアレン氏は16歳のクラシックウィナーについて語った。

 2009年の19頭立てのダービーで単勝51倍のマインザットバードは先頭から21馬身後方を走り、そこから差を詰めて行って6¾馬身差の圧勝を収めるという衝撃を引き起こした。カルヴィン・ボレル騎手の内柵すれすれを通るような騎乗、カウボーイのようなベニー・"チップ"・ウーリー調教師、馬主たち、そしてマインザットバードが成し遂げた大番狂わせ(2ドルにつき103.20ドルの払戻しは現在ケンタッキーダービー史上3番目の高額配当)は、2014年の映画『マインザットバード 夢をのせて駆け抜けた馬(50 to 1)』で描かれている。

 マインザットバード(父バードストーン)は2009年春、さらに成長を続けた。プリークネスS(G1)では牡馬をすべて撃退したが、2009年の年度代表馬となる牝馬レイチェルアレクサンドラに1馬身およばず2着に終わった。その後のベルモントS(G1)では3着に入った。

 4歳シーズンに殿堂入りトレーナーのD・ウェイン・ルーカス調教師のもとで出走したのち、マインザットバードは引退した。そしてほどなく、アレン氏のダブルイーグル牧場(ニューメキシコ州ロズウェル近郊)に落ち着いた。その近くにはブラック氏の自宅もあった。彼は牧場での暮らしを楽しむだけでなく、ファンや近くのUFO博物館を訪れた好奇心旺盛な観光客を迎え、それは2020年にアレン氏が牧場を売却するまで続いた。アレン氏によると、マインザットバードは1年半ほど前から現在の仕事をしているという。

 ブラック氏は「マークと一緒にHV牧場に行く日まで、週に1~2人の訪問者が彼に会いに来ていました。素晴らし光景でした。彼は人間が好きなのです」と語った。

 ラミレス調教師はアレン氏の所有馬を管理している。アレン氏はこの若い調教師を手伝っているものの、「調教しているのは彼女ですから、あまり助けを必要としていないのです」と述べる。

 そして「彼女は立派な調教師になると思いますよ。ここでぶらつくのを許してくれて、私もレースに向けての助言とかちょっとしたアドバイスをしますが、あまり助けを必要としていないのです」と語った。

 マインザットバードは2013年、しばらくのあいだケンタッキーダービー博物館に繋養馬として展示されていたが、引退後はほとんどアレン氏と過ごしている。2人の馬主は、彼らのダービー馬がこの数年ずっと一緒にいるのは特別なことだと声を揃える。

 アレン氏は「人生にこの馬がいてくれることが私のすべてです。彼はとても多くのことをもたらしてくれましたね。どれだけ彼を愛しているか、言葉では言い表せないほどです」と述べた。

 アレン氏は今でもロズウェルに戻って頻繁にブラック氏を訪ね、愛馬の近況を報告している。

 獣医師を引退した88歳のブラック氏はこう語った。「マインザットバードがダブルイーグル牧場にいたときはほとんど毎日会いに行ったものです。私の家のちょうど通りを渡ったところにいましたからね。会いに行ってはペパーミントをあげていましたよ。何年もそうしていたので慣れてしまったのでしょうね。ピックアップトラックを運転して行くと、彼は私のほうを見て立ちつくし、駐車して近づいて行くまで耳を立てて私を見ていたものです」。

 「ピックアップトラックから降りて『こっちへおいで、バード』と言うと、彼はフェンスまで歩いてくるのです。ペパーミントを1つか2つもらえると分かっていたんでしょうね」。

By Frank Angst

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