海外競馬ニュース 2021年07月15日 - No.26 - 2
マーフィー騎手、ドラゴンシンボルを購買した経緯を語る(イギリス)[生産]

 リーディングジョッキーのオイシン・マーフィー騎手は、ただビッグレースで勝利を挙げるだけでは飽き足らない。成長株のスプリンター、ドラゴンシンボル(Dragon Symbol)によって大々的に見せつけられたように、将来の優良馬を初期段階で見極める能力があるのだ。

 急成長しているこの3歳馬は、アーチー・ワトソン調教師により管理されている。マーフィー騎手は、ブリーズアップセールの名プレーヤーで、元トップ障害競走騎手のノーマン・ウィリアムソン氏から個人的にこの馬を"安くはない"非公開価格で購買したのだ。

 この牡駒は当初、生産者のホワイツベリーマナースタッドにより2019年タタソールズ10月1歳セール・ブック3に上場され、マーガレット・オトゥール氏とウィリアムソン氏のオークツリーファームがピンフック(転売)目的に6万7,000ギニー(約1,090万円)で購買した。

 ドラゴンシンボルは2020年タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセールに上場される予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大により2歳セールの日程が混乱したため、個人販売される見込みの多数の馬のリストに入ることになった。

 マーフィー騎手はドラゴンシンボルに初めて出会ったときの話をした。「毎年、ブリーズアップセールに上場される馬を見て回って騎乗しています。ロジャー・マーリー氏、マーク・ドワイヤー氏、ウィリー・ブラウン氏のところにはよく行きますし、昨年アイルランドに行ったときには、ノーマン・ウィリアムソン氏が親切にも数頭の馬に騎乗させてくれました」。

 「カタールレーシング、そして私が気に入った馬に興味をもってくれた人々のために馬を探しているあいだ、2日間で60頭のブリーズアップセール上場予定馬に騎乗したと思います。実際、同じ日の同じウッドチップコースでドラゴンシンボル、ザリアジェット(The Lir Jet)、トワイライトエア(Twilight Heir)に乗りました。このウッドチップコースのふもとでは、コンサイナーのロブソン・アギア氏が調教を行っています」。

 ドラゴンシンボルを馬なりで走らせたマーフィー騎手は、この牡駒を自らの手から逃してはならないと強く思った。そんなわけで、この若馬を購買するためにポケットに手を突っ込んだ。

 マーフィー騎手は、「どうしても彼を置き去りにすることができませんでした。乗ってみてとても気持ち良かったですし、とても速く疾走しました。ノーマンの調教場で彼を見たとき、その馬体にとても魅かれました。ノーマンは私に彼を薦めてくれました。決して安くはありませんでしたが、今では活躍していてとても良い成績を収めています」と語った。

 マーフィー騎手は雇用主カタールレーシングのためにアイルランドに馬を発掘しに来ていたが、ドラゴンシンボルの買い手を見つけるにはもう少し遠くまで探さなければならなかった。そして最終的には、日本を拠点とする窪田芳郎氏がこの牡駒のオーナーとなった。

 「誰にも頼まれずに買ったので、数人に薦めてみました。しかし彼の血統はそれほど優れてはいないと言っていいでしょう。そこで窪田さんに声を掛けたところ、ありがたいことに進んで彼を買ってくれたのです。残念ながら、彼はちょっとした不具合を抱えていて、アーチーは彼を我慢づよく管理しなければなりませんでしたが、今年は本当によく頑張っています」とマーフィー騎手は語った。

 ドラゴンシンボルは3月にやっとデビューし、短い期間ですでに大きな成長を遂げた。

 これまで6戦4勝の成績を挙げている。2敗は、強豪相手に戦った重馬場のサンディレーンS(G2)でロハーン(Rohaan)に頭差で敗れたときと、コモンウェルスカップ(G1)でゴール板を先頭で駆け抜け1位入線したもののいくらか物議を醸した審議のあとにカンパネッレと着順が逆転したときに喫したものだ。

 それでもマーフィー騎手は、成長中のドラゴンシンボル(父ケーブルベイ)がおそらくジュライカップ(G1 7月10日)で報われることを確信している。同馬はそこでオッズ7倍の2番人気に推されている。マーフィー騎手はドラゴンシンボルのさらなる成功により、日本人が英国で行われるレースにより深く関心を抱くようになることにも期待している(訳注:ドラゴンシンボルはジュライカップでスターマンの2着となった)。

 「このまま順調に成長してくれることをひたすら願っています。速い馬場であれば、より有利な状態で走る姿を見られると思います。素晴らしい気性で美しい馬体をしているので、扱いやすい優良馬と言えます」。

 「また、日本の人々が英国競馬に興味を持ってくれることは素晴らしいことだと思います。彼について日本語でツイートしたところ11万件もの反応がありました。すごいことです。窪田さんが英国の調教馬をもっと購買してくれることを期待していますし、コロナが落ち着いて窪田さんがこの馬の走りを見るためにここにいらっしゃれば最高ですね」。

 マーフィー騎手はドラゴンシンボルでの成功にもかかわらず、すぐに本業を辞める計画は一切ないようであり、こう語った。

 「私はエージェント(馬売買仲介者)ではありません。血統は大好きですが、専門家ではなく、馬が立ち上がり4本の脚と尻尾を持っているのを見るのがただ好きなのです」。

 「でも、彼らの馬に実際に騎乗することができるのは大きな利点です。こられの馬に出会わせてくれ十分に乗らせてくれた厩舎の人々には感謝してもしきれません。私にそのようなチャンスを認めてくれたことに敬意を表します」。

 マーフィー騎手が関わったサラブレッド取引はドラゴンシンボルの発掘と販売にかぎらない。レースでコンビを組んで勝利を達成し、現在は牧場で供用されている馬の1シーズンあたりの種付権利の取引も行っている。それは、供用1年目の種牡馬であるアクレイムやトゥウィーンヒルズスタッドで供用されるカメコとライトニングスピアなどである。

 マーフィー騎手はこう付言した。「ファハド殿下とデヴィッド・レッドヴァース氏が毎年私に種付権利をくれるのはとても幸運なことですが、私自身は使ったことがありません。実際はハリー・ピーター⁻ホブリン氏が私のために種付権利を販売してくれます。また、残念なことに死んでしまったロアリングライオンの種付権利も持っていました。彼は生前バティール(Bateel)に種付けしたので、彼女の牝馬[現在1歳。馬名はラボンバス(La Bombasse)]がどのようになるのか、とても楽しみです」。

By James Thomas

(1ポンド=約155円)

[Racing Post 2021年7月3日「'He wasn't cheap!' - how Oisin Murphy came to buy star sprinter Dragon Symbol」]