海外競馬ニュース 2021年02月10日 - No.5 - 1
スミス騎手、シャーラタンでサウジカップ制覇を狙う(サウジアラビア)[その他]

 米国のトップジョッキー、マイク・スミス騎手(55歳)は、早い段階で1番人気に推されているシャーラタンで、サウジカップ(リヤド・キングアブドゥルアジーズ競馬場)に再び挑戦しようとしている。そして、このレースへの2回目の挑戦がなるべく1回目ほど物議を醸さないものになることを望んでいる。

 スミス騎手は1年前、総賞金2,000万ドル(約21億円)を誇る"世界最高賞金レース"サウジカップの第1回開催において、ミッドナイトビズーに騎乗してマキシマムセキュリティの2着を確保した。しかし同騎手はレース直後に論争の的となり、鞭使用ルール違反による9日間の騎乗停止処分を科され、鞭使用回数超過により2着賞金の騎手への進上金の60%、すなわち推定21万ドル(約2,205万円)を没収された。

 スミス騎手は当時、この制裁を"騎手に対する競馬史上最大のペナルティー"であると訴えた。そして、この制裁ともう1つの処分(別のレースで後検量をし損ねたことによる2日間の騎乗停止処分)に対して不服申立てを行ったが、それらの申立ては却下された。さらに、とどめを刺されるような出来事があった。サウジカップ前日のSTCインターナショナルジョッキーズチャレンジ(全4レース)で勝利を挙げたレースの後に禁止薬物の陽性反応があったことにより、その勝利は無効とされ総合優勝を取り消されたのだ。

 しかし世界14位の同騎手は、2月19日・20日にリヤドを再訪するときに悪い感情は抱かないだろうと主張した。「昨年のサウジカップ開催は素晴らしかったと思います。起こったことはしようがありません。確かにミスを犯してしまったので、その代価を払わなければなりませんでした。過怠金と騎乗停止処分は法外なものでしたが、まあ仕方ありませんね」。

 「サウジにはサウジのルールがあります。彼らはレース前にそれを説明していました。私は限度を超えてしまいました。払うべき代価を払わなければなりませんでした」。

 「他にも2つのことがありました。ある方向に進むように言われて検量を通り過ぎてしまったことで騎乗停止処分を科されましたので、少々雑に扱われたように思えました。また、ジョッキーチャレンジで総合優勝したのに1つのレースでの優勝を無効にされて総合優勝を失う羽目になったことも頭に来ました」。

 「いろいろなことがありましたが、言っておかなければなりません。サウジの競馬場のことがとても気に入りましたし、サウジカップ開催には両日とも好感を持ちました。ミスを犯してしまったこと以外は素晴らしい開催でした」。

 皮肉な結果になるかもしれないが、スミス騎手が2020年サウジカップの勝者になる可能性はまだ残されている。なぜなら、マキシマムセキュリティを管理していたジェイソン・サーヴィス調教師が米国でドーピング行為の罪に問われているため、同馬のサウジカップ優勝は依然として調査中だからだ。

 しかし今では、"ビッグマネー・マイク"の異名を取るスミス騎手が出走馬確定前の1番人気となっているシャーラタン(牡4歳)で今年のサウジカップを制覇することに注目が集まっている。ボブ・バファート調教師が管理するシャーラタンは、アーカンソーダービー(G1)で1位に入線したが薬物違反のために失格。経歴における唯一の傷となったその件については、現在不服申立てが行われている。

 スミス騎手はこう語った。「シャーラタンの競走成績そのものが雄弁に物語っています。彼は特別な馬です。長い休養明けに挑んだマリブS(G1 12月26日 サンタアニタ)を見ればお分かりになるでしょう。ボブはシャーラタンがベストの状態にあるとは思っておらず、圧倒的な勝ち方ができるとは考えていませんでした」。

【2020年マリブS(G1)】

https://www.youtube.com/watch?v=cGRi6mSbG-A&feature=emb_logo

 「サウジカップのようなレースで彼に騎乗できるチャンスをもらえて本当にワクワクしています。彼はもう1つのレースでも楽勝、それも途轍もない楽勝を果たしていますので、問題ありません」。

 週末に行われた追い切りが素晴らしかったことで、ペガサスワールドカップ(G1)優勝馬ニックスゴーはサウジカップで2番人気となっており、シャーラタンの第一のライバルとなることが確実視されている。

 スミス騎手は、「ニックスゴーは本当に良い馬です。そのため彼は倒すべき馬の1頭ですが、他の馬に1着の座を渡すつもりはありません」と述べた。

 スミス騎手は昨年サウジアラビアから帰国してから、拠点とするカリフォルニア州の競馬界が採用した鞭使用回数の制限を受け入れなければならなかった。「その当時、米国では鞭使用回数の制限がありませんでした。もちろん現在はそのようなルールが発効し、私たちはそれに慣れています」。

 スミス騎手はミッドナイトビズーのことを回想した。「38年間ひたすら騎乗してきて、ある夜突然に変更が迫られ、あのような超高額賞金をめぐって競い合いました。ミッドナイトビズーはあの夜カメラを搭載した車に気を取られて少し身を乗り出していたので、集中力が100%ではありませんでした」。

 「勝てる可能性があったので、彼女を集中させてゴールを目掛けて突き抜けようとしました。忘れていましたが、サウジの関係者たちは前もってルールについて説明していました。私は限度を超えてしまいました。まさにそれだけのことです」。

 「しかし、サウジの賞金は信じられない額です。あの夜も過怠金を科されたこと以外は楽しい夜でした」。

By Jon Lees

(1ドル=約105円)

 (関連記事)海外競馬ニュース 2020年No.9 「マイク・スミス騎手、鞭使用回数超過により超高額の過怠金(サウジアラビア)

[Thoroughbred Racing Commentary 2021年2月7日「He had a difficult time last year, but Mike Smith is itching for another crack at the Saudi Cup on Charlatan」]