海外競馬ニュース 2021年04月01日 - No.12 - 4
ゼンデン、ドバイゴールデンシャヒーン優勝後に予後不良(ドバイ)[その他]

 総賞金150万ドル(約1億6,500万円)のドバイゴールデンシャヒーン(G1 3月27日 メイダン)で、勝利が一瞬にして悲劇に変わった。

 ゼンデン(馬主: LLPパフォーマンスホース)は1200mのこのレースで終始先頭に立ち、最後の直線でライバルを引き離してG1初勝利をつかむという素晴らしいパフォーマンスを見せた。走破タイムは1分9秒01のコースレコードとなった。

 しかし、ゼンデン(牡5歳 父フェドビズ)はゴール直後に異常をきたし、アントニオ・フレス騎手を振り落とした。同馬は明らかに左前脚に重傷を負っていた。カルロス・デヴィッド調教師は本誌(ブラッドホース誌)の取材に応じ、複雑骨折したゼンデンには数分後に安楽死措置が取られたことを認めた。

 デヴィッド調教師はフロリダの拠点からゼンデンのドバイ遠征に同行し、同馬は単勝51倍のG1初勝利をもたらした。

 同調教師は、「お祝いなどしようもありません。レースに勝てなくても馬が戻ってくる方が千倍マシです。安楽死措置が取られているあいだ、私は彼を抱きしめていました。別れを告げることはできましたが、彼の脚を治すことはできませんでした。どんなにお金があっても、どんなトロフィーがあっても、私の馬は戻ってこないのです」と語った。

 この予後不良事故と騎手の状態を最初に報じた国際的な放送局によると、フレス騎手は事故後に歩いてその場を離れ、怪我は無かったようだった。

 ゼンデンはペリカンS(L 2月13日 タンパベイダウンズ)を制して、初めてのG1競走となるゴールデンシャヒーンに出走していた。ドバイ遠征前にパームメドウズ調教センターで3ハロン(約600m)の追い切りを2回走っていた。3月6日のタイムは38秒1/5で、ペリカンSの1週間前である2月6日のタイムは37秒3/5だった。メイダンでも3月23日の追いきりの一環として3ハロン(約600m)を37秒1/5で通過した。

 デヴィッド調教師はこう続けた。「ゼンデンは調教で順調な様子だったので、私たちはとても興奮していました。彼はここを気に入っていましたし、誰もが彼がよく見えると言っていたので、すごくワクワクしていました。単勝51倍で人気薄もいいところでしたので、プレッシャーはありませんでした。でも馬は機嫌が良いときには、とてつもなく好走するものなのです」。

 ゼンデンは、13頭立ての大外13番ゲートからの発走という不利な条件だったが、序盤で素早く動いて内ラチ沿いの好位置を取り、すぐに優位に立ち、そのまま前進して3¼馬身差の勝利を収めた。2着にレッドルゼル、3着にキャンヴァストが入った。

 デヴィッド調教師は、馬主は解剖が行われるあいだドバイに残り、自身は土曜日の夜に米国に戻る予定だと述べた。

 コロンビア出身で現在は米国市民であるデヴィッド調教師は、2017年に調教師免許を取得した。そして2020年シーズンに延べ231頭を出走させ、3着内率52%、獲得賞金161万6,421ドル(約1億7,781万円)で、キャリア最高の成績を達成した。同調教師は、競馬殿堂入りトレーナーのビル・モット調教師のもと、ホットウォーカー(曳き馬手)や厩務員として競馬界でのキャリアを開始した。そしてストーナーサイドステーブルの調教施設(サウスカロライナ州エイケン)で乗馬を学び、攻馬手としてモット厩舎に戻ってきた。

 その後、セス・ベンゼル調教師の下で働いたのちに、ジェイソン・サーヴィス調教師の助手を5年間務めた。サーヴィス調教師は昨年3月、競走馬への使用を目的として不純物が混入され偽ラベルが貼付された競走能力向上薬の製造・流通・投与に関し共謀した罪、および郵便・通信での不正行為で共謀した罪により他の26人とともに連邦政府により起訴されている。

 粗さがしをする者たちはレース後に、SNSでデヴィッド調教師とサーヴィス調教師の関連性について言及した。

 デヴィッド調教師はこう語った。「彼と働いていたがために、不幸にもいつも嫌疑がかけられることは分かっています。すべてが起こるずっと前に彼の厩舎を辞めました。私のやり方を皆さんにじっくり説明するつもりもありません。コメントをしている人たちの多くは、私のことも私の厩舎のことも知りません。彼らはどうして馬の治療についてあれこれ言えるのでしょうか?ドバイではラシックスさえも使えないのに」。

 「私の仕事ぶりを見てきた人々は、私がどれだけ馬を愛しているかを知っています。馬は私にとって子どものようなものです。ゼンデンが故障した瞬間からずっと泣いていました。本当につらいです。調教師になってから、馬がレース中の故障で予後不良になってしまうことは一度だってありませんでした」。

 ブレント&ベス・ハリス夫妻(ケンタッキー州)に生産されたゼンデンは、母ユーラフィン(You Laughin 父シャープヒューマー)の第4仔である。ユーラフィンは3月8日にオーディブル牡駒を出産し、これまで7頭を送り出している。ゼンデンはセリに2回上場された。2017年キーンランド9月1歳セールにおいてサウスレガシーステーブルにより7,500ドル(約83万円)で購買され、OBSの2018年6月2歳&競走馬セールにおいてVEBレーシングステーブル社により4万7,000ドル(約517万円)で購買された。同馬の競走成績は15戦6勝(2着3回)、獲得賞金は131万1,760ドル(約1億2,449万円)。

 デヴィッド調教師はこう付言した。「メイダンがゼンデンの偉業を記念してくれることを望んでいます。彼のために何か記念碑を作ってもらいたいです。彼はコースレコードを更新し、レースでも勝ったのですから」。

By Claire Crosby

(1ドル=約110円)

[bloodhorse.com 2021年3月27日「Zenden Suffers Fatal Injury After Golden Shaheen Win」]