海外競馬ニュース 2021年02月04日 - No.4 - 1
オーセンティック、2020年の年度代表馬と最優秀3歳牡馬に選出(アメリカ)[その他]

 北米で最も権威あるレースとアメリカ大陸の最高賞金レースを制したことで、オーセンティックは北米競馬界最高の栄誉を手堅く獲得した。

 オーセンティックは前例のない日程変更が行われた競馬シーズンにおいて、ケンタッキーダービー(G1)と古馬相手のBCクラシック(G1)の両方で先行して記憶に残る勝利を収めた。それにより、2020年の年度代表馬と最優秀3歳牡馬に選出される名誉を手に入れた。

 ケンタッキーダービー馬がBCクラシックを制したのは、2015年の三冠馬アメリカンファラオ以来である。同じく年度代表馬に選ばれたアメリカンファラオもオーセンティックもボブ・バファート調教師に手掛けられた。

 オーセンティックの功績により、いずれも殿堂入りを果たしているバファート調教師とジョン・ベラスケス騎手はそれぞれの部門の最終候補にまで残った。また、同馬の共同馬主であるスペンドスリフトファーム、マイレースホースステーブル、マダケットステーブルズ、スターライトレーシングも最優秀馬主部門の最終候補となった。

 オーセンティックはサンフェリペS(G2 3月7日 サンタアニタ)で圧勝し、デビューから3戦3勝を達成した。そのときに、オーセンティックの父でリーディングサイアーのイントゥミスチーフを供用するスペンドスリフトファームが同馬の所有権の過半数を購買し、この共同馬主グループは形成された。マダケットステーブルとスターライトレーシングは所有権を維持し、マイレースホースステーブルは所有権の12.5%を有した。同馬は当初、SFレーシング、ジョン・フィールディング氏、フレッド・ハートリッチ3世、ゴルコンダステーブルズにも所有されていた。

 オーセンティックはピーター・E・ブラム・サラブレッズ社(ケンタッキー州)により生産された。母はフローレス(Flawless 父ミスターグリーリー)。2018年キーンランド9月1歳セールにおいて、SFブラッドストック社とスターライト・ウエスト社により35万ドル(約3,675万円)で購買された。ピーター・E・ブラム氏はオーセンティックの功績により2020年の最優秀生産者の最終候補にまで残った。

 オーセンティックのケンタッキーダービー優勝により、一口馬主運営会社マイレースホースステーブルは一躍有名になり、同馬の株を最小単位で持つ5,000人の会員は2020年の北米最高賞金獲得馬の所有権を持っていることを自慢できた。

 マイレースホースステーブルの創設者マイケル・ベーレンス(Michael Behrens)氏はこう語った。「この馬を介してこれほどの注目を浴びるようになったのはとても幸運な事で、本当に信じられません。一口馬主のプラットフォームの目標として、これほど素晴らしいシナリオを書くことはできなかったでしょう。"シュール(超現実的)"というのがぴったりな言葉かもしれません」。

 バファート調教師にとってオーセンティックは、2001年の二冠馬ポイントギヴン、2015年の三冠馬アメリカンファラオ、2018年の三冠馬ジャスティファイに次ぐ4頭目の年度代表馬である。また、これらの年度代表馬に加え、シルバーチャーム(1997年)、リアルクワイエット(1998年)、ウォーエンブレム(2002年)、ルッキンアットラッキー(2010年)、アロゲート(2016年)、ウエストコースト(2017年)に次ぐ10頭目の最優秀3歳牡馬である。

 バファート調教師はブリーダーズカップ開催において、2020年に馬を出走させることができてただ感謝していると述べた。そして新型コロナウイルスの感染拡大のために競馬が続行できないのではいかという深刻な懸念を抱いていたと語った。

 「世界中でさまざまなことが起こり、最悪なことに命を失う人々もいました。とても考えてもみなかったような事態です。これはただの競馬なのかもしれません。それでもどうにか再開することができました。そして今はただ競馬ができることに感謝しています」。

 その上、バファート厩舎の層が厚い3歳馬は、ケンタッキーダービーが従来の5月の第1土曜日から9月第1土曜日に日程変更されたことで試練を受けた。5月2日に日程変更されて2分割で施行されたアーカンソーダービー(G1 オークローン)を制した2頭の管理馬ナダルとシャーラタンは、いずれも怪我のために9月のケンタッキーダービーに出走できなかった。

