海外競馬ニュース 2020年10月08日 - No.39 - 3
マルセルブーサック賞、フランスで初めて女性ジョッキーがG1優勝(フランス)[その他]

 ジェシカ・マルチアリス(Jessica Marcialis)騎手は10月4日にロンシャン競馬場で歴史的偉業を成し遂げた。マルセルブーサック賞(G1 2歳牝馬 1600m)でタイガータナカ(Tiger Tanaka)を勝利に導き、フランスのG1競走を制した初めての女性ジョッキーとなり、"お母さんでも達成できる"と宣言したのだ。

 マルチアリス騎手は、最後の直線を追跡してくる馬群にとらえられることなく順調に走った。馬群の中からは力強く走っていた英国調教馬フェヴローヴァー(Fev Rover)が抜け出してきたが、勝負どころで止まってしまい、残り1ハロンで行く手を阻まれた。

 タイガータナカはそこからダッシュして最後まで競い続け、タスマニア(Tasmania)に¾馬身差をつけてゴールを駆け抜けた。マルチアリス騎手は歴史的快挙を決めた瞬間に、大声をあげた。

 優勝馬を管理したのが同騎手の婚約者シャルリー・ロッシ(Charley Rossi)調教師であったことが、この勝利をさらに特別なものにした。歴史的勝利を達成してパドックに戻ったときに、彼女は大きな歓声で迎えられた。

 マルチアリス騎手は幼い息子を片手で抱き、もう一つの手でトロフィーを受け取りながらこう語った。「信じられません。言葉になりません。私たちは昨日、このレースに参戦できることさえも素晴らしいと話していました」。

 「彼女は道中とてもリラックスしていました。レースで乗るたびに進化しています。すごいことです。歴史的快挙を果たしました。すべてのお母さんに"私たちだってできる。強くなりましょう"と言いたいです」。

 タイガータナカをスターの座にのし上げることになったこの勝利は、ロッシ調教師にとってもG1初優勝である。同馬はクレーミング競走において2万3,789ユーロ(約297万円)で譲渡され、ロッシ調教師のもとで5戦4勝の成績を挙げ、マルセルブーサック賞への出走権を獲得した。

 同調教師は、「婚約者が騎乗して、友人が所有する馬でG1を勝てたことは素晴らしいことです。多くの人々が観戦できなかったのが残念です。まるで魔法のようで、友人たちが立ち会ってくれました。それこそが大切なことです」と述べた。

 そしてレース中にどのように感じていたかについて聞かれ、こう語った。「感情を爆発させたいような気分でした。叫び声を上げ、自制心を失いました。彼女が全力で走り、抜け出すスペースを探しているのを見て信じられないと思いました。彼女が抜け出したときの光景は私にとって少し現実離れしたものでしたが、彼女は本当に勝ってしまいました。私たちは今日、歴史的快挙を成し遂げました」。

 不運なフェヴローヴァーにとっては全く別の話となった。リチャード・フェイヒー(Richard Fahey)厩舎のフェヴローヴァー(馬主:ニック・ブラッドリー・シンジケート)は単勝3.5倍の一番人気を背負っていた。

 フェヴローヴァーの鞍上ベン・カーティス(Ben Curtis)騎手は仕掛けて行ったが、鼻先でドアがバタンと閉まる結果となった。キングスハーレクイン(King's Harlequin)が左側から寄れてきたとたんフェヴローヴァーに衝突し、実質的にG1勝利の見込みはなくなった。

 カーティス騎手はこう語った。「最後まで順調に走れるだろうと考えていましたが、あちこちからぶつかられました。最終コーナーを理想どおりに回りましたが、2度ぶつかられました。しかし競馬とはそういうものです」。

 なお、アイルランド調教馬サンダービューティー(Thunder Beauty ケン・コンドン厩舎)は7着だった。

By James Stevens

(1ユーロ=約125円)

[Racing Post 2020年10月4日「'I've made history' - glorious girls Marcialis and Tiger Tanaka shine in Boussac」]