海外競馬ニュース 2020年01月30日 - No.4 - 2
2019年ロンジンワールドベストレースホース、3頭が同時首位(国際)[その他]

 IFHA(国際競馬統括機関連盟)が発表した2019年の最終レーティングにおいて、欧州2歳部門ではピナトゥボ(Pinatubo)が25年来の最高レーティング128を獲得した一方、3歳以上の部門ではエネイブル、クリスタルオーシャン、ヴァルトガイストの3頭が40年以上前にこのランキングが発足して以来の最低レーティング128で同時首位となった。(訳注:ピナトゥボの128は1994年にセルティックスウィングが130を獲得して以来の最高レーティング

 長きにわたるライバル関係で競馬場を盛り上げてきた3頭がロンジンワールドベストレースホースのタイトルを獲得するには、「128」で十分だった。しかし前例のない大差で最高レーティング2歳馬となったゴドルフィンのスター馬ピナトゥボにとって、「128」は貴重な数字となった[訳注:2位のアースライト(Earthlight)とカメコ(Kameko)のレーティングは118]。

 エネイブルが拮抗した争いでヴァルトガイストとクリスタルオーシャンとともにトップに立ったことで、同馬の関係者は凱旋門賞(G1)での惜敗へのいくらかの慰めを得られた。凱旋門賞でエネイブルを破って優勝したヴァルトガイストは、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)ではエネイブル、クリスタルオーシャンに次ぐ3着となっていた。

 これらの馬に与えられたレーティング「128」は、2002年に過去最低レベルのレーティングで首位に立ったロックオブジブラルタルの数字にかろうじて並ぶものである。一方で、2019年のクラシック世代についてもっと残念なニュースがあった。このランキングの16位に入った凱旋門賞3着馬ソットサス(Sottsass)の「レーティング123」が、このランキングの設立(1977年)以来、3歳馬の最高レーティングとしては最も低いものとなったのだ。

 昨年5歳馬として切磋琢磨したエネイブル、クリスタルオーシャン、ヴァルトガイストのうち、2頭の牡馬は種牡馬入りしている。一方、カリド・アブドゥラ殿下はエネイブルに史上初の凱旋門賞3勝馬となるための2度目のチャンスを与えた。これにより、競馬ファンは2020年にスリリングな展開を目の当たりにするかもしれない。

 ブックメーカーはエネイブルが凱旋門賞を制して雪辱を果たすことに7倍のオッズをつけている。ジョン・ゴスデン調教師とアブドゥラ殿下のレーシングマネージャーであるテディ・グリムソープ(Teddy Grimthorpe)氏は、1月22日にロンドンの授賞式に出席した際に6歳となったエネイブルについての明るいニュースを報告した。

 ゴスデン調教師はこう語った。「殿下が彼女に現役を続行させたことは、素晴らしい決断です。彼女が今のように幸せに暮らし続けるかぎり、私たちは凱旋門賞を目標とするつもりです」。

 「凱旋門賞3勝は挑戦しがいのある目標です。三連覇であるべきだとは誰も言っていません。連覇してから一度2着になっても、再び勝てばいいのです」。

 「昨年は重馬場を軽視していたのかもしれません。レース前にコースを歩きましたが、読み違えました。どの馬も飛ばしすぎ、仕掛けるのも早過ぎたため、大きな代償を払いました。最後の1ハロンはどの馬も歩いているようで、いつまでたっても終わらないように感じました。そのような馬場でもエネイブルを射程圏内に入れながら粘ったヴァルトガイストは満点の勝ち方をしました」。

 「世の中そんなもので、これこそ競馬です。しかし、エネイブルが優勝していたら引退していたでしょう。チャンスを与えられたのですから、また挑戦しなければなりません」。

 昨年のように、エネイブルのシーズンは10月の第1日曜日に状態をピークにもってくるように計画される。昨年はエクリプスS(G1)から始動して勝利を重ねていったが、今年の初戦はロイヤルアスコット開催になる可能性もある。

 ゴスデン調教師はこう続けた。「彼女は順調に冬を過ごし、元気そうです。春には走らせたいレースはないので、急がせる理由はありません。凱旋門賞を目指すのであれば、6月か7月に始動させるのがちょうど良いと思います。最終決定はアブドゥラ殿下が行うでしょうが、エネイブルが自らの状態を垣間見せるかもしれません」。

 同調教師は、エネイブルがデットーリ騎手をパートナーとして走り続けることは競馬界を大いに盛り上げると信じている。グリムソープ氏も同じ考えであり、こう語った。

 「凱旋門賞に出走するときに大勢の人々に応援してもらいました。彼女は負けましたが素晴らしいレースをしました。もし善意あるサポートがレースの結果を決めるのであれば、彼女は真っ直ぐウィナーズサークルに行けたのかもしれません。それでも、そのことは彼女がトップレベルに君臨し続けられることを示したので、現役を続行させる際に励みとなりました」。

 「アブドゥラ殿下は一競馬ファンであり、エネイブルをファンと共有することに満足しています。彼女が現役を続行することは競馬にとって素晴らしいことだと考えます。競馬界を活気づけるために、彼女が今年雪辱を果たすことを期待しています」。

 グリムソープ氏はアブドゥラ殿下の所有馬でジョン・ゴスデン調教師が管理する英セントレジャー(G1)優勝馬ロジシャン(Logician)についても話した。

 「ロジシャンは冬の間、軽い感染症にかかったので治療を受けましたが、今では元気です。昨年の彼の成長ぶりを考えると、10~12ハロン(約2000m~2400m)のG1競走で実力を発揮するでしょう。ロジシャンを最高レベルに引き上げたいと考えており、彼にはそこに到達する能力があると思っています」。

 「ロジシャンがエネイブルと一緒に凱旋門賞で走ることほど不思議なことはありませんが、それは殿下の決定次第です。しかし、2頭が早くに対戦することは想像できません」。

 香港のスターマイラー、ビューティージェネレーション(Beauty Generation)は、レーティング127を獲得しこのランキングで4位となった。それに続き、12月下旬の有馬記念(G1)でセンセーショナルな勝利を収めた日本のリスグラシュー、米国のヴィーノロッソ(Vino Rosso)、英国のバターシュ(Battaash)とガイヤース(Ghaiyyath)がいずれもレーティング126を獲得し5位となった。

 昨年同時首位に輝いたウィンクスは4月に33連勝を達成して引退した。同馬は今回ベンバトル(Benbatl)とグローリーヴェイズと同じレーティング125を獲得し9位となった。

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By Lee Mottershead

[Racing Post 2020年1月22日「Historic Arc hat-trick remains goal as Enable takes share of world's best prize」]