海外競馬ニュース 2021年09月02日 - No.32 - 4
イントゥミスチーフの超高額の半妹、調教中の怪我で予後不良(アメリカ)[生産]

 3歳牝馬アメリカズジョイ(America's Joy)は、2019年キーンランド9月1歳セールでマンディ・ポープ氏のウィスパーヒルファームにより820万ドル(約9億200万円)という記録的な価格で落札されていたが、8月29日(日)、サラトガ競馬場で調教中に致命的な怪我を負った。

 米国三冠馬アメリカンファラオを父とし、2016年の年度代表繁殖牝馬レスリーズレディ(Leslie's Lady)を母とするアメリカズジョイは、9月のデビュー戦に向けてトッド・プレッチャー調教師のもとで調教を積んでいた。

 とても悲惨なことに、アメリカズジョイは種子骨骨折を発症し、軽く走った後に転倒して首を骨折したと、ニューヨーク州ゲーミング委員会(NYSGC)の馬事故データベースに記されている。

 プレッチャー調教師はデイリーレーシングフォーム紙にこう語った。「きわめて不幸なことです。とても才能があり、そばにいると本当に愛らしい馬でした。私たちの厩舎にそれほど長くいたわけではありませんが、順調に調教を積んでいたので、開催最終日(9月6日)のデビューを楽しみにしていました。ひどく残念なことです」。

 プレッチャー調教師はマンディ・ポープ氏との会話にふれ、「彼女は所有している馬を愛していて、ひどく悲しんでいます。それでも予想していたよりも粛々と受け止めてくださいました」と述べた。

 アメリカズジョイはクラークランドファーム(ケンタッキー)により生産され、キーンランド9月1歳セールに上場され、このセールの最高価格牝馬となった。

 ステークス勝馬レスリーズレディ(父トリッキークリーク)はオリエンテートの仔を受胎しているときに、ジェームス・T・ハインズJr.氏の遺産の一部として2006年キーンランド11月繁殖セールに上場され、クラークランドファームにより10万ドル(約1,100万円)で購買された。

 同年に、レスリーズレディが2005年に出産して当時1歳だったイントゥミスチーフ(父ハーランズホリデー)がファシグ・ティプトン社ケンタッキー秋1歳セールに上場されたばかりだった。

 イントゥミスチーフはゲージヒルステーブル(Gage Hill Stable)により8万ドル(約880万円)で購買された。そして翌年、オカラブリーダーズセールズ社(OBS)3月2歳トレーニングセールに上場され、スペンドスリフトファームの故B・ウェイン・ヒューズ氏により18万ドル(約1,980万円)で購買された。

 この牡馬は2歳のときにハリウッドプレビューS(G3)で2着となったあと、キャッシュコールフューチュリティ(G1)を制した。3歳のときにはダマスカスS(L)を制覇し、サンビセンテS(G2)とマリブS(G1)でそれぞれ2着となった。

 しかし最盛期はまだ訪れていなかった。2009年に種牡馬入りしたイントゥミスチーフは驚くべき存在となったのだ。2019年と2020年に北米のリーディングサイアーとなり、2020年については1シーズンあたりの産駒獲得賞金記録を塗り替え、歴代種牡馬の中で初めて2,000万ドル(約22億円)を超えることになった。

 またクラークランドファームは2010年、レスリーズレディからエクリプス賞を4回受賞したビホルダー(父へニーヒューズ)を生産した。ビホルダーは2011年キーンランド9月セールに上場され、スペンドスリフトファームにより18万ドル(約1,980万円)で購買された。そして半兄イントゥミスチーフと同じくリチャード・マンデラ調教師により管理された。

 レスリーズレディはメンデルスゾーン(父スキャットダディ)も送り出した。この馬は、エイダン・オブライエン調教師のもとでBCジュベナイルターフ(G1)を制し、UAEダービー(G2)を18½馬身という驚異的な着差で制した。現在は種牡馬となり、クールモアのアシュフォードスタッド(ケンタッキー)で供用されている。

By Lauren Gash of Bloodhorse & Andrew Scutts

(1ドル=約110円)

[Racing Post 2021年8月30日「'That was a tough one' - Pletcher on death of $8.2 million record-breaking filly」]