海外競馬ニュース 2021年03月11日 - No.9 - 3
フランケルの母、優良牝馬カインドが20歳で死亡(イギリス)[生産]

 ジャドモントファームの傑出した繁殖牝馬カインドは、キングマン牡駒を出産してから数日後に20歳で死んだ。同馬は驚異的なフランケルやG1・3勝馬ノーブルミッションの母である。

 カリド・アブドゥラ殿下が所有したカインド(父デインヒル)は現役時代、ロジャー・チャールトン調教師に管理され、フラワーオブスコットランドS(L)やキルヴィントンS(L)を制して6勝をあげた。そして、2006年に繁殖入りした。

 カインドは繁殖1年目にサドラーズウェルズと交配し、ブレットトレインを送り出した。ブレットトレインはダービートライアルS(G3 リングフィールド)で優勝し、のちにフランケルのペースメーカーとなった。

 ブレットトレインは種牡馬入りしてからの数年間をケンタッキーで過ごしたが、現在はウッドフィールドファームスタッド(アイルランド・ウォーターフォード県)で供用されている。これまでに勝馬144頭を送り出し、その中にはハーバートパワーS(G2)優勝馬チャパダ(Chapada)やリステッド勝馬ウィスキートレイン(Whiskey Train)などがいる。

 カインドは第2仔としてフランケルを送り出したことでついに、歴史に名を刻んだ。サー・ヘンリー・セシル調教師が手掛けたこのガリレオ産駒は、14戦14勝を果たして競馬界の伝説となった。その14勝の中には、英2000ギニー(G1)で先行して達成した破壊的な勝利などG1・10勝が含まれる。フランケルは競走引退後にバンステッドマナーで種牡馬入りし、2013年に種牡馬生活を開始した。

 現在13歳のフランケルはこれまで、12頭のG1馬を送り出している。その中には、英チャンピオンSを2勝したクラックスマン、英オークス優勝馬アナプルナ、英セントレジャーS優勝馬ロジシャンなどが含まれており、昨年は欧州の種牡馬として史上最速で合計40頭の重賞勝馬(実頭数)を送り出した。カインドは繁殖3年目に前年と同様にガリレオと交配し、もう1頭のG1馬ノーブルミッションを送り出した。まずセシル調教師により手掛けられたノーブルミッションは2012年にゴードンS(G3)を制した。その後セシル夫人に管理されるようになった2014年には、前々年に兄フランケルが制していた英チャンピオンSで感動的な勝利を収めた。セシル夫人にとっては、2013年6月に夫をがんで亡くしていたので、とりわけ胸を締め付けられるような勝利だった。

 カインドが送り出した優良馬にはほかに、リステッド2勝馬ジョワイユーズ(Joyeuse 父オアシスドリーム)がおり、ジョワイユーズは繁殖牝馬としてコロネーションS(G1)3着のジュビロソ(Jubiloso)やステークス2着のジョヴィアル(Jovial)を送り出している。また、3勝馬モルフェウス(Morpheus 父オアシスドリーム)とフランケルの全弟プロコンスル(Proconsul)はいずれも種牡馬生活を始めている。

 G1馬2頭と、ブレットトレインのような重賞勝馬を送り出すという稀有な偉業により、カインドの名はIFHA(国際競馬統括機関連盟)の国際保護馬名リストに掲載されている。

 カインドは近年、ガリレオ(2014年、2015年)とキングマン(2016年、2017年)との仔を流産していた。しかしフランケルとノーブルミッションの全妹カイアズマ(Chiasma 3歳)を送り出しており、同馬は現在ジョン・ゴスデン調教師に手掛けられている。カインドは2019年には不受胎で、昨年はガリレオとの仔を流産した。今年は再度キングマンと交配する予定だった。

 英国にあるジャドモントファームの牧場の場長を務めるサイモン・モクリッジ氏はこう語った。「カインドを懸命に世話してくれたロスデールス馬診療所とジャドモントのチームには、どれだけ感謝してもたりないぐらいです。多くの人々にとって、カインドはフランケルとノーブルミッションの母として最もよく思い出されるでしょう。またジャドモントの私たちにとって、カインドはその名のとおり優しい性格の馬としていつまでも記憶に残り続けるでしょう」。

 カインドはジャドモントファームの自家生産馬の第2世代である。カインドの母は、影響力の強い種牡馬レインボークエストの牝馬でG3優勝馬のレインボーレイク(Rainbow Lake 母ロックフェスト)である。レインボーレイクは1983年のジョン・"ジョック"・ヘイ・ホイットニー(John 'Jock' Hay Whitney)氏の所有馬一掃セールにおいて、繁殖牝馬の1頭として個人取引で購買された。

 カインドは、半兄にタタソールズゴールドカップ(G1)とアーリントンミリオン(G1)の優勝馬パワーズコート(父サドラーズウェルズ)、半弟にパリ大賞(G1)2着馬ラストトレイン(Last Train)、半妹にリブルスデールS(G2)優勝馬リポスト(Riposte)がいる。リポストは全姉で勝馬のアリゾナジュエル(Arizona Jewel)とともにジャドモントファームの繁殖牝馬群に加わっている。

By Kitty Trice

[Racing Post 2021年3月8日「'Kind by name and by nature' - dam of Frankel and Noble Mission dies aged 20」]