海外競馬ニュース 2021年09月22日 - No.35 - 4
ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー、バファート調教師を除外(アメリカ)[開催・運営]

 2021-22年ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービーは9月18日に開始されるが、"ラン・フォー・ザ・ローゼズ"の最多勝調教師の管理馬はこのシリーズでケンタッキーダービー(G1)の出走権を得るためのポイントを獲得する資格がないと、チャーチルダウンズ社(CDI)は9月10日に発表した。

 CDIは、2022年ケンタッキーダービーへの出走停止処分が科されている調教師によって管理された馬にはポイントを与えない。これは9月20日に発効する新ルールである。現役調教師の中でこの記述に当てはまるのは、殿堂入りトレーナーのボブ・バファート調教師だけだ。CDIは同調教師に対し、歴史あるチャーチルダウンズ競馬場(ケンタッキー州ルイビル)における6月2日から2023年春開催までの出走停止処分を科している。

 2021年ケンタッキーダービーで1位入線したメディーナスピリットがコルチコステロイドであるベタメタゾンの陽性反応を示したことをうけ、CDIは同レースを7勝したことになるバファート氏に対して処分を下した。ベタメタゾンは、ケンタッキー州で競走当日の使用が禁止されている治療薬である。

 CDIは9月10日付のリリースで、雇い主である調教師が出走停止処分を受けているときに調教助手が自らの名義で馬を出走させる行為をした場合、それは馬の競走成績に記載されないことを明白にした。またリリースには、「ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービーのポイントは、2022年ケンタッキーダービーへ馬を出走させることを停止された調教師や、その調教師により直接的あるいは間接的に雇用・監督・助言された調教師が管理した馬には付与されない。ポイントを獲得できる着順で入線した場合でも、そのポイントは無効となる」と記されている。

 バファート氏が手掛ける将来有望な若馬を所有する数人の有力馬主は、この発表がされた9月10日、コメントを控えたか、あるいは電話に出なかった。それはSFブラッドストックのトム・ライアン氏、スターライトステーブルのジャック・ウルフ氏、ソル・クミン氏、ゲイリー・ウエスト氏などである。

 バファート氏を担当するクラーク・ブルースター弁護士は、CDIの措置は馬主たちに"経済的にバファート氏と手を切ることを強い、財政的にバファート氏を壊滅させること意図している。それが真の目的だ"と述べている。

 そして、「それは法制度上、好意的に見られるものではない」と続けた。

 またブルースター弁護士は、CDIは"ボブ・バファート氏あるいはメディーナスピリットの関係者、または私と一度も会話をしたことすらない"と示唆した。

 ケンタッキー州競馬委員会(KHRC)によるメディーナスピリットに関する審問も、この牡馬の分割サンプルのフォローアップ検査が継続しているために実施されていない。

 同弁護士は、「その検査の完了を待たずに、誰が一体結論を急ごうというのでしょうか?」と問いかけた。

 さらにCDIの発表の表現にも疑問を呈し、バファート調教師が競馬統括機関からは出走停止処分を受けていないことを指摘した。

 そしてCDIの措置について、「出走停止処分に言及するとき、それは馬主のことを指します。バファート氏を追放したいのかもしれません」と述べた。

 バファート氏に残された選択肢は、法的な異議申立てなのかもしれない。それはちょうど、NYRA(ニューヨーク競馬協会)がバファート氏に出走停止処分を科したことをうけ、弁護士たちがニューヨークで提起して、この夏サラトガ競馬場で同氏の管理馬を出走させる道を開いた訴訟のようなものである。

 2013年から始まったロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービーは、20頭立てのケンタッキーダービーの優先出走権を決定するシリーズであり、対象レースの上位4頭にスライド制のポイントが与えられる。来年の第148回ケンタッキーダービー(約2000m)は5月7日にチャーチルダウンズ競馬場で開催される。1975年以降、出走頭数は20頭に限定されている。

 今年と同様に、2022年ケンタッキーダービーでフロセミド(別名ラシックス)の使用は認められない。ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービーでは、競走当日にラシックスを使用せずに出走した馬にのみポイントが付与される。

 ケンタッキーオークス(G1)への出場権のために牝馬にポイントを付与するロード・トゥ・ザ・ケンタッキーオークスにも同じルールが適用される。

 またCDIは、ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービーあるいはロード・トゥ・ザ・ケンタッキーオークスの出走馬関係者が規制機関により薬物ルール違反で通知を受けていて、その違反が失格という結果になる場合、対象レースで獲得したポイントはその問題が法的に解決するまで無効になると発表した。ケンタッキーダービーあるいはケンタッキーオークスが開催される前にその問題が法的に解決された場合、ポイントは復活する。

 ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービーの対象レースは1つ増えて37レースとなる。12月26日にフェアグラウンズ競馬場で施行される総賞金10万ドル(約1,100万円)の第1回ガンランナーS(約1700m 2歳限定)がプレップシーズンに追加された。プレップシーズンは9月半ばから2月半ばにかけて施行される1マイル以上のレースを対象としている。

 ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーオークスの対象レースも1つ増えて32レースとなる。ガンランナーSと同日にフェアグラウンズ競馬場で施行される総賞金10万ドル(約1,100万円)のアンテーパブルS (約1673m 2歳牝馬限定)がこのシリーズに追加される。フェアグラウンズ競馬場はCDIにより所有されている。

 総賞金30万ドル(約3,300万円)のイロコイS(G3 約1700m 2歳限定)は、チャーチルダウンズの9月開催(全12日)の最初の週末、9月18日の日没後のダウンズ開催(Downs After Dark)の一環として照明のもとで施行される。このレースはふたたびプレップシーズン(全21レース)の最初のレースとなる。プレップシーズンでは上位4頭にそれぞれ[10-4-2-1]のポイントが付与される。ただし、BCジュベナイル(G1 11月5日 デルマー)ではその倍となるポイント[20-8-4-2]が付与される。
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 チャンピオンシップシリーズ(全16レース)は、3歳馬の勢力図をより鮮明にする飛躍のきっかけとなるレースで構成されている。
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海外のロード・シリーズに変更なし

 ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービーに加えて、欧州と日本から遠征するかもしれない馬のためにそれぞれ1つずつスポットを割り当てる2つのシリーズがある。

 6年目のジャパン・ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービーは、ふたたび次の4レースが対象となる。
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 6年目のヨーロピアン・ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービーは、ふたたび次の7レースが対象となる。

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By Claire Crosby and Byron King

(1ドル=約110円)

[bloodhorse.com 2021年9月10日「Road to Derby Set, Baffert Horses Ineligible for Points」]