 競馬日程が再編されたことで、バファート調教師はオーセンティックに3ヵ月間の休養を取らせることになった。サンフィリペSの次の出走は、6月6日のサンタアニタダービー(G1 サンタアニタ)まで待たなければならず、同馬はそのレースでオナーエーピーの2着に敗れた。

 オーセンティックは、そうした試練を乗り越えて進歩を遂げ、ハスケルS(G1)を制し、ケンタッキーダービーで劇的な勝利を挙げた。プリークネスSでは直線で牝馬スイススカイダイバーと記憶に残る叩き合いを繰り広げ僅差の2着となり、続くBCクラシックでは威圧するような素晴らしいパフォーマンスを見せた。オーセンティックはBCクラシックの序盤から優位に立つと、道中のどの地点においても明白なリードを維持し、2¼馬身差の勝利を収めた。勝ち時計は1分59秒60のコースレコード。

 その勝利により、オーセンティックは約2000mでの成績を2戦2勝とした。同馬は競走を引退し、父イントゥミスチーフのいるスペンドスリフトファームで供用される。不思議なことだが、オーセンティックが競走生活において1番人気に支持されなかったのは、ケンタッキーダービーとBCクラシックの2レースだけだった。

 バファート調教師は、ティズザローを負かすという殊勲、負傷した助手に対する懸念、2020年の全体的な試練によって、ダービー優勝はとりわけ感動的なものになったと語った。再編された競馬日程においてフロリダダービー(G1)、ベルモントS(G1)、トラヴァーズS(G1)を制してケンタッキーダービーに臨んだティズザローに対して、バファート調教師は一目置いていた。ケンタッキーダービーの約20分前に、パドックでサウザンドワーズ(Thousand Words)が暴れたためにバファート厩舎の長年の助手ジミー・バーンズ氏が転倒し、手を骨折していた。なお同馬はダービーからの除外を余儀なくされた。

 バファート調教師はこう述べた。「2020年ケンタッキーダービーを制したときはまるでダービー初優勝のときのような感動がこみ上げました。通常、ダービーで優勝したときには安堵感を覚えます。アメリカンファラオやジャスティファイでダービーに挑むと、勝つことを期待されます。"ふー、終わって良かった"というような気持ちです。2020年は本当に有難さを感じました。仕事があり、ひきつづき働き、スタッフを雇い続けられることがどれほどラッキーだったかを実感しました。それは目まぐるしい感情の変化でした」。

 オーセンティックで、ベラスケス騎手はケンタッキーダービー3勝目、BCクラシック初優勝を達成した(ブリーダーズカップ開催全体では18勝目となり、全ての騎手の中で第2位となっている)。

 オーセンティックは、2年連続でリーディングサイアーとなった父イントゥミスチーフにクラシック競走初優勝をプレゼントした。

 年度代表馬の部門で最終候補まで残った他の馬は、4戦4勝のシーズンをBCディスタフ(G1)優勝で締め括った最優秀ダート牝馬のモノモイガール、ホイットニーS(G1)での勝利などG1・3連勝を果たしBCクラシックで2着となった最優秀ダート牡馬のインプロバブルである。また最優秀3歳牡馬の部門で最終候補まで残ったのは、ティズザローとナダルである。

2020年エクリプス賞受賞馬/受賞者

年度代表馬:オーセンティック(3歳)

最優秀2歳牡馬:エッセンシャルクオリティ

最優秀2歳牝馬:ヴェキスト

最優秀3歳牡馬:オーセンティック

最優秀3歳牝馬:スイススカイダイバー

最優秀ダート牡馬:インプロバブル(4歳)

最優秀ダート牝馬:モノモイガール(5歳)

最優秀短距離牡馬:ウィットモア(7歳)

最優秀短距離牝馬:ガミーン(3歳)

最優秀芝牡馬:チャンネルメイカー(6歳)

最優秀芝牝馬:ラッシングフォール(5歳)

最優秀障害馬:モスカート (9歳)

最優秀馬主:ゴドルフィン

最優秀生産者:ウィンスターファーム

最優秀騎手:イラッド・オルティス氏

最優秀見習騎手:アレクサンダー・クリスピン 氏

最優秀調教師:ブラッド・コックス氏

By Frank Angst

(1ドル=約105円)

[bloodhorse.com 2021年1月28日「Authentic Takes Horse of the Year, 3YO Male Honors」]