海外競馬ニュース 2021年06月17日 - No.22 - 1
デットーリ騎手、クイーンアンSを制したパレスピアを大絶賛(イギリス)[その他]

 サッカーの国際大会でペナルティキック(PK)の話が出ると、そのナショナルチームのファンは不安になるものだが、クイーンアンS(G1 ロイヤルアスコット開催)でパレスピアにPKが与えられるような状況になったとき、フランキー・デットーリ騎手にそのような不安は一切なかった。

 ロイヤルアスコット開催週の最初のレースで単勝1倍台の本命馬に乗るという騎手が自信を強くもつのが難しいようなとき、デットーリ騎手は勝ちスタートを決める絶好のチャンスを台無しにしてはならないという絶対的な信念を持っていた。

 デットーリ騎手は「パレスピアは頼りにできます。まるで最初のPKを適切な選手に蹴らせて、彼がそれをゴールネットに蹴り込むようなものです」と述べるが、彼の第二の故郷のナショナルチームにあのようなことが起こるのは長い間なかった話だと、おそらく少々残念に思っているようだった。

 「これで状況がずっと良くなります。今週多くの素晴らしい騎乗機会をもらっている中、プレッシャーが軽減されたのですから。彼は見た目が標本のように美しく、このようなレースでは最高のパートナーとなります。彼はすべての称賛を受けるべきですね」とデットーリ騎手は語った。

 レースが近づくにつれて、パレスピアには多くの称賛が送られていた。それは今シーズンの2戦で、今回のアスコットの良馬場よりも柔らかくて走りやすい馬場状態で圧倒的な強さを見せていたからだ。

 実際、現在進行中の新型コロナウイルス感染拡大の影響で王室行列が中止されたため、単勝1.29倍のパレスピアが"ロイヤルアスコット開催の君主"を背に神聖なターフに早く登場したことは、王室の馬車の代わりとしてはふさわしかっただろう。

 結局のところ、レースは王室行列ではなく、キックオフに間に合うように帰宅できるようにすることがより重要となった。パレスピアはまったく危なげなかったようだ。ただし、楽々と疾走するのではなく、レースの主導権をとるためにいらいらしていたようだった。デットーリ騎手が抜け出し、パレスピアはロペイフェルナンデス、サーバスカーを破って優勝した。この勝利により、パディパワー社とベットフェアスポーツブック社は7月のサセックスS(G1)でのパレスピアのオッズを3倍から1.8倍に引き下げて本命馬に推した。

 デットーリ騎手は決勝線を越えたときに陽気に浮かれ、ウィナーズエンクロージャーで空中に舞い、多くの観客が自らの姿を一目見るために戻ってきたことを喜んだ。彼は今回の勝利でクイーンアンSの7勝目を達成した。1勝目は1990年にマークオブディスティンクションで成し遂げ、それは彼にとってロイヤルアスコット開催での最初の足掛かりとなった。

 50歳のデットーリ騎手はこう語った。「31年前にクイーンアンSを制してロイヤルアスコット開催で初勝利を挙げたときのことをただ思い出しています。それから多くのことが起こりましたが、今でも同じようなスリルを感じていますし、スムーズに行って本当にホッとしています。彼は世界で最も優れた馬の1頭なので、すべてがうまくいくことを望んでいましたが、それが実現しました」。

 父ジョンと共同で調教活動を行うサディ・ゴスデン調教師はデットーリ騎手と同様に、クイーンアンSを制してロイヤルアスコット開催の初勝利を達成した。

 ジョン・ゴスデン調教師はこう語った。「クイーンアンSでは2着が3回ありましたが、サディのおかげで優勝することができました。このように大本命に推されていて神経質にならないほうがおかしいです。コーナーを回ったところにあるのは、つまずきの原因だけなのですから。しかし、フランキーはペースが上がらないことを知っていて、早めに動いて行ったのだと思います」。

 「パレスピアはとてもスムーズにやってのけました。順調に走って優勝しましたが、彼の父(キングマン)とまったく同じで、ゴールに到達した時点で十分なことをやってのけたことになるのです。それに彼をごく普通の馬と調教させれば、彼はただその馬について走るでしょう。それこそ彼のゲームなのです」。

 パレスピアが次にどこでゲームを楽しむかについては、話合いが必要である。ゴスデン親子はつぎのPKでどこにボールを置くのかについて決定する前に馬主のハムダン・ビン・モハメド殿下と話し合う予定である。それが1600mあるいは2000mになろうとも。

 ジョン・ゴスデン調教師はこう付言した。「彼はとてもリラックスしているように見えました。発走地点に行くまで、まるでレース翌日にやるように楽にキャンターをしていました。英インターナショナルS(G1)のようなレースで出走するかもしれませんし、サセックスSやジャックルマロワ賞(G1)かもしれません。馬主と話して進路を決定します。すべての選択肢が可能であり、距離を伸ばしても問題ないでしょう」。

By Peter Scargill 

[Racing Post 2021年6月15日「Palace Pier is one of the best horses in the world says Frankie Dettori」]