海外競馬ニュース 2020年11月05日 - No.43 - 1
トワイライトペイメント、メルボルンカップ優勝(オーストラリア)[その他]

 2020年メルボルンカップ(G1)において、トワイライトペイメントはジョイ・マクニール騎手に的確に導かれて先頭に立ち続け、タイガーモス(Tiger Moth)の追撃をかわした。これにより、ジョセフ・オブライエン調教師はまたしても同レースで父エイダンを破った。

 トワイライトペイメントはジョセフ・オブライエン調教師にとって、2017年のリキンドリングに続き2頭目のメルボルンカップ優勝馬となった。同馬は道中ずっと先頭に立ち、タイガーモスを退け続けた。一方、このレースに出走3度目のプリンスオブアラン(Prince Of Arran チャーリー・フェローズ厩舎)は勇敢に走り3着となった。

 2019年英ダービー馬アンソニーヴァンダイクがレース中に球節骨折を発症して予後不良となったため、今回のメルボルンカップの雰囲気は損なわれてしまった。この8年間において同レースで予後不良事故に遭った馬は7頭となった。

 "国を止めるレース"は160年目を迎えたが、新型コロナウイルス感染防止策のために観客も馬主も不在となり、いつものきらびやかな式典は催されなかった。ただし、英国とアイルランドの調教馬が圧倒的な強さを見せる近年の傾向は継続した。今回の結果は、2017年のリキンドリングがエイダン・オブライエン厩舎のヨハネスフェルメールを破って優勝したときの結果をそっくり再現している。

 メルボルンカップ初騎乗のマクニール騎手は、序盤にトワイライトペイメントを先頭に立たせ、ずっとその位置でレースを進めた。すぐ後ろに迫っていたフィンシュ(Finche)の姿はトワイライトペイメントがダッシュをかけて直線に入ったときに消えて行った。タイガーモスとプリンスオブアランはゴールまでに先頭に到達できなかった。トワイライトペイメントの共同馬主ロイド・ウィリアムズ氏にとっては同レース7勝目という目覚ましい記録であり、生産者のジム・ボルジャー氏も賞金の一部を獲得した。
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 今年はパートナーのジェス・ペイン(Jess Payne)騎手が長男を出産するという幸福にも恵まれたマクニール騎手は感極まっており、こう語った。「決定的瞬間であり、さまざまな感情がこみあげています。無観客のスタンドはまったく気になりません。ウィリアムズ家とジョセフ・オブライエン調教師がトワイライトペイメントとコンビを組むチャンスをくれたことに、ただ感謝の気持ちでいっぱいです」。

 「先頭に立つことをずっと計画していました。見てのとおり人気がなかったので、あまりプレッシャーは感じませんでした。しかし、あのように先頭に立ったとき、うまく決着つけるためにいくらか重圧がありました。幸いなことに、すべてが軌道に乗りました」。

 「トワイライトペイメントを鼓舞するためにできるだけ声を出すようにしていました。踏ん張り続けることが大切で、彼はとてもタフでした」。

 アイルランドの自宅でこのレースを観戦したオブライエン調教師はこう語った。「ジョイは素晴らしい騎乗をしてくれました。先月豪州に送り込んだ厩舎スタッフにありったけの称賛を送りたいと思います。彼らはあちらで馬を見事に仕上げ、立派に走らせてくれました。この勝利は彼らにとって思いがけない喜びです」。

 「トワイライトペイメントは2019年の半ばに転厩してきたので、私たちは今年からシーズン全体を通じて彼を手掛けられました。今年はカラ競馬場で2勝を挙げました。私たちが思い描いていた以上に先頭を維持する展開になり、少しプレッシャーを感じているのではないかとわずかに心配していました。しかし彼は信じられないほどタフな心臓を持っていて、ジョイが素晴らしい騎乗をしたことで、ゴールまでずっと戦い続けました」。

 「ロイド・ウィリアムズ氏とニック・ウィリアムズ氏にはどれだけ感謝しても足りないほどです。彼らはとても素晴らしい人々で、彼らのためにもこのような結果を出せて喜んでいます」。

 「彼らのような馬主のために、託された馬を調教できることは大変光栄なことです。多大な支援を受けて優勝できたことに本当に感謝していますが、誰もがご存じのとおり、厳しいゲームです。頂点から底辺に転落してしまうのは紙一重なので、大変ありがたく思っています」。

 弱冠27歳のオブライエン調教師はメルボルンカップ2勝を達成し、華やかだった騎手生活に続いて、調教師としての第2のキャリアを確立している。今回の優勝は、ダーモット・ウェルド調教師がヴィンテージクロップでこのレースを制し、アイルランド人調教師で初のメルボルンカップ優勝トレーナーとなってから27年後のことである。ジョセフ・オブライエン調教師は数々のビッグレースを制してきたすごい経歴にこの勝利を加えた。その経歴には、愛ダービー(G1)、英セントレジャー(G1)、愛ゴールドカップ(G1)、ゴールウェイハードル、ゴールウェイプレートでの優勝、そしてチェルトナムフェスティバルとブリーダーズカップ開催での勝利が含まれている。

 ジョセフ・オブライエン調教師はメルボルンカップでの初勝利に続いてまたもや父エイダンを破ったことについて、スカイスポーツレーシングに対してこう語った。「父と私は、世界を舞台にしたビッグレースで勝つことがどれほど難しいかを実感しています。メルボルンカップで2度も優勝できたことは非常にラッキーです」。

 「父はとても幸運で、多くのビッグレースを制してきました。今回彼が勝っていたとしても、私は嬉しく思っていたでしょう。それに、父はまちがいなく今回の私の勝利を喜んでいると思います。父と私は勝利を目指してベストを尽くし、後は結果を待つだけです」。

 「どういうレースになるのかを見るのはとても不安でした。かろうじて見たところ、ジョイの見事な騎乗と、厩舎スタッフがこの馬のために行ったたゆまぬ努力を目の当たりにしました」。

 これまでメルボルンカップを3勝しているケリン・マカヴォイ騎手はタイガーモスに騎乗し、トワイライトペイメント(単勝26倍)に½馬身差にまで迫った。「私たちは外枠から発走でしたが良い位置につけることができました。内側に近づき、先行勢に入ることができ、タイガーモスは道中本当によく走ってくれました。トワイライトペイメントは力強く走り続け、勝負するために仕掛けて行かなければならず、そういう展開になりました。しかし今日は、優勝馬の力がわずかに勝っていました」。

 「タイガーモスは今回がまだ5戦目の若い馬ですが、素晴らしい走りっぷりでした。本当によく走ってくれました」。

 しかし、メルボルンカップをブルー(2000年)、アルマンディン(2016年)、クロスカウンター(2018年)で制しているマカヴォイ騎手は、今回のタイガーモスの騎乗で鞭使用ルールに違反したことで、過怠金5万豪ドル(約375万円)と13日間の騎乗停止処分を科された。マカヴォイ騎手は違反を認め、その騎乗停止処分は11月5日にフレミントン競馬場で騎乗した後に適用される。

By Matt Butler

(1豪ドル=約75円)

[Racing Post 2020年11月3日「Joseph beats Aidan again as Twilight Payment holds on to win the Melbourne Cup」]