海外競馬ニュース 2021年05月20日 - No.18 - 2
英国平地競走の殿堂が誕生(イギリス)[開催・運営]

 英国平地競走における最高の功労馬・功労者に栄誉を授ける"競馬の殿堂(Hall of Fame)"がオンラインで創設され、ギニー競走開催週の初日である4月26日に発表されることになった。

 この殿堂の創設は、キプコ社が英国チャンピオンズシリーズ(British Champions Series:BCS)のスポンサーになってから10周年を記念して支援するもので、1970年から今日にいたるまでの期間における平地競馬界の「偉大な存在」にスポットを当てる。

 殿堂入りを果たすことは、"英国平地競馬界の最高の栄誉の1つ"と見なされ、英国の老舗ジュエリーブランドのアスプレイがデザインした特注メダルが贈呈される。

https://www.youtube.com/watch?v=ebHSUmoHupo

 新たな殿堂入りは年に2回、いずれもキプコ社がスポンサーを務める5月のギニー競走の開催週と10月の英チャンピオンズデーにおいて発表される。

 現在のところ、新たな殿堂入りは発表されていない。しかし、公開されたプロモーション動画には、ニジンスキー、シャーガー、ダンシングブレーヴ、ガリレオ、フランケルなどの有力候補のほか、レスター・ピゴット元騎手、ウィリー・カーソン元騎手、フランキー・デットーリ騎手、ヴィンセント・オブライエン調教師、サー・ヘンリー・セシル調教師、サー・ピーター・オサリバン、カリド・アブドゥラ殿下、そして女王の姿が映し出されていた。

 殿堂入りは、本紙(レーシングポスト紙)の主筆アラン・バーン氏を含む専門家からなる審査員団によって決定される。この審査員団には、キャスターのブラフ・スコット氏、リディア・ヒスロップ氏、ジェイミー・リンチ氏なども名を連ねる。

 審査員は次の4部門の殿堂入りを選出する。

(1) 馬

(2) 騎手

(3) 調教師

(4) 功労者(馬主、生産者、とりわけ半世紀にわたりBBCの競馬解説者を務めたサー・ピーター・オサリバンなどの著名人を含む競馬界に大きな貢献を果たした人)

 さらに毎年、審査員団が選んだ候補馬の中から1頭を殿堂入りさせるための一般投票も行われる。

 キプコ社の役員であり、10年間にわたり有力馬主であるファハド殿下はこう語った。

 「私と兄弟たちは、英国の平地競走とその豊かな歴史・遺産に情熱を注いでおり、それらは世界中の競馬国の羨望の的です。キプコ社英チャンピオンズシリーズ競馬の殿堂(Qipco British Champions Series Hall of Fame)の創設を発表することを嬉しく思います。この殿堂は、英国の平地競走のために行われた多大なる貢献を称え、最も偉大で重要なスターたちとその功績を祝うものです」。

 「初めて英国競馬に関わったとき、その豊かな歴史に魅了されました。この競馬の殿堂が、競馬界で最も重要な存在に光を当てることで、既存および新たなファンを魅了して楽しませることを願っています」。

 競馬の殿堂のウェブサイト(Horseracinghof.com)は現在、最初の殿堂入りの発表などの最新情報を提供するために、訪問者に登録を求めている。夏までには、英国平地競走の数々の最高の瞬間や、最高の成績を残した様々な馬および関係者に焦点を合わせたコンテンツが追加される予定。

 競馬の殿堂を創設する構想は何十年も前から議論されてきた。チェルトナム競馬場とエイントリー競馬場にはそれぞれ独自の殿堂があり、国立競馬博物館(ニューマーケット)も競馬の歴史に興味を持つファンにより注目されてきた。

 しかし、これまで統一された競馬の殿堂の創設に向けては資金を得られなかった。英国チャンピオンズシリーズ(BCS)のCEOロッド・ストリート氏はこのコンセプトの熱心な支持者として知られており、こう語った。

