海外競馬ニュース 2021年01月14日 - No.1 - 3
BCマイル三連覇の名牝ゴルディコヴァが死亡(フランス)[その他]

 21世紀を代表する優秀な牝馬の1頭、ゴルディコヴァは16歳で死んだ。

 ゴルディコヴァはオーナーブリーダーのヴェルテメール兄弟により所有され、シャンティイのフレディ・ヘッド調教師により管理され、5シーズンにわたる競走生活を送った。2008年~2010年にBCマイル(G1)を制して、ブリーダーズカップ開催の同一レース3勝を達成した史上初の競走馬となった。そしてその功績により2017年に米国競馬の殿堂入りを果たした。

 その競走生活で成し遂げた華麗なG1・14勝には、2009年ジャックルマロワ賞(G1 ドーヴィル)での6馬身差の勝利や2010年のクイーンアンS(G1 ロイヤルアスコット開催)優勝も含まれる。

 ゴルディコヴァの全27レースで手綱を取ったオリヴィエ・ペリエ騎手はこう語った。「ゴルディコヴァは偉大な世界チャンピオンでした。寛大にも彼女に現役生活を長く続けさせたヴェルテメール兄弟の大きな功績です」。

 「BCマイル三連覇と同様に、ロイヤルアスコット開催やジャックルマロワ賞での勝利も記憶に鮮やかに残っています。ジャックルマロワ賞で彼女が発進すると、その加速力で私はF1やMoto GPのレーサーになったような気がしました。彼女に騎乗したときは、すこしの間、バレンティーノ・ロッシ(イタリアのオートバイレーサー)になれました」。

 「偉大な世界チャンピオンの1頭であり、G1・14勝を挙げることはきわめて稀です」。

 「優良馬のほとんどが早くに引退していく中で、ヴェルテメール兄弟は競馬というスポーツのために彼女に現役を続けさせました。彼女のレースでの活躍を見続けることを彼らが選んだことで、私たちはとても幸運でした。心からのお礼を言わなければなりません」。

 「誰もがBCマイル三連覇を含むすべての大勝利を満喫したはずです。フランスではめずらしいことに、この名牝を応援するために人々が競馬場に駆けつけたのですから、ジャックルマロワ賞は特別でした。ファンはただ彼女が勝つのを見たがっていました。英国でよく見られるように彼らは声援と喝采を送っていましたが、それはフランス人の心理とはかけ離れています」。

 「ロイヤルアスコット開催でも格別でした。彼女は一気に加速する能力を存分に発揮しただけでなく、心臓が強いことも証明しました。ハミを取ったかと思うと、すごい勢いで突き進みました」。

 「私は彼女を抑えて、その後発進すれば行かせるままにして、座っているだけでした。私たちは初期のレースから"すごい!"と思っていました。私たちは才能あふれる馬を手掛けることができ、それは素晴らしいことでした」。

 ヴェルテメール兄弟のレーシングマネージャー、ピエール-イヴ・ビュロー氏がフランスのオンラインの競馬新聞『ジュール・ド・ギャロ』でゴルディコヴァの死を最初に伝えた。

 ヘッド調教師は1月6日朝の厩舎はどんよりとした雰囲気だったことを認め、本紙(レーシングポスト紙)にこう語った。

 「とても悲しいです。ゴルディコヴァは私の人生においてとても重要でした。彼女は6歳まで現役を続け、5シーズンを我々の厩舎で過ごしたので、今日は誰もが沈んでいます」。

 「並外れた走りっぷりを見せる牝馬で、驚異的な体格をしていました。キャリア全体を通じて引退させようなどと思ったことがありません。鋼のような体をもつ馬でした。彼女のように調教と競走をこなせる馬はほとんどいません。別格でした」。

 ヘッド調教師が3歳の7戦目としてゴルディコヴァをBCマイル(サンタアニタ)に挑戦させ、同馬がキップデヴィルを1¼馬身差で下したとき、ブリーダーズカップ開催での目覚ましい記録は作られ始めた。

 同馬は4歳になってサンタアニタに戻ってきて、短い最後の直線に8番手で入った後、残り50ヤードを切ったときに先頭に立ち、その芸当を繰返した。

 そしてBCマイルの3勝目は、歴史あるチャーチルダウンズ競馬場(ケンタッキー州ルイビル)の2つの尖塔のもとで達成された。

 ヘッド調教師はこう語った。「馬を米国に遠征させてこれほど権威あるレースを3年連続で勝つことは驚異的です。同じレベルのコンディションを保ち、勝つ意欲を持ち続けられる特別な馬でなければなりません」。

 「彼女は独特の性格の持ち主で、馬房では近寄れませんでした。しかし馬場では穏やかになり、仕事をする意欲がみなぎっていました」。

 「調教でも素晴らしい動きをしているのを目にしました。彼女は競走生活全体においてずっとその調子でした。多くの馬はすべてを成し遂げてしまうと、能力を出し惜しむ時期が来ます。しかし、彼女は依然として調教で驚くべき動きを見せていました。彼女のキャリア全体を通じて、ティエリー・ブレーズが朝の調教で騎乗していました」。

 「彼女は何でも成し遂げました。フランス、英国、米国など世界各地で、どのような競馬場でも勝利を収め、直線コースもコーナーのあるコースもこなしました。彼女のような馬を手掛けることは稀なことです」。

 このような馬を手掛ける幸運にめぐまれた大半の調教師には、比較すべき馬がほとんどいない。しかしヘッド調教師はジョッキーとしての輝かしいキャリアにおいてめぐり会ったもう1頭のチャンピオン牝馬とゴルディコヴァを比べることができる。その馬は同じくシャンティイにいて、フランソワ・ブータン調教師に手掛けられていた。

 「騎手生活において、ゴルディコヴァと比較できる馬が1頭だけいました。それは驚くべき牝馬、ミエスクです。ミエスクはゴルディコヴァよりも早熟でしたが、ゴルディコヴァが仏1000ギニー(G1)と仏オークス(G1 ディアヌ賞)でザルカヴァと対戦したことを思い出さなければなりません」。

 「今後ゴルディコヴァのような馬を手掛けることがないことは疑いようもありません」。

 ゴルディコヴァは2011年BCマイルで3着に健闘した後に引退した。繁殖牝馬として7頭の仔を送り出し、現在までに一番活躍しているのはテラコヴァ(Terrakova 父ガリレオ)である。テラコヴァはキャリア2戦目のクレオパトル賞(G3)で優勝し、2017年仏オークスではセンガの3着となった。

 ゴルディコヴァは今年受胎していなかったが、最近では3歳牝駒ゴルディスティル(Goldistyle 父ドバウィ)や2歳牡駒リーマン(Lehman 父ガリレオ)を送り出した。2頭はいずれもカルロス・ラフォン-パリアス調教師に管理されている。

By Scott Burton

 (関連記事)海外競馬ニュース 2010年No.47「ゴルディコヴァ、BCマイル3連勝で歴史を作る(アメリカ)

[Racing Post 2021年1月6日「'I was Valentino Rossi when I rode her' - prolific Group 1 winner Goldikova dies」]