海外競馬ニュース 2021年06月10日 - No.21 - 4
スノーフォール、英オークスを16馬身差で圧勝(イギリス)[その他]

 英国クラシック競走の最多勝記録に並んだエイダン・オブライエン調教師と猛スピードで突き進んだフランキー・デットーリ騎手を見劣りさせるには、極めて特別なものが必要だ。しかし英オークス(G1)でこれほど驚異的な勝利がふたたび達成されるとすれば、本当に6月に雪が降る(スノーフォール)かもしれない。

 デットーリ騎手は優勝馬スノーフォール(父ディープインパクト)を最愛のエネイブルと比べるほどだった。またオブライエン調教師はこの牝馬を、昨年の英オークスを9馬身差で圧勝したラブと対戦させることを考えるかもしれないと述べた。スノーフォールは現在、そのラブに替わり凱旋門賞(G1)の1番人気(6倍)に浮上している。このパフォーマンスだけを見ても、現役最強の中距離馬であることがわかる。

 オブライエン調教師が185年間保持されてきたジョン・スコットの英国クラシック最多勝記録40勝に並び、デットーリ騎手がフレッド・アーチャーと並んで英国クラシック21勝目を挙げたことは付随的なこととなった。オークスでこのような着差での勝利が挙げられたことはかつてなかった。とてつもない牝馬である。

 デットーリ騎手はゴールを通過してからスノーフォールを止めるのに一番手こずったと述べ、"信じられない"という笑みを浮かべながらこう語った。「クラシックを何度も制してきましたが、これほどたやすかったことはありません。厩舎エリアでやっと止めることができたのですが、他の馬はゴールの付近で止まっていました。ものすごかったです」。

 「エネイブルはとても優秀で、英オークスを制した後、愛オークス(G1)・キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)・凱旋門賞でも優勝しました。スノーフォールはそんなことをやりかねません。それほどすごいのです」。

 デットーリ騎手の熱烈な賛辞はそれだけにとどまらず、オブライエン調教師はレース後にこの名手と二人きりで話して明らかに意表を突かれたようだった。

 「フランキーは道中ずっとローギアで走っていたと言い、すごく感激していました。スノーフォールはどの段階でもラクに走っていて、ひどい重馬場だったのですが、彼女に乗っていると良馬場のように感じられたそうです。だから言うまでもなく、とても優れた牝馬なのです」。

 「今年とても楽しみな牝馬ですね。愛オークスについて話していたら、フランキーは"彼女を古馬と対戦させることを恐れないで早めに挑んでください"と言いました」。

 オブライエン調教師はいつも自身のことよりも管理馬の素晴らしい偉業について話すことを好んでいる。デットーリ騎手も馬について話すことが嫌いではなく、ともかくオブライエンが手掛ける見事な牝馬について話したがった。レース直後に4,000人の観客の中でそれ以外のことを話題にしている人を見つけるのは至難の業だっただろう。それほどスノーフォールは人々の心を鷲掴みにしたのだ。

 デットーリ騎手は、「ものすごくスムーズでした。タッテナムコーナーを回っているときに、私は完全に抑え込まれていたのです」と述べた。50歳の彼は今シーズン7勝しか挙げていないもののこれがクラシック2勝目であり、1994年に初めて制した英国クラシック競走、オークスで通算6勝目を挙げた。

 「彼女は信じられないほど素晴らしかったです。もっといいポジションを取りたかったのですが、先行勢が1番手から3番手をめぐってかなりのスピードで競っていたので、ポジション争いはこれらの馬に任せてしまおうと思いました」。

 「残り4ハロン(約800m)の地点で一気に攻勢に転じました。前方を見ると他馬はかなり先に行ってしまっていたので、ゴーグルを下げて"行儀よくする必要はないんだ。真ん中を突っ切って行こう"と思いました。サンタバーバラだけが見当たらず、振り返って一瞥して5番手につけると、そこでスノーフォールが急発進しました」。

 オブライエン調教師がレース前に最も懸念していたことは、スノーフォールがどの地点で急発進するかであった。「彼女にはかなりのスピードがあるので、必ずしも1½マイル(約2400m)が得意だとは思っていませんでしたが、様子を見ていると彼女は"そんなことはないんだ"と分かっていたみたいです。距離を走れば走るほど、彼女はより見事な走りを見せます」。

 「去年はG1を勝つのにふさわしい馬だと思っていましたが、うまくいかないレースがいくつかありました。彼女は多くの経験を積み、たくさん出走し、冬のあいだに体力的にもとても改善されました。おそらく強くなったのかもしれませんね」。

 2歳のときに7戦したが、勝鞍は未勝利戦での1勝のみだった。今シーズンはミュージドラS(G3)でライバルを撃破し、オークスでも他馬を完膚なきまでに叩きのめした。2着馬との着差は16馬身にも広がり、最下位の馬を40馬身も引き離した。これは1983年にサンプリンセスが達成した12馬身差よりも大きく、英オークスの最大着差記録を更新した。

 2着に入ったのは、トレーナーズランキングで最近見るようになった1人、ジョージ・ボウヒー調教師が管理した単勝51倍のミステリーエンジェル(Mystery Angel)である。また、3着には今週支持を伸ばして単勝21倍となっていたオブライエン厩舎のディヴァインリー(Divinely)、4着には単勝41倍のセーブアフォレスト(Save A Forest)が入った。確かにこれらの馬は懸命に走ったが、レースは瓦解したというよりも粉々に吹き飛ばされてしまった。

 ライアン・ムーア騎手が手綱を取った単勝3.5倍の1番人気馬サンタバーバラは5着に終わった。オブライエン調教師は、「ライアンはサンタバーバラがラクにレースを始めたと言っていましたが、あの馬場では彼女は空になってしまいました。今後は競走距離を2000mに戻します。立派なレースをしました」。

 ちょうど2ヵ月前、エプソムは降雪に覆われていた。この特別な日に、エプソムの360年の歴史の中でわずかな馬しか成しえなかった方法で勝利をつかみ、スノーフォールはその魅力でエプソムを覆ってしまった。

By Stuart Riley

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