海外競馬ニュース 2021年12月16日 - No.47 - 3
検量室でいじめ行為を行った騎手に18ヵ月間の騎乗停止処分(イギリス)[その他]

 ロビー・ダン騎手に18ヵ月間の騎乗停止処分が科された(最後の3ヵ月間は執行猶予)。同騎手は、意図的にブライオニー・フロスト騎手の脆弱さに付け込んで、計画的ないじめとハラスメント行為の標的にしたことで有罪と判断されたのだ。

 独立した懲戒委員会は、ダン騎手がインターネット上・コース上・検量室で、競馬の高潔さ・適正な実施・高い評価を損なわせる行為に関わったと判断した。今回の制裁は即時に科される。

 審査員団の議長を務めたブライアン・バーカー弁護士は裁定を発表するにあたり、「ダン氏の一連の否定・批判・理屈を受け入れられません」と述べ、英国の検量室の文化と言われているものについて"真の懸念"を表明した。

 さらにバーカー弁護士は、ダン氏が6日間の審問において物事を理解しようとする姿勢や反省する様子をほとんど見せず、その代わりに自身の行動を正当化するためにフロスト氏の人格を攻撃していたと付け加えた。ダン氏はこの裁定に対して7日以内に上訴できる。

 裁定が下る直前にウォリック競馬場で勝利を挙げたフロスト騎手は、その証言が審査員団から"誠実で、慎重で、説得力がある"と評価されていた。そして彼女は裁定が下された後に「支えてくれた競馬関係者を含むすべての人々」に感謝した。

 審査員団は、昨年2月13日~9月3日のダン氏のフロスト氏に対する振舞いに危害を加えることが見込まれるものがあり、BHA(英国競馬統括機構)がダン氏に対して提起した容疑の中で最も重大な"いじめ"に相当するものであったと判断した。この時期、ダン氏の検量室でのフロスト氏に対する一連の攻撃はピークに達していて、彼女に対し「お前をフェンス(障害)の脇にぶち込んでやる」と言っていた。

 バーカー弁護士はこう語った。「私たちはダン氏の一連の否定・批判・理屈を受け入れられません。彼自身の証言の1つから窺い知ることのできる男は"からかい屋"であり、自らのことを検量室の長老の1人だと考え、意見が通ることを求めていました」。

 「フロスト氏に対して発せられたと思われる言葉のトーンと種類は、彼女の騎乗スタイルに対する不満や検量室の習慣がどうであれ、まったく受け入れられません。これらはまさに、ルールで定められた禁止事項の範囲に入っています」。

 「第二に、名ジョッキーやおそらく困難な立場に置かれていたバレットが行った証言や彼らのやり方を検討した結果、(BHAの法律顧問である)ルイス・ウェストン氏が引き合いに出した"検量室の文化"に対して、私たちは真の懸念を持っています。それは根深く威圧的なものであり、現代の騎乗活動の健全性と進化に役立つものではありません」。

 「フロスト氏の証言と態度を検証してみて、彼女が誠実で慎重で説得力のある人だと分かりました。彼女はBHAに訴えを行うことで"おきて"を破ったことになります。一部の人々からの孤立や拒絶が避けられないことも知っていました」。

 バーカー弁護士は制裁を言い渡す際、ダン氏の取った態度を厳しく批判した。それには審問中の態度も含まれる。

 「これは、同僚の脆弱さに付け込んで、計画的に標的にしたものです。彼女の騎乗スタイルをどう考えるかは別にして、このような対応のしかたはありえません。あなたの行動は、機会が平等な競馬というスポーツにおいてふさわしくありませんでした」。

 「私たちが実に酷いと思う点は、これが公の場でかなり長期にわたって計画的に継続し、望んでいた効果を生んでいったということです。あなたの態度や言葉づかいは、どのような社会的地位や職場でも許されないものです」。

 「さらに数日間の審問において、自身の行動を正当化しようとするために彼女の人格を敵対的に攻撃しました。物事を理解しようとする姿勢や反省する様子はほとんど見られませんでした」。

 フロスト騎手は12月9日(木)午後に出した声明でこう述べている。「ここ数週間だけでなくずっとサポートしてくださった競馬関係者を含むすべての方々に感謝したいと思います。これ以上コメントする前に、現在はこの結果について2~3日かけてじっくりと考えたいと思います。マスコミの皆様におかれましては、今後数日間は私と身近な人たちのプライバシーを守ってくださるようお願いします。週末の騎乗に集中する必要があります。ありがとうございました」。

 ウェストン氏はBHAを代表して、ダン氏はこの件を通じて"一片の反省も示していなかった"と述べた。

 一方、ダン氏の代理人であるロデリック・ムーア氏は審査員団に対して"検量室の文化を変えるために1人の男性の生計を犠牲にしないでほしい"と要求し、こう語った。

 「彼は私に対し、"私に落ち度があると思われる点について、私に代わって心から謝罪してほしい"と頼んでいます。彼は人々の気分を害したくないと思っているのです」。

 フロスト氏がウォリック競馬場のジュベナイルメイドンハードルをグレイストーン(Graystone ルーシー・ワダム厩舎)で制した3分後にこの初回の裁定が下された。

 彼女は12月1日(水)の証言で、ダン氏から受けたいじめ行為や、検量室で男女を問わず同僚騎手から仲間外れにされた様子について感情的に語っていた。

 「声を上げたことで私が感じた孤独感を誰にも味わってほしくありません。ほかの騎手はどうなのか分かりませんが、私自身について言うならば、"絶対に痛い目に遭わせてやる"などと言って、意図的に人を脅したことは絶対にありません。それは人間性として正しくなく、誰かに言うべきことでもありません」。

 「父(グランドナショナル優勝騎手のジミー・フロスト氏)はいつも私に、"静かにしていなさい。何かを始めようとしてはいけない。成り行きに任せて前に進みなさい"と言っていました。以前はそのとおりだと思っていましたが、"絶対に傷つけてやる"と言われると、我慢にも限界があるのです」。

By Peter Scargill

[Racing Post 2021年12月9日「Robbie Dunne banned for 18 months for bullying and harassing Bryony Frost」]