海外競馬ニュース 2021年03月11日 - No.9 - 4
エリオット調教師、不適切な写真により6ヵ月間の免許停止処分(アイルランド)[その他]

 アイルランド競馬監理委員会(IHRB)は、ゴードン・エリオット調教師が馬の死体の上に座って携帯電話で話している写真(2019年撮影)が拡散したことにより競馬の評判が貶められたと判断し、同調教師に6ヵ月間の調教師免許停止処分と制裁金1万5,000ユーロ(約195万円)を科した。

 エリオット氏は調教活動を1年間禁止されたが、そのうち6ヵ月間は執行猶予となる。同氏は上訴しない考えであり、本紙(レーシングポスト紙)はデニス・"スニージー"・フォスター調教師が3月2週目からエリオット氏の調教拠点、カレントラハウス(Cullentra House)の指揮権を引き継ぐという情報を得ている。

 フォスター調教師はまず障害競走馬だけを調教し始めたが、2011年には平地競走馬も手掛け始めた。そしてリリーズレインボー(Lily's Rainbow)が2016年4月にヘリテージS(ナヴァン)を制したときに、リステッド優勝を果たした。

 フォスター調教師はポセックスタウン(ミース県エンフィールド近郊)に厩舎を構え、過去5シーズンに勝馬10頭(平地6頭、障害4頭)を送り出した。その中には2018年にバンパー競走(バリンローブ)で優勝したパイクカウンティ(Pike County)がいる。最近では、2月26日にダンダークの未勝利戦(約1400m)で優勝したスウィススウー(Swiss Swoo)を送り出している。

 エリオット氏への制裁は施行規程272条(i)に基づくものである。このルールは競馬管轄区内で競馬の高潔性・道徳性・評判に害を及ぼす行動を取った者を対象とする。

 すなわち、エリオット厩舎の所属馬はチェルトナムフェスティバル(3月16日~19日)に出走できないことになる。

 審問は3月5日にネース競馬場で実施され、レイモンド・グローク(Raymond Groarke)判事が議長を務め、シヴォーン・キーガン(Siobhan Keegan)判事やニック・ワックマン(Nick Wachman)氏が委員団に名を連ねた。

 広告会社のパワーズコートグループが出した声明において、エリオット調教師はこう述べている。

 「現状と制裁を受け入れており、IHRBとの取決めに納得しています。審問は簡単なものでありませんでしたが、この事案は公正に扱われました。自らの行動が現状を招いたので、このことから逃げるつもりはありません。競馬界で地位のある者は、素晴らしい特権も享受しますが、同時に大きな責任も担います。私はその責任を果たしませんでした。私はもはや、30年前にトニー・マーティン厩舎で馬に跨ったばかりの10代の若者ではありません。義務を負う大人であり、初めてレースを見て以来ずっと愛している競馬の世界に身を置く者です。犯した過ちのために大きな代償を払っているところです。しかし、不服はありません。自らが同僚・家族・友人・支持者に与えてしまった苦痛に気づき、胸が張り裂ける思いです。長い道のりが待ち受けていますが、制裁に服し、以前よりも良い人間になれるように努めます」。

 IHRBの報告書にはこの事案が生じた背景を説明する際に、「IHRBには非難が殺到し、この事案はメディアにおいて適切かつ徹底的に精査されました」と記しており、委員団はこう指摘する。

 「エリオット氏がまだ管理下にある馬に対する敬意が皆無だったことを示している点において、委員会はこの写真を最もおぞましい悪趣味なものであると考えます。生死を問わず敬意を払うことこそが、動物を管理する者が負う義務の不可欠で本質的な部分であると、私たちは信じています」。

 「疑う余地もなく、たいへん遺憾なことに、この事案により競馬の評判と高潔性は結果的に貶められ、偏見が抱かれているわけです。そして多くの人々に楽しみ愛されてきたスポーツに深刻なダメージが与えられています。馬が人生にもたらす喜びに感謝している人々すべてに、問題の写真の拡散は大きな苦痛を引き起こしたことは間違いありません」。

 2019年に心臓動脈瘤で死んだモーガン(7歳)の上に座わるエリオット氏の写真がSNS上に最初に出回ったのは、2月最後の週末である。その写真に対して理屈抜きの反応が即座に沸き起こったが、委員会は動物への残虐な行為がなかった点を明確にした。

 報告書にはこう記されている。「エリオット厩舎の馬が最高水準で管理されていないという事実は示されませんでした。それは私たちが聴取した獣医師から証言などにより裏付けられています。エリオット氏の調教師としての成功は、同氏の馬に対する世話や配慮の証しであると私たちは考えます」。

 2月最後の週末にこの写真が投稿された背後にある動機について、報告書はこう述べている。「委員会はこの事案について、もう1つの不吉な側面があるとも考えます。この写真の投稿はエリオット氏への一斉攻撃の一部であると、委員会は確信しています。ただし、その全体的な事情については不明です」。

 「エリオット氏を庇ったり赦免するためではなく、2019年から存在する写真がなぜこの時期に投稿されたのかを解明するために、このことを詳細に調べています」。

 BHA(英国競馬統括機構)はこの審問に応じて、「調教師免許停止期間が始まる3月9日よりも前に、エリオット厩舎所属馬が迅速に転厩していれば、それらの馬は英国のレースに出走できるでしょう」と述べた。

 BHAの声明にはこう記されている。

 「アイルランドの当局が迅速に対処したことを歓迎します。調教免許の停止はここ英国でも適用されます。エリオット氏が英国のレースに管理馬を出走させることについての既存の制限は、制裁が実施される3月9日まで保持されます」。

 「IHRB専門委員会は、この写真がおぞましい悪趣味であり、馬への敬意が皆無であることを指摘しました。これらの意見と"敬意を払うことこそが、動物を管理する者が負う義務の不可欠で本質的な部分である"という考えを、私たちは是認します」。

 調教師としてこれまでに1,838勝を挙げているエリオット氏は3月2日、その最高の管理馬を失った。馬主のチェヴァリーパークが預託馬8頭を引き上げ、その中に無敗の超有力馬エンヴォイアレンが入っていたのだ。

 一方、エリオット氏にとって大事な馬主である、ギギンズタウンハウススタッドを運営するマイケル&エディー・オリアリー兄弟は、"容認できない写真によって深く失望した"にもかかわらず同氏を支持した。

 委員団は、エリオット氏の調査への全面的な協力と、同氏が深く後悔していることを認めた。そして最終的な裁定に関してこう指摘した。

 「この委員会がエリオット氏に科そうとしている制裁は、同氏がすでに苦悩させられ今後も苦しめられるであろう数多の処罰の1つにすぎません」。

 「これらの処罰には、同氏の評判への深刻なダメージ、さらに事業契約の喪失と馬の転厩による経済的損失が含まれています。また委員会は、IHRBの最高医療責任者であるジェニファー・ピュー博士からの同氏の健康状態に影響が及んでいるという証言を気に留めています」。

 なお、エリオット氏は委員会に対し、今後6ヵ月間はレースやポイント・トゥ・ポイント競走には一切行かないだろうと語った。

By David Jennings

(1ユーロ=約130円)

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[Racing Post 2021年3月6日「Denise Foster to run Elliott yard while trainer serves six-month suspension」]