海外競馬ニュース 2020年10月29日 - No.42 - 3
サンタアニタ競馬場の秋開催での予後不良事故はゼロ(アメリカ)[開催・運営]

 馬の安全性を向上させる取組みは、勝利の旗を上げることが許されるような性格のものではない。しかしサンタアニタ競馬場は秋開催で予後不良事故を1件も出さなかったことで、祝福すべき金字塔を打ち立てた。

 1年余り前、サンタアニタ競馬場の2018-19年の冬春開催で予後不良事故が頻発した。それ以来、同競馬場とカリフォルニア州競馬委員会(CHRB)は馬の安全性を向上させるために多くの改革を採用してきた。そして最近閉幕した秋開催は、今シーズンの予後不良事故が減っていることと相まって、それらの取組みが状況を改善したことを示しているようだ。

 CHRBが収集したデータによると、10月25日に閉幕した秋開催(16日間)において延べ1,100頭が出走したが、予後不良事故は1件もなかった。サンタアニタはサラブレッドの調教に関しては米国で最も混雑している競馬場の1つだが、秋開催の期間中は調教でも予後不良事故は1件もなかった。

 CHRBの馬医療担当理事であるリック・アーサー博士は、薬物使用方針の変更や譲渡要求無効ルールの強化が寄与していると指摘した。また責任をもって安全性に関する取組みを遂行しているホースマンを評価し、最近閉幕した秋開催のあいだに競馬安全委員会が安全性の懸念から除外した馬はわずか1頭だったと述べた。

 アーサー博士はこう語った。「安全性に関するサンタアニタ競馬場の厩舎地区の文化が本当に変化したのがわかりました。そのおかげで、私たちはこれらの改善を達成することができたのです」。

 「実際、規制担当の獣医師が見た段階で出走取消にするというのでは、駄目だと思っています。ホースマンが自主的に規制する、それこそが私たちが必要としていることです。ホースマンは私たちが到底適わないほど馬のことを理解している人々です」。

 秋開催の期間中、サンタアニタ競馬場では10月6日に厩舎での事故により1頭が命を失った。しかし、競馬場のコースでの予後不良事故は6月21日から生じていない。

 今年サンタアニタ競馬場で生じた予後不良事故は5件である。10月25日までサンタアニタ競馬場で出走した延べ4,871頭のうち99.89%がそのような事故に遭わなかったということである。

 今年の馬故障データベース(Equine Injury Database)によれば、サンタアニタの予後不良事故率は出走馬1,000頭に対し1.02件であり、昨年の3.01件の約3分の1、2018年の2.04件の半分である。調教中の予後不良事故も含むと、今年のサンタアニタ競馬場での予後不良事故は昨年よりも62%減少している。

 アーサー博士は南カリフォルニアのサラブレッド競馬界ではこの事業年度(7月1日~)において競馬場での予後不良事故が1件しか生じておらず、大きな前進が遂げられたと指摘した。その唯一の予後不良事故はデルマー競馬場でレース中ではなく発走時の混乱で生じたものである。

 同博士は、「かなり満足できます。誰もがいっそう慎重になっているのが感じられ、そのことが状況を改善しています」と付言した。

By Frank Angst

(1ドル=約105円)

 (関連記事)海外競馬情報 2019年No.3「サンタアニタ競馬場、予後不良多発を受けて安全措置を導入(アメリカ)」、No.7「サンタアニタ競馬場のスキャンダルはなぜ起こったのか?(アメリカ)

[bloodhorse.com 2020年10月26日「No On-Track Equine Fatalities at Santa Anita Fall Meet」]