 「最も華やかな平地競走を披露するBCSは、競馬の殿堂を発表する舞台として完璧です。過去10年以上にわたり、キプコ社は英国競馬の献身的なパートナーです。キプコ社英チャンピオンズシリーズ競馬の殿堂への支援と、競馬の殿堂創設実現に向けてのサポートに感謝します」。

 「英国競馬は世界一であり、このワクワクするような新たな取組みを通じて、偉大な競走馬やホースマンを称えることができるのは喜ばしいことです」。

By Chris Cook

レスター・ピゴット氏とフランケルが最初の殿堂入りを果たす

 英国チャンピオンズシリーズ(BCS)は、新設の"競馬の殿堂"に最初のメンバーを迎え入れた。

 これらの最初の殿堂入りメンバーには記念のメダルが贈呈された。競馬の殿堂の創設は、最初はオンラインでのプロジェクトとなるが、いずれは現実の開催に発展させようと意気込んでいる。

 史上最多の英ダービー9勝を達成した騎手、レスター・ピゴット氏(85歳)はスイスの自宅でこの賞を受け取り、こう語った。

 「最初の騎手、そして最初の一人として殿堂入りすることは名誉なことであり、この特別なメダルを受け取ることを心から嬉しく思います」。

https://www.youtube.com/watch?v=PcF0S0A6HSs&t=2s

(映像:Racing TV、Sky Sports Racing)

 「信じられないほど素晴らしい馬に乗って、輝かしい年月を過ごせたことを幸運に思います。この競馬の殿堂を通じて、私の騎手人生がしっかりと保存されているのを目にして感動しています」。

 「競馬の殿堂はものすごくいいコンセプトであり、競馬には長年このような賞があってしかるべきでした。競馬には信じられないほど素晴らしい歴史があり、この競馬の殿堂が多くの人々がそれについて知る機会となることを願っています」。

 ピゴット氏は、「フランケルが殿堂入りする最初の馬となるのは当然のことです。彼はすべてを簡単にやってのけ、その世代において圧倒的な強さを誇っていました。彼は乗ってみたかった馬の1頭です」と付け足した。

 競馬の殿堂は近年の英国平地競走の発展の足跡を称賛するために考案され、その対象期間はピゴット氏がニジンスキーで三冠を達成した1970年にまでさかのぼる。1977年に国際レーティングが公式に発表されて以降、ダンシングブレーヴが最高レーティング141を保持しているが、BCSの象徴的な存在であるフランケルが殿堂入り1頭目となったのは当然のことかもしれない。フランケルはレーティングでは、アレッジドとシャーガーと同じ140を獲得し歴代2位となっている。

 フランケルは、故サー・ヘンリー・セシル調教師により見事に管理され、14戦14勝という完璧なキャリアを築いた。フランケルの殿堂入りは、サー・ヘンリーの妻であり、ウォレンプレイス(サー・ヘンリーの調教場)の後継者でもあるレディ・セシルによって喜びをもって受け入れられた。

 「ヘンリーはフランケルの殿堂入りを私と同じようにとても誇りに思っているでしょう。彼はフランケルがあれほど輝かしい競走生活を達成したのですから、これはふさわしい賛辞だと言うでしょう」。

 「この馬に関わることができて光栄でした。ウォレンプレイスの皆さんと一緒に、毎日のようにフランケルのそばにいることができて、とても楽しかったです。テディ・グリムソープ氏が"楽しむことを忘れないでください"と言っていたのをいつも思い出します。まさにそのとおり、私たちは楽しんできました」。

https://www.youtube.com/watch?v=f_KNTExC1bU

(映像:Racing TV、Sky Sports Racing)

By Scott Burton

 (関連記事)海外競馬ニュース 2014年No.22 「英国の"競馬の殿堂"が一年以内に実現の可能性(イギリス)

[Racing Post 2021年4月21日「Hall of Fame for British Flat racing to be launched next week」、4月26日「Lester Piggott and Frankel the first racing greats inducted into Hall of Fame」]