海外競馬ニュース 2021年10月28日 - No.40 - 3
ジョセフ・オブライエン調教師、悪夢のような検査手順に苦言(オーストラリア)[獣医・診療]

 ジョセフ・オブライエン調教師はレーシングヴィクトリア(RV)に対して、海外からの遠征馬への悪夢のような獣医スクリーニング検査のプロセスを見直すように要求した。そして、来年メルボルンに遠征してくる馬はさらに減るだろうと警告した。

 ステートオブレストがコックスプレート(G1 10月23日)で優勝したことで、豪州の主要競走の1つを制したジョセフ・オブライエン調教師はこう語った。「すべての手続きと精密検査を通過することがどれだけ大変だったかは、筆舌に尽くしがたいです。これほどの試練を経ることになると知っていたら、はじめから豪州に遠征することすらなかったかもしれません」。

 オブライエン調教師は10月25日、ステートオブレストと昨年のメルボルンカップ(G1)優勝馬トワイライトペイメントが出発前に一連の義務的検査と精密検査を受けているのを見て、2頭を遠征させるという決断に疑問を持ったことを明らかにした。

 オブライエン調教師は今年、強化された獣医学検査のプロトコルのために、メルボルンに馬を遠征させる欧州の数少ない調教師の1人となっている。そして2022年にふたたび管理馬に同じプロセスを通過させることはないだろうと語った。

 「幸いにも、私たちのところには優秀なスタッフと獣医師からなるチームがいて、事務所のチームが輸送作業をすべて管理してくれたので、なんとか乗り越えることができました。しかし本当に苦労しました。今後数年間で、私たちに対して毎年設定してきたプロトコルを彼らが見直してくれると思いたいです。豪州は世界トップレベルといえる競馬を運営していて、高額賞金と魅力あるレースを提供しています」。

 オブライエン調教師は父エイダン氏と同様に、義務化されたシンチグラフィ検査を特に問題視していると述べた。またステートオブレストは検疫に間に合うように義務的な精密検査を完了させるために、1週間に4回も鎮静剤を投与する必要があったと語った。

 これらの新たな措置は、RVとヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)による近年急増したメルボルンカップでの予後不良事故の調査結果を受け、今年から導入されたものである。

 オブライエン調教師はこう語った。「精密検査はそれほど悪いものではありませんが、馬は毎回鎮静剤を投与されなければなりません。またシンチグラフィ検査のために馬診療所で3日間過ごすことになり、そのあいだ日常的な運動ができなくなり、馴染んだ環境から離されてしまいます」。

 「ビッグレースを前にして、本当に悪夢のようです。たとえばステートオブレストはすべてのプロトコルを完了するために、1週間に4回も鎮静剤を投与しなければなりませんでした。前代未聞のことです」。

 オブライエン調教師は、ステートオブレストがマッキノンS(G1 フレミントン)に出走するか香港に向かうかは数日中に決定されるだろうと述べた。また、同じくウェリビーに滞在する昨年のメルボルンカップ優勝馬トワイライトペイメントは、11月2日(火)に行われる総賞金800万豪ドル(約6億8,000万円)のメルボルンカップ(フレミントン)に向けて順調であると語った。

 メルボルンカップの全出走馬への最終的な獣医検査は、主要スキャナーが作動しないために中断されている。ユーヴェットエクワインセンター(U-Vet Equine Centre)のCTスキャナーは週末のあいだ稼働を停止しており、まだ16頭が最終精密検査を待っている状態であり、早くても10月28日(木)まで稼働しないようだ。

 新型コロナ感染防止策の移動制限により国際輸送が遅れているため、必要な部品が間に合わないのではないかという懸念が残っている。

 RVの公正課のジェネラルマネージャーであるジェイミー・スティア氏は、今回の機械的異常は"残念であり失望している"と述べ、こう語った。

 「私たちはこの状況に対して実用的なアプローチを取っています。メルボルンカップの全出走馬は引き続き、ユーヴェットエクワインセンターで代替診断画像を用いて、強化された前例のない獣医検査を受けます。そうすると11月2日(火)のレースへの出走が許可されます」。

By James Tzaferis/racing.com

(1豪ドル=約85円)

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