海外競馬ニュース 2021年06月24日 - No.23 - 4
NTRAの理事長兼CEOウォルドロップ氏が2021年末で退任(アメリカ)[開催・運営]

 NTRA(全米サラブレッド競馬協会)は6月16日のリリースで、15年間にわたりNTRAの舵取りを行ってきた理事長兼CEOのアレックス・ウォルドロップ氏が2021年末に退任することを発表した。

 ウォルドロップ氏は競馬産業で卓越したキャリアを築いてきた。チャーチルダウンズ競馬場の会長を務めた後、ケンタッキー州を拠点とする法律事務所ワイアット・タラント&コームズの馬事・ゲーム・エンターテインメント実施グループの議長となり、そこでNTRAの相談役を務めた。そしてNTRAに入り、現職の理事長兼CEOを常勤で務めてきた。

 ウォルドロップ氏がNTRAに在任する期間、NTRAはメンバーの会費徴収を主眼とする組織からプログラムを主眼とする自立した組織へと移行した。現在ではNTRAの収入の90%以上は、競馬産業を支援するプログラムからもたらされている。

 ウォルドロップ氏のリーダーシップの下、NTRAはワシントンD.C.での実績を拡大し、米国連邦議会でのサラブレッド産業のすべての部門を代表する団体、そして産業を主導する発言者としての地位を固めた。またサラブレッド産業の業界団体として立法のためのロビー活動に重点を置いてきた。NTRAメンバーは競馬・生産・パリミューチュエル賭事に関わっているので、そのロビー活動はNTRAメンバーと彼らの事業活動に直接かつ重大な影響を与えた。

 ウォルドロップ氏はこう語った。「年末で退任することを決めたのは、NTRAが現在財政的に強く、サラブレッド競馬に影響する重要な問題を主導するうえで戦略的に良い位置にいると認識していたからです。新たなリーダーが手綱を取り、NTRAを新しくエキサイティングな方向に導くのに、ちょうど今が適した時期です。NTRAの同僚と会えなくなるのはとても寂しいですが、彼らはこれからの課題に取り組む準備ができていると確信しています。また、NTRA理事会がこの転換期に組織を導いてくれることを大いに信頼しています」。

 NTRAは2020年のほとんどの時期を通じて、連邦議員たちが新型コロナウイルス感染拡大からの救済に関連した数多くの重要な経済刺激法案を作成する中で、競馬産業が取り残されないようにするために取り組んだ。また、この2年間のNTRAのもう1つの大きな焦点は、2020年12月に法制化された競馬の公正確保と安全に関する法律(HISA)の最終的な成立だった。NTRAはHISAを支持するうえでの共通認識を形成するために、NTRA理事会の競馬産業のさまざまな部門の代表者をまとめることで重要な役割を果たした。

 馬券購入者との相互支援の関係を通じて、ウォルドロップ氏はNTRAでの任期中の最大のハイライトとして、2017年、米国財務省による高額配当の的中馬券に関する源泉徴収と申告に関する近代的なルールの正式導入を実現した。この新たなルールは、NTRAが連邦議会で10年近くかけて行ってきた取組みの集大成であり、一夜にして馬券購入者の申告義務が劇的に軽減され、的中馬券の払戻金の源泉徴収が実質的に廃止されたことで、馬券購入者は配当金をより多く確保できるようになり、パリミューチュエル賭事の発売金の増加につながった。

 ウォルドロップ氏は、NTRAの連邦政治活動委員会であるNTRA ホースPACの会長も務めている。NTRAホースPACは連邦レベルの政党や公選職の候補者を支援するため、任意の資金提供により500万ドル(約5億5,000万円)以上を集めている。

 ウォルドロップ氏とNTRAは2008年、業界全体の取組みを主導して、まったく新しいプログラムであり自主規制機関であるNTRA安全・公正に関する同盟を設立した。この同盟 は10年以上にわたり、米国の主要競馬場の多くで全米安全・公正基準を統一して実施してきた。また設立以来、薬物・検査方針の改善、故障の報告・予防のためのガイドライン、安全調査、より安全な競走環境の提供、引退競走馬のケアなどの分野で先導的な改革を支援してきた。

 ブリーダーズカップ協会(BCL)の会長兼CEOでNTRA理事のドリュー・フレミング氏はこう語った。「BCLを代表して、NTRAとサラブレッド産業全体に対する長年にわたるアレックスの献身に感謝したいと思います。これにはNTRA安全・公正に関する同盟を通じた馬の安全に対するコミットメントやHISAへの支持も含まれています」。

 ウォルドロップ氏の任期中、NTRA全米ホースプレイヤーズチャンピオンシップは50万ドル(約5,500万円)強の賞金を提供するイベントから今や総額400万ドル(約4億4,000万円)近くの賞金を提供するイベントへと成長した。

 団体購買部門であるNTRAアドバンテージ(NTRA Advantage)はウォルドロップ氏の任期中に比類なき成功を収めた。NTRAアドバンテージの2019年の馬産業における購買は10億ドル(約1,100億円)を上回り、業界参加者に約2億ドル(約220億円)の蓄えをもたらした。長年にわたりNTRAアドバンテージのパートナー企業であるジョンディア社(John Deere)は、チャーチルダウンズ社やBCL、そしてアドバンテージプログラムへの支援を通じて、最も長期にわたる競馬産業のスポンサーの1 つである。

 デルマーサラブレッドクラブの会長で NTRA理事であるジョシュ・ルービンシュタイン氏はこう語った。「デルマーはアレックスのリーダーシップの下、競馬産業のあらゆる部門にとって不可欠なNTRAのすべての主要プログラムを長年にわたって支援してきました。それはNTRA安全・公正に関する同盟、NTRAアドバンテージ、全米ホースプレイヤーズチャンピオンシップ、そしてNTRAのワシントンにおける連邦立法活動などです。これらのプログラムは持続的な成長を実現しつつ、デルマーのようなメンバーに継続的な価値を提供しています」。

 ウォルドロップ氏はそのキャリアの初期において、チャーチルダウンズ競馬場の会長として歴史あるこの競馬場の改修のためのマスタープラン策定を主導した。それは総工費1億2,600万ドル(約138億6,000万円)の施設の近代化につながり、現在も続行されている同競馬場への将来的な設備投資への道をひらいた。

 NTRA理事会は正式な移行プロセスを開始し、ウォルドロップ氏の後継者探しを行っている。

By Blood-Horse Staff

(1ドル=約110円)

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[bloodhorse.com 2021年6月16日「Waldrop to Retire as NTRA President, CEO at End of 2021」]